【政策提言】難聴プロジェクト「ライフコースを通じた切れ目のない難聴対策の実現に向けた政策提言ーすべての人が適切な聴覚ケアにアクセスできる社会の構築を目指してー」(2026年7月30日)
日本医療政策機構(HGPI)では、2025年度より難聴プロジェクトを始動し、2026年7月30日に政策提言「ライフコースを通じた切れ目のない難聴対策の実現に向けた政策提言ーすべての人が適切な聴覚ケアにアクセスできる社会の構築を目指してー」を公表しました。
世界では現在、人口の約5%にあたる4.3億人(うち子ども3,400万人)が難聴への介入を必要としており、2050年までには25億人が何らかの聞こえの課題を抱え、そのうち約7億人が聴覚のリハビリテーションを必要とすると推計されています。日本でも難聴者数は約1,430万人と人口の約10%にのぼります。
難聴は加齢によるものに限らず、騒音や若年層のイヤフォンの使用、先天性など多様な要因で生じ、あらゆる世代が直面しうる課題です。また、認知症の最大のリスク因子とされるほか、社会的孤立やうつ病、QOLの低下との関連も指摘されています。一方で、早期の発見と適切な介入によってこれらのリスクの軽減が期待できることから、生涯を通じた切れ目のない対策が求められます。しかし日本では、適切な時期に診断・介入へつなげる仕組みが十分に整っておらず、補聴器の普及率も先進国で最低水準にとどまっています。
こうした課題の解決に向けて、本提言では、ライフコースを通じた切れ目のない難聴対策の実現を目指し、4つの方向性から具体的な提案を行っています。
詳細については末尾PDFをご覧ください。
【政策提言の概要】
Ⅰ. 難聴や補聴機器に関する社会的認識の向上と早期介入の推進
- 難聴に関する正しい理解と、早期介入に対するポジティブなイメージの普及を図り、難聴および補聴機器に対するスティグマの払拭と装用への心理的抵抗感の軽減に取り組むべきである
- 補聴機器に関する広告規制の見直しと、当事者が主体となって情報アクセスできる環境を整備すべきである
- 難聴への早期介入の重要性をエビデンスに基づいて発信すべきである
Ⅱ. 難聴の早期発見および適切な受療につなげるための制度・仕組みの設計
- 難聴の早期発見のため、日常生活において聴力の低下に気づく場面を創出するとともに、より広い世代に対するスクリーニング体制の整備を行うべきである
- 聴覚データの経年的な連携・管理を通じて、各ライフステージにおける早期介入体制を確立すべきである
- スクリーニング後、受療へ確実につながるための仕組みづくりを行うべきである
Ⅲ. 聴覚診療提供体制の整備
- 耳鼻咽喉科医・他診療科医師の難聴診療に対する理解および病診連携を促進すべきである
- 難聴診療を促進する診療報酬加算の在り方を検討すべきである
- 聴覚領域を専門とする言語聴覚士の育成・役割拡大と雇用を促進すべきである
- 聴覚診療の専門家不足や偏在の解消に最新技術の活用を推進すべきである
Ⅳ. 難聴の段階に応じた切れ目のないパスウェイと補聴機器のアクセスと質の確立
- 難聴の程度(軽度・中等度・高度・重度)に応じて、適切なケアや専門家につながるための体系的なパスウェイを、産官学民の関係者が患者・当事者視点で共に整理・作成し、公式に位置づけるとともに、パスウェイが実効性を伴う環境整備を進めるべきである
- 障害者総合支援法や自治体助成金等による補聴器購入補助対象外にある軽度・中等度難聴の成人(30dB 以上 70dB 未満)に対し、難聴の程度に応じた段階的な公的支援・保険制度の導入を検討するべきである。その際、国と自治体の役割分担を明確化し、自治体の財政力によって支援水準に地域間格差が生じない制度設計とすべきである
- 軽度・中等度難聴児が小児期から成人期(18 歳以降)へ移行する際に生じる複合的な支援の断絶を解消し、ライフコースを通じた切れ目のない支援が受けられるよう、省庁横断的な調整の枠組みの構築を図るべきである
- 難聴への公的支援拡充に向けたエビデンスの整備と優先順位の明確化を図るべきである
- 補聴器購入に関わる経済的負担の軽減にあたっては、公的支援のみに依存するのではなく、メーカー・販売店・保険制度・税制等を組み合わせた官民連携による多層的な仕組みを整備するべきである
※本提言書は、アドバイザリーボード会合での議論をもとに、中立・独立の医療政策シンクタンクとして日本医療政策機構が取りまとめたものであり、アドバイザリーボード・メンバーを含む関係者、および関係者が所属する団体の見解を示すものでは一切ありません。
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