【調査報告】「社会経済的要因と女性の健康に関する調査提言」(2023年3月6日)
日付:2023年6月21日
タグ: 女性の健康
※英語版を公開しました。(2023年6月21日)
※3月15日に公開した初版では報告書P2に誤記がありました。3月27日に修正し更新しております。
(正しくはアブセンティーズムと表記すべきところ、プレゼンティーズムと表記)(2023年3月27日)
日本医療政策機構 女性の健康プロジェクトでは、女性の健康週間(3月1日~8日)に合わせて調査報告書「社会経済的要因と女性の健康に関する調査提言」を公表いたしました。
女性の活躍推進は、2014年に当時の安倍政権が「人材の活躍強化」の重要項目として打ち出して以降、様々な取り組みが行われています。2016年には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性の活躍推進法)」が制定されました。また2022年には、「女性版骨太の方針2022 」が公表され、厚生労働省・経済産業省・文部科学省・内閣府男女共同参画局など様々対策が省庁横断的に進められています。
しかしながら、女性の健康に関しては各種取り組みが進められているものの、必ずしもその状況は十分ではありません。近年では個々人が属する社会経済的階層が健康水準に関係するという「健康の社会的要因(SDH: Social Determinants of Health)」が注目されていますが、女性の健康に関しても、こうした社会経済的要因に配慮した対策が求められる一方で、我が国における社会経済的要因と女性の健康の関係性については必ずしも十分に検証されていない状況です。
そこで日本医療政策機構 女性の健康プロジェクトでは、より包括的に社会経済的要因と女性の健康の関係性について検証し、政策提言することを目的として、全国25歳から59歳までの男⼥10,000名を対象にインターネットでアンケート調査しました。
本調査結果から、月経随伴症状や更年期症状が女性の社会生活に大きな影響を与え、経済的損失を生んでいること、企業規模や雇用形態によって、生理休暇の利活用状況に大きな差があり、広く労働政策まで含めた対策が必要であることが示唆されました。さらには、性別問わず女性の健康に関する知識を得る機会は非常に限られており、健康格差の固定化や再生産を防ぐために学校教育・職場研修はじめ生涯を通じて学習の機会を提供する必要があることが明らかとなりました。
本提言書では、これらの結果をもとに、4つの提言を行っております。
■4つの提言
提言1.女性の健康への取り組みは、女性のセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ推進の観点に加えて、社会経済的損失抑制の観点からも重要であることを認識すること
提言2.未だ多くの女性が月経困難症や更年期による症状に悩まされており、また受診抑制が起きている現状を鑑み、医師による早期治療を受けられるよう、プライマリケア・かかりつけ産婦人科の取組を推進すること
提言3.企業間、業種間、職種間での格差、性別間での認識差を是正すること
提言4.学校教育の中で、包括的性教育の機会を作ること。また乳幼児健診や職場研修などのタイミングで親世代への再学習の機会を提供すること
詳細は下部PDFをご覧ください。
「女性の健康と社会経済的要因に関する調査研究プロジェクトチーム」
坂元 晴香(日本医療政策機構 シニアマネージャー)
栗田 駿一郎(日本医療政策機構 マネージャー)
河田 友紀子(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
鈴木 秀(日本医療政策機構 アソシエイト)
本多 さやか(日本医療政策機構 プログラムスペシャリスト)
外部有識者(敬称略)
飯田 美穂(慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学教室 専任講師)
調査研究協力者(敬称略・順不同)
岡本 翔平(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム 特別研究員)
後藤 励(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 教授)
笠原 真吾(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 大学院生)
野村 周平(慶應義塾大学 医学部医療政策・管理学 特任准教授)
江口 哲史(千葉大学予防医学センター 講師)
協賛企業・組織
バイエル薬品株式会社
富士製薬工業株式会社
※本提言は、ヒアリングをもとに、独立した医療政策シンクタンクとして日本医療政策機構が取りまとめたものであり、アドバイザリーボード・メンバー参加者などの関係者、および関係者が所属する団体の見解を示すものでは一切ありません。また、当機構の「寄附・助成の受領に関する指針」に基づき、協賛社の有無や意向に関わらず、事業の方向性や内容を独自に決定しております。
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