活動報告 調査・提言

【政策提言】「研究開発への患者・市民参画(PPI)の実効性ある推進に向けて―疾患横断・省庁横断の体制整備に期待する―」(2026年6月30日)

【政策提言】「研究開発への患者・市民参画(PPI)の実効性ある推進に向けて―疾患横断・省庁横断の体制整備に期待する―」(2026年6月30日)

日本医療政策機構では、政策提言「研究開発への患者・市民参画(PPI)の実効性ある推進に向けて―疾患横断・省庁横断の体制整備に期待する―」を公表しました。

提言1:PPIの定義・理念および評価の枠組みに関する政府方針の策定

政府として、日本の文脈に沿った研究開発におけるPPIの目指すべき姿としての定義と、重視すべき理念を明示し、戦略・指針・基準等の形で示すべきである。現在は、AMEDやPMDA等においてPPIの必要性が高まっていくことを見据え、それらを包括する横断的な方向性について、明示することが期待される。なお、こうした方向性は一度策定して終わりとするのではなく、時代の変化やPPIをめぐる議論の進展・知見の蓄積や患者・当事者・市民を交えた議論を踏まえ、継続的に更新していくことが望まれる。
さらに、「参画」については、領域に応じた特性・状況を踏まえたものであることが求められることから、多層的な参画のあり様を前提とした柔軟かつ段階的な設計を行うとともに、研究者および患者・当事者・市民にとって熟慮された評価の枠組みを整備する必要がある。
また、これらの方針を、研究者および患者・当事者・市民が具体的に理解し実践できるよう実務ガイドラインの策定と継続的な改定を行うべきである。ガイドラインの中には、患者パートナーが提供する時間や経験、知見に対する適切な謝金・費用補償を制度として位置づけることや、多様な参画形態を可能とするための合理的配慮の必要性も明示することが不可欠である。

提言2:幅広い個人の参画を支える疾患横断的なPPI推進の仕組みの構築

PPIの推進に当たっては、疾患領域ごとの実装状況や疾患の特性を踏まえ、特定の疾患や個人・団体に偏りすぎない推進体制を構築すべきである。そのためにまず、これまでAMEDを筆頭としたPPI推進の実績や各疾患領域におけるPPIの実施状況を把握し、好事例を蓄積・共有する仕組みが求められる。その仕組みの整備を通して、より支援が必要な領域や経験・知見の可視化をし、知見を広く還元することで、日本全体の研究開発におけるPPIの底上げをすることが期待される。
あわせて、研究者と患者・当事者の研究目的に応じたマッチング機会の拡充や、双方を対象とした研修・学びあいの場の整備も重要である。幅広い人が参画できるよう団体・組織に依存せず個人として参画できる仕組みを整えるとともに、患者・当事者・市民が研究開発に参画するためのスキルや知識を習得できる機会を提供することで、特定の個人への依存と負荷を防ぎ、参画の裾野を広げることが必要である。これらの取組においては、患者・当事者団体やPPIをサポートする非営利・中立的な組織の知見と基盤を積極的に活用すべきである。
当機構においても、本提言を通じてこうした仕組みの必要性を訴えるだけでなく、今後、当機構が構築している患者・当事者の参画プラットフォームである「みんなの患者・当事者参画プラットフォーム(J-PEP: Japan’s Patient Expert Platform)」を通じ、研究開発に関する参画機会や研修・学びあいの場の情報発信に取り組んでいく予定である。

提言3:内閣府を念頭に置いた省庁横断的な推進体制の整備

PPIの推進は当面、厚生労働省やAMEDが所管する領域を中心に着実に進めつつ、中長期的にはそれ以外の様々な人を対象とした創薬分野の研究開発と社会実装、さらにはより広範な科学技術・イノベーション政策へと展開されていくことが期待される。そのためには、提言1で述べた定義・理念および評価の枠組みの検討や、提言2で述べた好事例の蓄積・共有などが、特定の省庁や所管組織にとどまらず、省庁横断的な体制で取り組まれることが望ましい。
そこで提言3としては、内閣府の科学技術・イノベーション政策の枠組みを念頭に置いた体制整備を提案する。例えば、研究者、患者・当事者の代表、PPIの促進活動を行う支援組織等を構成員とする連絡会議としての役割を持つ恒常的なワーキンググループを内閣府に設置することが挙げられる。この会議体は、各省庁が所管する研究開発領域、さらには民間組織におけるPPIの実施状況の共有、定義・評価基準の検討、好事例の蓄積と発信などを担い、患者・当事者のみならず研究者・学会に対するPPI推進支援の在り方など、日本全体としてのPPI推進の方向性を、官民連携で共有しつつ段階的に具体化していく場として機能することが期待される。なおこうした会議体においては、PPIの実践と同様、メンバーの固定化や閉ざされた議論の場とならないよう、会議体の設置要綱などの策定時には留意が必要である。当機構においても、本提言を通じてこうした仕組みの必要性を訴えるだけでなく、こうした議論の場の創出に試行的に取り組んでいくこととしたい。
こうした取り組みは、日本における医学研究におけるPPIの推進のみならず、科学技術に対する市民参画、さらにはより実社会で求められる研究開発の推進を通じた日本の産業競争力の強化にもつながっていくことも期待できる。

 

詳細は末尾のPDFをご覧ください。

本提言書は、独⽴した医療政策シンクタンクとして⽇本医療政策機構が取りまとめたものであり、専門家や登壇者等の関係者、および関係者が所属する団体の⾒解を示すものでは⼀切ありません。

 

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