【出版報告】医療システムの未来プロジェクト「保健医療システムの持続可能性と強靭性を向上するためのパートナーシップ(PHSSR)報告書」(2022年12月5日)
日付:2022年12月6日

保健医療システムの持続可能性と強靭性を向上のためのパートナーシップ(PHSSR: Partnership for Health System Sustainability and Resilience)」は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE: London School of Economics)、世界経済フォーラム(WEF: World Economic Forum)、産業界の協働により立ち上がったパートナーシップに基づいたプロジェクトであり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19: Coronavirus Disease 2019)を契機に各国の保健医療システムを見直す目的で、2020年にスタートしました。
PHSSRでは、COVID-19により世界中の保健医療システムが圧迫される中、国境や領域を越えて各国の研究者、政府、政策立案者などと協力しながら、世界21カ国の保健医療システムの世界的な感染拡大(パンデミック)への対応などを調査・分析し、より強靭かつ持続可能な医療システムの構築のためにはどのような変革が必要かを取りまとめました。
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【目次】
要旨
1. 序論
2. ドメイン1:ガバナンス
3. ドメイン2:財政
4. ドメイン3:労働力
5. ドメイン4:医薬品・医療技術
6. ドメイン5:サービス提供
7. ドメイン6:ポピュレーションヘルス
8. ドメイン7:環境持続可能性
9. ケーススタディ1:ソーシャル・インクルージョンを実現できる保健医療システム
10. ケーススタディ2:ライフコースを通じてポジティブヘルスを支える社会システム
11. 謝辞
12. 文献
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日本では、慶應義塾大学と当機構によって、未来の保健医療システムの持続可能性と強靭性を強化するために、今までのCOVID-19対応における課題整理、対応の振り返り、そして再び同様の危機が増えていくことが予想される未来に向けての備えについて議論を重ねてきました。
保健医療システムの持続可能性と強靭性を高めるためのビジョンとして「Better Co-Being」掲げ、生活者一人ひとりのWell-beingの追求と同時に、社会全体においてもそれぞれのWell-beingの実現をサポートしあえるような、よりよい社会づくりを目指してきました。
また、これまでに行ってきた取り組みは以下です。
■アドバイザリーボードの設立
PHSSRプロジェクトを遂行するにあたり、日本においてはまず「ガバナンス」「財政」「労働力」「医薬品・医療技術」「サービス提供」「ポピュレーションヘルス」「環境」の7つの領域において日本の医療システムの持続可能性と強靭性の評価を行いました。各領域において知見をお持ちの以下の方々に学術界・市民社会・政府・経済界からご参加いただき、アドバイザリーボードを2021年10月に設立し、ご意見や情報をもとに、日本においてPHSSRプロジェクトが目指すべきビジョンを確立させ、そこに達するための提言書の作成を進めていきました。
アドバイザリーボード(2021年10月設立時)(*敬称略)
ドメイン1: ガバナンス
永井 良三(自治医科大学 学長)
武見 敬三(参議院議員)
ドメイン2: 財政
小黒 一正(法政大学 経済学部 教授)
ドメイン3: 労働力
鈴木 康裕(厚生労働省顧問)
豊田 郁子(患者・家族と医療をつなぐNPO法人 架け橋 理事長)
ドメイン4: 医薬品・医療技術
武藤 真祐(医療法人社団 鉄祐会 理事長、インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長)
澤田 拓子(塩野義製薬株式会社 副社長)
ドメイン5: サービス提供
堀田 聰子(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 教授)
ドメイン6: ポピュレーションヘルス
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 副所長)
ドメイン7: 環境持続性
橋爪 真弘(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学 教授)
アドバイザリーボードメンバーとともにPHSSRに関わるメンバーで検討してきた7つの領域についての研究・調査をもとに構築した日本の保健医療システムの持続可能性と強靭性を高めるためのビジョンについて、政策策定者である国会議員と共有し、知見を仰ぐ勉強会を2022年4月に開催しました。
PHSSRプロジェクトが掲げるビジョン実現のためには必要となる政策について得られた意見・知見をPHSSRプロジェクトの政策提言書に盛り込み、内容を深化させてまいりました。
2022年5月に、国内外の保健医療システムの専門家がCOVID-19への対応から学んだ教訓を共有するとともに、日本の保健医療システムの持続可能性と強靭性をより強化するために必要な改革について産官学民の有識者とともに議論するために、公開シンポジウム「医療システムの未来プロジェクト『将来に耐えうる保健医療システムの構築~保健医療システムの持続可能性と強靭性を強化する次のステップ~』」を開催しました。
そして、PHSSRプロジェクトで策定した提言書を公表し、医療政策に関心の高い方々に向けて広く提言内容の実現が日本の医療システムの未来のために重要であることを呼びかけました。
政策提言書では、日本の保健医療システムの持続可能性と強靭性の向上に向けた保健医療データ・インフラと利活用の強化に向けた 3つの具体的な第一歩として、以下を挙げています。
1) 医療従事者や患者にとって有益なデータ収集・分析ができるようにデータ・インフラを整備する
2) データに基づくポリシーメーキングやそのための産官学民連携を促進するために新しい組織を創設する
3) データを利活用して、危機の際に保健医療システムのガバナンス構造を再考する
■関連項目
【開催報告】医療システムの未来プロジェクト 第1回医療改革推進メディアセミナー&ワークショップ–日本の医療界における現状と課題の正しい理解–(2022年10月31日)
調査・提言ランキング
- 【当事者の声】薬剤耐性 伊東幸子氏 非結核性抗酸菌症(2022年3月18日)
- 【緊急提言】「認知症観を変革する認知症基本法の成立を」(2022年9月27日)
- 【出版報告】プラネタリーヘルスプロジェクト「プラネタリーヘルスに関する課題とヘルスケアセクターの役割」(2023年5月10日)
- 【調査報告】「がんゲノム医療」に関するインターネット調査結果(概要)(2023年5月11日)
- 【政策提言】2023年G7広島サミットに向けた提言~薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて 求められる政治的リーダーシップと国際連携(2022年12月19日)
- 【政策提言】C7グローバルヘルス・ワーキンググループによるG7に向けた提言書(2023年4月20日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【調査報告】「社会経済的要因と女性の健康に関する調査提言」(2023年3月6日)
- 【政策提言】2023年G7広島サミットに向けて~国際社会と歩調を合わせたプラネタリーヘルス対策の推進~(2022年11月10日)
- 【政策提言】G7広島サミットおよび関係閣僚会合に向けて~国際社会と歩調を合わせた気候変動・プラネタリーヘルス対策の推進~(2022年12月19日)
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