【政策提言】「災害級の暑さ」への備えを骨太の方針2025に(2025年6月9日)
日付:2025年6月9日
タグ: プラネタリーヘルス
日本医療政策機構プラネタリーヘルスプロジェクトは、骨太の方針としても知られている経済財政運営と改革の基本方針2025に向けた政策提言「気候変動時代における健康危機対応の制度設計~『災害級の暑さ』の上流と下流への備えを組み込むために~」を発表しました。
本提言では、近年激甚化・頻発化する異常気象や気候変動によって生じる健康被害、とくに「災害級」とも言われる猛暑や熱中症を、医療・防災・エネルギー・都市政策と連携して取り組むべき国家的な構造課題として再定義しています。気候変動の健康影響に対する制度的な備えの強化を、骨太の方針の中心的な政策課題として位置づける必要性を訴えています。
2024年には全国で過去最多となる97,578件の熱中症による救急搬送、2,033件の死亡が報告され、実際の関連死は統計上の7倍にも上る可能性が指摘されています。こうした「見えにくい健康リスク」が高齢者を中心に拡大するなか、医療提供体制全体が持続的な負荷にさらされています。
本提言は、以下の3つの視点から、プラネタリーヘルスを軸とした政策転換の必要性を明確に提示しています。
■ポイント
1.プラネタリーヘルスを柱とした横断的政策フレームの構築
- 環境・健康・経済の三位一体で政策を統合する視点を明文化
- SDGsや環境基本計画、医療戦略といった既存の施策間での連携強化
- GXやカーボンプライシングといった成長戦略と健康政策の一体化
2.「健康×防災」への転換:地域レジリエンスの再定義
- 熱中症などの気候起因の災害リスクを災害対策の中心課題として再定義
- 高齢者や地域の脆弱層に向けた支援・アラート体制の強化
- 医療施設の耐震・脱炭素・再生エネルギー対応を進め、災害対応型ヘルスケア拠点へ転換
3.GXと国際連携による脱炭素型医療・介護の構築
- ATACH参加を機に、医療・介護分野のGX関連投資の優先配分を提案
- 建て替え困難な老朽施設への支援拡充と、ZEB実証事業の地域展開
- 都市計画への医療・公衆衛生専門家の参加を制度化し、健康と都市の共進化を促進
提言では、地球環境と人間の健康とが相互に影響し合う「プラネタリーヘルス」の考え方を単なる理念ではなく、財政・医療・防災・成長戦略をつなぐ政策設計の骨格と位置づける必要性を強調しています。今後の骨太の方針には、GX、レジリエンス、脱炭素医療、自然共生都市といった個別政策をつなぐ共通の戦略として、プラネタリーヘルスの視点を明記することが不可欠です。
日本医療政策機構は、こうした包括的提言を通じて、日本が「気候と健康の両立」における国際的リーダーシップを発揮し、国内外の持続可能な社会づくりに貢献することを目指します。
詳しくは下部PDFをご覧ください。
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