【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
日本医療政策機構はメンタルヘルスに関する世論調査の結果を発表しました。
今回の世論調査は、日本の全人口(年齢、性別、地域)を代表する1,000人を対象として、2022年3月に実施しました。
調査では、こころの不調を感じた際の相談先について複数回答で質問を実施しました。
半数以上が「家族・親戚」を選択したものの、相談先が「ない」と回答した方も30%に上り、こころの不調を相談できる相手・場所が限られていることが分かりました。また、自費カウンセリングや所属先の相談窓口、公的な相談窓口なども5%を切る結果となり、人々の選択肢となりえていない現状が明らかになりました。一方で、「家族・親戚」「知人・友人」に次いで多かったのが、「(精神科以外の)かかりつけ医」であり、かかりつけ医の重要性を示唆するとともに、かかりつけ医における患者の精神的不調に対する適切な対応が求められていることが明らかとなりました。(図1)
一方、家庭・学校・職場といったコミュニティ以外の交流についての設問では、70%を超える方が「ない」もしくは「コロナ禍で維持できなくなった」と回答しました。60%超が従来から多様な交流機会が確保できていなかったことに加え、コロナ禍でその状況がさらに増したことが分かりました。(図2)
日本医療政策機構では、2021年度に認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)の普及に向けた政策提言を実施しました。「認知行動療法」という名称そのものの認知度は16.1%と極めて低いことがわかりました。(図3)
災害時、自治体や医療機関において、こころの健康相談ができることの認知度は低く、各地域において、具体的な施設名を明記して普及啓発することの重要性が示唆されました。とりわけ、本調査において「災害時」にパンデミックも明記していたことや調査期間がパンデミック禍であったことを考慮すると、普及啓発を迅速に行うことが必要です。(図4)
災害時こころの健康に関する相談窓口について、今後の使用希望について尋ねたところ、こころの不調を相談する相手・場所が「ない」と答えた約30%(図1)のうち、インターネットなど(49.2%)や電話(28.6%)を利用した遠隔の相談支援いずれかを希望している人は69.4%にのぼることがわかりました。災害時は物理的、社会的要因から人との接触が立たれてしまうことがあり、デジタルテクノロジーを活用した遠隔でのこころのケアは、あらゆる災害時に有効かつ、市民の期待する分野であることが示唆されました(図5)。
日本医療政策機構におけるメンタルヘルスに関する世論調査の結果、約30%の人々が、こころの不調を感じたとき相談先がないと回答しました。このことは一定数の人が、こころの不調時に早期対応できず、重症化するリスクを抱えていることを示唆しています。一方で、相談先として3番目に多かったのが「かかりつけ医」であることは、今後の医療政策上の重要な示唆と言えます。かかりつけ医を軸としたメンタルヘルス支援体制を広げていくことも選択肢の1つとして考えられます。
また、災害時のこころのケアにおいては、インターネット等を利用した相談体制に対して前向きな回答が多く見られました。この結果は、一人1台モバイル端末を持つのが当たり前の時代において、災害時以外においても、こころのケアが誰でも気軽に受けられることに対する追い風となり得ます。
うつ病や統合失調症等、多くの精神疾患などへの治療として用いられている認知行動療法については、極めて低い認知度ではありましたが、デジタル化が進む世の中において、メンタルヘルスケアアプリ等でもそのケア方針は広く用いられるようになってきており、ケアのデジタル化に期待する市民の声と親和性は高い分野であることが期待されます。
コロナ禍においても、デジタルデバイスは人と人とが繋がりを維持することに寄与していたことが推察され、パンデミックや大地震などの災害時でも人々がこころの健康を保つための一助になり得ることが示唆されました。
当機構では、メンタルヘルスに関する様々な活動を行っています 。プロジェクトの詳細については、こちらをご覧ください。
【参考文献】
・総務省.デジタルで支える暮らしと経済, 情報通信白書令和3年版 (2022年7月20日閲覧)
・国立精神・神経医療研究センター. 認知行動療法とは (2022年7月20日閲覧)
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