【政策提言】「脳の健康」を取り巻く政策への戦略的投資が拓く「日本再起」への提言-新政権への期待-(2025年12月1日)
日付:2025年12月1日
タグ: 認知症
■政策提言の趣旨
2025年10月20日、日本では自由民主党と日本維新の会が連立政権合意書を取り交わし、新たな政権の枠組みが誕生しました。合意書では、「わが国が内外ともにかつてなく厳しい状況にある」としたうえで、「国難を突破し、『日本再起』を図ること」を目指すとしています。
日本医療政策機構(HGPI)認知症プロジェクトでは、こうした新たな政権の枠組みに期待するとともに、認知症政策の観点から新政権に対する提言をまとめました。「市民主体の医療政策」の実現を掲げる当機構では、患者・当事者・市民を含めたマルチステークホルダーによる議論を通じて、政策の選択肢を社会に提示することを目指しています。認知症プロジェクトでの様々な議論の場・政策提言の執筆を通じて得られた知見を踏まえ、これからの認知症政策がより良い方向に進むことを願い、ここに提言を示します。
なお、詳細については下記PDFをご覧ください。
■提言のポイント
本提言書では、連立政権合意書に掲げられた方針と認知症政策の接点を明らかにし、以下の3つの戦略的投資を提案しています。
提言1:当事者参画型研究開発への投資
「責任ある積極財政に基づく効果的な官民の投資」を認知症領域で実現するため、認知症の本人や家族等と共に創る研究開発への戦略的投資を推進する。官民連携(PPP)に加えて、当事者のニーズ・視点・生きた経験に立脚した研究開発体制の構築が、限られた資源の有効活用と国際競争力を持つイノベーション創出の鍵となる。
提言2:持続可能なサービス体制への投資
認知症基本法が掲げる共生社会の実現に向け、サービスの質的向上と持続可能性を両立する仕組みへの戦略的投資を行う。デジタル技術等による効率化と当事者参画によるサービス設計により、サービスの質を保ちながら持続可能な体制を構築する。また、科学・医療技術の進展を踏まえた認知症行政の枠組みの再定義が求められる。
提言3:脳の健康を基盤とする成長戦略への投資
「年齢に関わらず働き続けることが可能な社会」の実現のため、脳の健康を成長戦略の中核に掲げ、戦略的投資を推進する。「ブレイン・エコノミー」の視点から、脳の健康を未来への投資と位置づけ、大規模コホート研究や職場環境研究、教育プログラム開発などの研究基盤整備を進める。脳の健康維持の習慣が社会に根付くことで、高市首相が掲げる「攻めの予防医療」とも呼応する超早期段階での対応が可能になる社会基盤が形成される。
■本提言書について
本提言書は、新政権の「日本再起」という目標に対し、認知症政策がいかに貢献できるかを具体的に示したものです。認知症は、単なる医療・介護の課題ではなく、経済成長、社会保障の持続可能性、共生社会の実現という、日本が直面する重要課題の解決に資する政策領域です。3つの提言は相互に補完し合い、認知症の本人や家族等の参画を軸に、研究開発からサービス提供、社会基盤の構築まで、包括的な政策投資の方向性を示しています。
なお、本提言書は、独⽴した医療政策シンクタンクとして⽇本医療政策機構が取りまとめたものであり、認知症プロジェクトに関わる専門家や登壇者等の関係者、および関係者が所属する企業や団体の⾒解を示すものでは⼀切ありません。
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