【お知らせ】プラネタリーヘルスプロジェクト「令和7年度 東京都都民による事業提案制度(都民提案)」事業案提出(2025年5月30日)
日付:2025年6月24日
タグ: プラネタリーヘルス

日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)プラネタリーヘルスプロジェクトは、東京都財務局による「令和7年度 都民による事業提案制度(都民提案)」について、4件の事業提案を提出いたしました。なお、既に提案の募集は終了しております。
都民による事業提案制度(都民提案)は、「都民が提案し、都民が選ぶ」ことで都民の声を直接施策に反映させる新たな都政参画の仕組みであり、従来の発想に捉われない新たな視点から都政の喫緊の課題を解決することを目指しています。2025(令和7)年度の提案募集は4月4日から5月30日まで行われ、結婚・妊娠・出産・子育て支援、若者支援、防災対策・安心安全な暮らしの実現、女性活躍、脱炭素社会の実現、デジタルシフトの推進など、幅広い分野で事業案が受け付けられました。
本制度では、都内在住・在勤・在学の15歳以上の個人および都内に活動拠点を有する法人・団体が提案者となることができ、1事業あたり2億円以内(原則単年度事業)という条件のもとで事業プランを提案できます。提案された事業案は都による審査を経て、2025(令和7)年7月下旬から都民によるインターネット投票が実施される予定であり、その結果を踏まえて2026(令和8)年度予算案への反映が図られる見込みです。
柔軟な発想で東京都の課題解決を目指す都民提案
近年、社会経済情勢の変化や気候危機の深刻化、少子高齢化などにより都政を取り巻く環境は予想しえないスピードで変化しています。東京都はこうした時代の変化に対応するための施策に、都民一人ひとりの声を直接反映させることで、従来の発想にとらわれない新たな視点から、東京都が抱える喫緊の課題の解決を図るため、本制度を導入しました。当機構では、気候変動と健康を統合的に捉えるプラネタリーヘルスの観点から、都政における環境と健康分野の政策強化を提言しております。こうした活動を踏まえ、このたび都民提案制度を通じて提案した4件の事業案も、気候変動による健康影響への対策や持続可能な健康政策などに焦点を当てた内容となっています。提出した4つの事業案の概要は以下の通りです。
持続可能で健康的な東京をつくることを目指したHGPIの事業案
テーマ1:高齢者に対する熱帯夜の健康リスク対策
気候変動や都市化によって増加する熱帯夜が高齢者の健康に及ぼす深刻なリスクに対応するため、東京都内の夜間暑熱脆弱性を可視化する「ナイトタイムヒートリスクマップ(仮称)」を整備し、その活用を地域に広める事業案を提案しました。独居高齢者や生活困窮者のエアコン不使用率が高いなどの現状をふまえ、地域統計と気候データを組み合わせて重点支援地域を明示します。自治体職員や支援者向けのガイドブック作成・研修、住民向けの啓発活動を通じてマップの普及と活用を推進し、高齢者の熱中症予防と救急搬送削減、地域のレジリエンス向上を目指します。将来的には東京ゼロエミポイント事業等も効果的に活用することで、エアコン導入支援を促し、熱帯夜の健康リスク軽減が期待できます。テーマ2:医療機関の脱炭素化支援
中小医療機関での省エネ対策の停滞を踏まえ、医療分野のCO2排出削減を目的に、中小医療機関向けの脱炭素支援プログラムと認証制度を整備する事業案を提出しました。本事業では、エネルギー使用診断ツールや専門家の派遣によって施設ごとの省エネ・節電策を具体化し、再エネ導入や設備更新を促進します。さらに、医療従事者への環境教育「グリーン研修」を実施するとともに、「ゼロカーボンヘルスセンター」認証制度を創設し、達成度に応じた助成や表彰を提供します。この取り組みにより、CO2排出とエネルギーコストを同時に削減し、東京都における持続可能な医療提供体制の構築を目指します。テーマ3:再製造単回使用医療機器(R-SUD)普及による医療分野におけるサーキュラーエコノミー推進
医療現場においては、大量に発生する廃棄物による感染リスクや環境負荷が課題となっています。この課題の解決のため、医療廃棄物の削減と循環型社会の実現を目的に、再製造単回使用医療機器(R-SUD: Remanufactured Single-use Medical Device)の普及を図る本事業では、啓発活動、導入支援、制度整備を一体的に展開します。導入希望病院には専門家を派遣し、回収体制や感染管理の整備を支援するとともに、モデル病院による効果の「見える化」や再製造企業への支援も行います。これにより、医療廃棄物やCO2排出の削減、調達コストの低減が期待され、医療分野のサーキュラーエコノミー(循環経済)化を先導します。テーマ4:東京都における熱中症対策強化に向けたチーフ・ヒート・オフィサー(CHO)設置事業
最後に、猛暑の激化を受けた熱中症リスクへの統合的対応を目的に、東京都に「チーフ・ヒート・オフィサー(CHO: Chief Heat Officer)」を新設し、部門横断型のヒートリスクマネジメントを展開する提案を行いました。高リスク地域の把握、クーリングセンター整備、教育・啓発、見守り体制の推進などを通じて、高齢者や子供、屋外労働者などの脆弱層の健康被害を抑制します。市民や自治体の適応行動を促すとともに、国際都市と連携し先進的な都市型モデルの構築を目指します。こうした取り組みにより、全庁的な統合的リスク管理が実現し、住民の熱中症予防を加速させることを狙いとしています。
都民提案に関し、詳しくはこちらをご覧ください。
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