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【政策提言】がん対策プロジェクト「乳がん医療の地域格差是正に関する提言書」(2025年1月31日)

【政策提言】がん対策プロジェクト「乳がん医療の地域格差是正に関する提言書」(2025年1月31日)

日本医療政策機構は、「乳がん医療の地域格差是正に関する提言書」を公表しました。本提言書では、乳がん医療の地域格差に焦点を当て、日本の現在の保健医療システムが抱える課題と乳がん領域特有の課題の整理、政策上の打ち手の検討を行い、乳がん医療のみならずがん領域全般さらには医療界全体に共通する医師偏在等の課題も含めた地域格差是正に向けた政策上の打ち手として広く共有するものとして作成しました。

本提言書では、事前調査によって明かとなった「最新のエビデンスに基づく集学的治療」「近年発展する先端医療(個別化医療や臨床研究・治験等)」「乳がん治療に付随する治療選択肢や医療的支援(妊孕性温存、アピアランスケア、乳房再建)」「就労を含めた乳がん患者の社会的な支援」の4つの地域格差について、「医療提供体制」「PDCAサイクル の確保」「患者参画、患者包括支援」の3つの着眼点に基づき、課題と対応策をまとめました。


◼︎提言書の概要

提言1:地域実情に応じた持続可能な医療提供体制

①診療施設間の機能分化と連携の加速(「ハブ&スポークス型 」のネットワーク整備):
限られた人的資源の有効活用のため、国は全体のあるべき方向性(ビジョン)を示し、各地域では都道府県並びに都道府県がん診療連携協議会(以下「都道府県協議会」)がリーダーシップを発揮し、地域実情に応じつつ、一定機能を集約化し、周辺機関と密な連携を構築する方向性で議論を行う(地域実情に応じた集約化と均てん化)。

②デジタル技術の活用―地理的アクセスの制約や専門人材の不足・偏在のカバー:
高度医療や臨床試験等に対する地理的アクセスの制約や専門人材の不足・偏在への対応として、国や都道府県による財政的なインセンティブ付与等を通じて、デジタル技術を活用した、遠隔医療や業務効率化を推進する

③がん専門人材の配置やタスクシェアを加速する制度的仕掛け議論の推進:
診療報酬加算等を通じて乳がん診療を支える多様な医療専門人材の育成や雇用を推進し、加えて効率的・効果的にチーム医療を提供できるよう役割分担の制度議論を進める

④がん医療・ケアの専門知識・スキルが学びやすい・活かせる環境の整備:
国・職能団体・学会が連携し、現場のニーズや状況を踏まえ、ICT等を活用した効率的な研修プログラムの構築等、知識・スキルが習得しやすい制度を整備するとともに、習得した知識を活かし、評価される環境を構築することで、専門医療人材の充足を図る

提言2:データの利活用を通じた医療の質の可視化・改善(PDCAサイクルの確保)

①データに基づく地域医療のPDCAサイクル実行性確保:
各医療機関や都道府県、国のそれぞれの階層で乳がん医療の質を客観的なデータに基づいて現状分析を行うとともに、継続的に医療の質を改善できるようPDCAサイクルを回す場や仕組み、体制を強化する

②客観的かつ比較可能なデータ利活用基盤の構築:
既存のデータベースの潜在価値が発揮されるようデータの連携等を進め、がん医療の質の評価や改善取組に係るデータの利活用を推進する


提言3:患者参画、社会・経済的な患者包括支援

①現行資源の最大活用による患者-医療者間におけるコミュニケーションの量・質の向上:
相談窓口の集約や相談のオンライン化、相談窓口の広報強化等を通じて、現行資源の活用効率を上げる形で、患者-医療者間におけるコミュニケーションの量と質を向上させ、患者が自身の状態に応じて主体的に治療・その他支援を享受できるようサポートする

②社会・経済的支援の地域格差是正・アクセス強化に関する議論の推進:
疾患ステージやライフコースに合わせて必要な人が必要なタイミングで支援を享受できるよう、全国的な支援制度もしくは各地域固有の補助給付等の既存支援基盤の可視化を行う。また、患者属性(地域、就労先・就労形態等の社会的属性、年齢等)により格差が存在する支援については、支援の「底上げ」の是非を議論する

③地域の医療提供体制や連携に係る住民理解の促進:
患者自らが自身の健康・医療について主体的に学び、医療従事者へ有意義な相談や、主体的な医療機関の選択ができるよう、市民講座等を通じた学習機会を拡充するとともに、域内の乳がん医療の提供体制に関する情報をわかりやすい形で公開する

 

今後の乳がん診療またはがん診療において、本提言書が活かされ、患者本位の医療がさらに発展していくことを強く期待します。

 

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