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【パブリックコメント提出】「2050東京戦略 ~東京 もっとよくなる~(案)」(2025年3月3日)

【パブリックコメント提出】「2050東京戦略 ~東京 もっとよくなる~(案)」(2025年3月3日)

日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、東京都政策企画局による『「2050東京戦略 ~東京 もっとよくなる~(案)」の取りまとめ及び意見募集』について、パブリックコメントを提出いたしました。なお、既に意見(パブリックコメント)の募集は終了しております。

「2050東京戦略」は、前回の戦略である「未来の東京」戦略を発展させた都の総合計画であり、「まち・ひと・しごと創生法」(平成26年法律第136号)第9条に基づく「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を勘案した「東京都総合戦略」に位置付けられています。

現在、提示されている「2050東京戦略 ~東京 もっとよくなる~(案)」は、近年の社会経済情勢の変化、気候危機の深刻化、少子高齢化など、都政を取り巻く情勢は予想しえないスピードで変化していることを踏まえ、この時代の変化を「チャンス」に変え、持続的な成長につなげ、2050年代に目指す東京の姿「ビジョン」を実現するため、2035年に向けて取り組む政策を取りまとめた都政の新たな羅針盤となる長期戦略として検討がなされています。

■プラネタリーヘルスと東京のグローバルリーダーとしての役割

気候変動の影響が深刻化する中、東京都のリーダーシップは他の都市や国にとっても模範となりうる存在です。これまでの都政において、東京都は「ゼロエミッション東京戦略」や「プラスチック・スマート東京」などの革新的な環境政策を導入し、温室効果ガスの削減や廃棄物の削減に向けた具体的な行動を展開してきました。2021年3月に策定された「未来の東京」戦略においても、「気候危機」を人類が直面する大きな危機の一つとして捉え、温室効果ガス排出量の削減と都市の強靱化に関する重点目標を策定してきました。今回の「2050東京戦略」においても都政を取り巻く情勢の変化として「気候危機」の更なる深刻化を強調し、戦略の中に包括的に言及し、更なる野心的目標を定めています。また、本案の検討にあたって導入されたブロードリスニングの手法では「災害に強い街を目指し、自然の力を活かした再開発を行う」「都市全体がエコフレンドリーなインフラで整備」「プラネタリーヘルスに基づく健康都市東京を実現」といった声も都民から寄せられました。しかし、気候変動・環境汚染・生物多様性の喪失といった地球規模の課題が、人々の健康に直接的かつ深刻な影響を与えていることが日々明らかになり、国際社会においても重要視され、日本だけでなく、国際的な大都市でもある東京都において、都民が健康と長寿を享受することのできる社会形成に向けたプラネタリーヘルスからの視点が十分に取り入れてられているとは言えません。

■持続可能で健康的な未来に向けたHGPIの提言

HGPIは、東京都がブルームバーグ・フィランソロピーズや世界保健機関(WHO: World Health Organization)などと連携し「ヘルシー・シティ・パートナーシップ」としての取り組みをさらに進化させ、地球、世界、日本、そして都民の健康とウェルビーイングを守り育むための持続可能な未来を築くための「グリーンなヘルスシステム」の構築を提案します。また、近年、東京都では熱波や異常高温の影響が深刻化しており、熱中症による救急搬送や死亡者が増加する中で、米国のマイアミやロサンゼルス、ギリシャのアテネなどで導入されている熱波や異常高温から住民を守るための包括的な戦略を策定し、自治体内の関連部門の連携を推進する責任者としてチーフ・ヒート・オフィサー(CHO: Chief Heat Officer)*の設置などを求めています。

■国内外における先進的な取り組み

なお、具体的な取り組みにするうえで、保健医療施設などについての国際的な議論は「グローバル・グリーン・アンド・ヘルシー・ホスピタルズ(GGHH: Global Green and Healthy Hospitals」などの取り組みが進んでいます。また、日本プライマリ・ケア連合学会は、気候変動対策に取り組むことを、「プライマリ・ケアにおける気候非常事態宣言(浜松宣言)」としてとりまとめて公表しており、今後、保健医療従事者の間でも広まっていくことが期待されています。

以上のことを踏まえ、HGPIでは以下のポイントを含めたパブリックコメントを提出しました。

パブリックコメントのポイント

  1. 熱中症をはじめ気候変動関連疾患へ適応した保健医療提供体制を構築すること
  2. 子ども目線に立った政策促進において、気候変動の取り組みを取り入れること
  3. 持続可能な農林水産業の確立にプラネタリーヘルスダイエットを含めること
  4. 「緑と水」の目標において、人のウェルビーイングの指標を目標として含めること
  5. 「都市の強靭化」において、気候変動による直接的・間接的な健康への影響を強調し、暑熱対策等を推進すること
  6. 都内の病院の脱炭素化を推進すること
  7. 都市の暑熱問題と健康リスクの解決策すること
  8. ヘルシー・シティ・パートナーシップ(Partnership for Healthy Cities)との協働を推進すること
  9. 最高熱波対策責任者(CHO: Chief Heat Officer)設置による暑熱対策の推進すること

 

本件パブリックコメントに関し、詳しくはこちらをご覧ください。

*チーフ・ヒート・オフィサー(CHO: Chief Heat Officer)は、最高熱責任者、最高熱波対策責任者、最高熱波責任者などとも呼ばれている。

 

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