【開催報告・論点整理】AI診断支援プロジェクト 専門家会合「AIによる診断支援時代を見据えた産官学民のそれぞれの役割」(2026年5月25日)
日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、論点抽出ペーパー「AIによる診断支援時代を見据えた産官学民のそれぞれの役割 〜マルチステークホルダーで作る論点抽出ペーパー〜」を公表しました。
本ペーパーは、プログラム医療機器(SaMD: Software as a Medical Device)をはじめとするAI診断支援の社会実装を加速するために、市民・患者、行政、アカデミア、産業界の各セクターで議論されるべき論点を整理したものです。2026年4月17日(金)にチャタムハウスルールのもとで開催した専門家会合「AIによる診断支援時代を見据えた産官学民のそれぞれの役割 〜マルチステークホルダーで作る論点抽出ペーパーの発出に向けて〜」での議論、ならびにアドバイザリーボードメンバーへの個別ヒアリング、当機構が独自に行った調査を踏まえ、HGPIが独立した立場から取りまとめました。
■論点抽出ペーパーの概要
本ペーパーでは、AI診断支援を「医師の判断を補助するツール」と位置づけたうえで、その社会実装が、医療従事者の負担軽減や診療効率の向上といった「日常業務の効率化」と、プライマリケア段階での希少疾患の検出など「専門性の補完」という二つの方向性で医療の質向上に寄与しうることを整理しました。
そのうえで、社会実装を加速するための鍵として、既存制度の延長線上の改善(短期)と、非線形な制度改革(長期)を同時並行で進めることの重要性を指摘しています。
これらの基本認識を踏まえ、産官学民で議論されるべき論点を、以下の6つの領域に整理しています。
- エビデンス構築:AI医療機器の臨床研究に対する公的支援の拡充と、AI時代に適したエビデンス構築方法の整備を検討すべき
- PMDA審査体制・チャレンジ申請等の薬事制度:AI医療機器の進化スピードに対応した審査体制の強化と、「使いづらい」との指摘がある既存制度の運用改善を検討すべき
- 市販後運用:AI医療機器の継続的な性能変化への対応、現場の運用ルール(二重読影、広告規制など)の見直しを検討すべき
- 市民・患者の理解と信頼の醸成:AI導入の最大の障壁である「信頼」醸成のため、複数のステークホルダーによる中立的な情報発信基盤の構築を検討すべき
- 保険償還の「谷」と経済的インセンティブ:診療報酬上の評価の見直しに加え、暫定保険適用、保険外併用療養、補助金、バウチャーなど多様な経済的インセンティブを組み合わせた多層的支援設計を検討すべき
- データ活用基盤と希少疾患領域での開発促進:希少疾患領域での診断ラグ短縮のため、プライマリケアへの導入支援、オーファン医療機器指定制度のAI/SaMD特性に応じた見直し、データ活用基盤の整備を検討すべき
本ペーパーで提示した論点は、いずれも合意形成された結論ではなく、第3期医療機器基本計画の策定をはじめとする政策議論の場、ならびに学会・医療現場・産業界・患者団体それぞれの場での検討において、議論の素材として活用されることを期待するものです。
論点抽出ペーパーの詳細はページ下部PDFよりご覧ください。※日本語のみ
■論点抽出ペーパー作成の背景
高齢化の進展や医療ニーズの多様化を背景に、デジタル技術を活用した医療の変革が世界的に加速しています。なかでも、SaMDをはじめとするAI診断支援ツールは、医療の質向上、診断の効率化、医療従事者の負担軽減など多面的な価値が期待される分野として注目されています。日本でも内視鏡画像診断支援等の導入が始まっていますが、AI医療機器の薬事承認数は2024年時点で約41件と、米国の1,000件超と比較して発展の余地があります。
政府においても、AI医療機器を含むデジタル医療の普及促進に向けた政策展開が進められています。2027年度には「医療機器基本計画」の第3期計画への改定が予定されており、2026年3月には中間とりまとめが公表されました。一方で、AI診断支援の臨床的価値の可視化、診療ガイドラインへの組み込み、患者・市民の理解と信頼の醸成など、社会実装に向けては、産官学民の連携による継続的な議論が求められています。
こうした背景を踏まえ、当機構では、AI診断支援の社会実装の加速に向けた政策議論を推進するため、産官学民の有識者によるアドバイザリーボードを組成し、本専門家会合の開催およびマルチステークホルダーによる論点抽出ペーパーの作成に取り組みました。
■論点抽出ペーパー作成の過程
当機構では、AI診断支援の社会実装に向けた政策論点の整理にあたり、専門家会合の実施の前より産官学民の各セクターから幅広く知見と意見を収集しました。
まず、国内については、医療機器基本計画や診療報酬改定におけるAI医療機器関連の論点を整理し、海外については、米国・英国・韓国等における臨床実装や診療ガイドラインへの組み込み事例を調査しました。あわせて、有識者への個別ヒアリングを通じ、各セクターの実務的視点から、具体的な課題と解決策についてさらに深掘りしました。
これらを踏まえ、2026年4月17日(金)には、産官学民のアドバイザリーボードメンバーを中心とした専門家会合を開催しました。本会合では、AI診断支援の臨床的価値の可視化、医療現場への導入における障壁と解決策、難病・希少疾患領域における診断ラグの短縮、各ステークホルダーに期待される役割等について議論を行いました。
これらの調査、ヒアリング、専門家会合での議論をもとに、AI診断支援の社会実装に向けた論点抽出ペーパーを取りまとめました。
■専門家会合の様子
当日は、産官学民の有識者が一堂に会し、AI診断支援の社会実装に向けた課題と各セクターに期待される役割について、活発な議論が交わされました。
冒頭、HGPI代表理事・事務局長の乗竹亮治より趣旨説明を行いました。続いて、自由民主党 参議院議員 自見はなこ氏、および自由民主党 衆議院議員 橋本岳氏より、開会に寄せて「AIによる診断支援時代を見据えた各ステークホルダーへの期待」と題したビデオメッセージを頂戴しました。
その後、厚生労働省 医政局 医薬産業振興・医療情報企画課 医療機器政策室長の永田翔氏より、第3期医療機器基本計画 中間とりまとめの概要についてご説明いただきました。これを踏まえ、アドバイザリーボードメンバーによるラウンドテーブルディスカッションを実施し、市民・患者の理解と信頼の醸成、臨床的価値の可視化と評価、診療ガイドラインへの組み込み、難病・希少疾患領域での診断ラグの短縮、経済的インセンティブの実効性、という5つのテーマについて各セクターの視点から議論を深めました。

【開催概要】
- 日時:2026年4月17日(金)13:30-15:30
- 形式:対面・非公開(チャタムハウスルール)
- 会場:国際文化会館
- 言語:日本語
- 主催:特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)
- 参加者:患者・当事者、政策立案者、関連省庁関係者、関連学会関係者、企業関係者など約30名
■アドバイザリーボードメンバー(敬称略・五十音順)
大黒 宏司(日本難病・疾病団体協議会(JPA: Japan Patients Association)代表理事)
沖山 翔(アイリス株式会社 代表取締役社長/一般社団法人 AIセーフティ推進機構 代表理事)
鈴木 康裕(国際医療福祉大学 学長/初代 厚生労働省 医務技監)
多田 智裕(AI医療機器協議会 会長)
辻田 賢一(熊本大学 循環器内科学教授/心アミロイドーシスコンソーシアム(IMPACT)代表理事)
西村 由希子(特定非営利活動法人 ASrid(アスリッド)理事長)
濱村 美砂子(アレクシオンファーマ合同会社 社長)
八木 隆一郎(株式会社コルバトヘルス 代表取締役CEO)
■協賛企業 (五十音順)
アステラス製薬株式会社
アレクシオンファーマ合同会社
ファイザー株式会社
調査・提言ランキング
- 【調査報告】がんに関する全国調査-がん対策基本法成立から20年を迎えて-(2026年4月28日)
- 【政策提言】認知症プロジェクト「認知症の人をケアする家族等を取り巻く認知症施策のこれから」(2026年4月27日)
- 【調査報告】2026年 日本の医療に関する世論調査(2026年2月13日)
- 【政策提言】持続可能な保健医療システムへの道筋-社会的合意が期待される三つの視点-(2026年1月22日)
- 【調査報告】医療機関の省エネ・温室効果ガス排出削減事例集― 施設更新(新築・建て替え)に伴う実践事例 ―(2026年3月16日)
- 【政策提言】血液疾患領域における政策提言―患者・当事者中心の医療エコシステムの構築に向けて―(2026年4月13日)
- 【調査報告】日本の保健医療分野の団体における気候変動と健康に関する認識・知識・行動・見解:横断調査(2025年11月13日)
- 【論点整理】社会課題としての肥満症対策~肥満症理解の推進と産官学民連携を通じた解決に向けて~(2025年8月21日)
- 【お知らせ】C7グローバルヘルス・ワーキンググループによるG7に向けた保健分野の提言書に署名(2026年3月30日)
- 【出版報告】医療システムの未来プロジェクト「非感染性疾患への予防・早期介入に向けた政策提言」(2026年3月)
注目の投稿
-
2026-05-13
【申込受付中】第5回HGPIサロン2025-2026:日本の社会保障の未来を見据えて「令和の時代に考える、社会における医療の価値」(2026年6月29日)
-
2026-05-15
【申込受付中】(オンライン開催)第2回J-PEPセミナー「治験等の参加者募集に関する情報提供の新たな枠組みー患者・当事者参画の視点から考える法的ポイントー」(2026年6月15日)
-
2026-05-18
【申込受付中】キックオフ・パネルディスカッション「日本とアフリカから世界へ、共に醸成する哲学対話」(2026年6月15日)
-
2026-05-19
【申込受付中】(オンライン開催)HGPIセミナー特別編「血液とともに生きる社会をつくる ─在宅医療×当事者研究の現場から問う、血液疾患政策の未来」(2026年6月12日)



