【開催報告】プラネタリーヘルスアカデミー(後半)(2025年10月15日~11月5日)
日付:2025年12月9日
タグ: プラネタリーヘルス
日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、プラネタリーヘルスアライアンス日本ハブ(Planetary Health Alliance Japan Hub)とともに、健康と環境の関係に関する知識および認識の向上を目的として、2025年に「プラネタリーヘルスアカデミー」を開講しました。前半3回の講義に引き続き、後半3回の講義が実施され、全6回のプログラムが無事に終了しました。
本アカデミーでは、まずプラネタリーヘルスの基礎概念から始まり、人間活動が地球システムに与える影響についてご解説後、気候変動や環境曝露など、環境悪化が健康に及ぼす具体的な経路について検討しました。さらに、持続可能な都市設計や生物多様性の保全、ヘルスケアシステムの変革といった多層的な解決策を取り上げ、国内におけるプラネタリーヘルス推進の重要な基盤を築くことができました。
第4回「持続可能な健康都市の展開のための国内外の取り組み」(2025年10月15日)
第4回講義では、中村桂子氏(東京科学大学 名誉教授/プラネタリーヘルスアライアンス日本ハブ 運営委員)より、人と地球の健康を両立させる都市のあり方についてご講演いただきました。講義では、「ヘルシー・シティー」や「15分都市」、「価値に基づく都市計画」といった概念が紹介され、都市環境がウェルビーイングや持続可能性の形成に与える影響が強調されました。また、大気汚染や生物多様性の損失、気候変動など都市が直面する課題についても取り上げられ、世界各地の事例を通じた解決策が紹介されました。さらに、持続可能で健康な都市づくりを進める上で、分野横断的な協働や住民参加型の都市ネットワークの重要性が強調されました。
第5回「生物多様性と生態系サービスと人間の健康」(2025年10月22日)
第5回講義では、曽我昌史氏(東京大学 大学院農学生命科学研究科 准教授)より、生物多様性および生態系サービスが人間の健康に与える影響についてご講演いただきました。種の多様性、遺伝子の多様性、生態系の多様性が人々のウェルビーイングを支える上で極めて重要であることが示される一方で、都市化の進展や自然との接触機会の減少が新たな課題として浮き彫りになっていることが説明されました。さらに、過剰な資源利用、外来種の導入、汚染、気候変動など、人間活動が生物多様性の喪失を加速させている現状についても詳細に解説されました。
第6回「医療の現場からのプラネタリーヘルスアプローチ」(2025年11月5日)
最終回となる第6回講義では、横田啓氏(岡山協立病院救急部長・総合診療科/一般社団法人みどりのドクターズ 理事)よりご講演いただきました。講義では、気候変動が健康リスクの構造を変化させており、プラネタリーヘルスの視点に基づく持続可能な医療アプローチの重要性が現場の視点から示されました。特に、医療部門における温室効果ガス排出は、医薬品の使用、電力消費、入院医療を中心に増加しており、医療システム全体での変革が必要であることが強調されました。また、個人・組織・政策の各レベルで協調した取り組みを行うことの重要性が示され、医療従事者が低炭素かつ予防志向の医療を推進する上で中心的な役割を担うことが強調されました。
本アカデミーを通じて、いくつかの重要なテーマが浮き彫りになりました。まず、脆弱性は均等に分布していないことが示されました。環境汚染への子どもの感受性、高齢者の熱関連リスク、緑地へのアクセスが限られた地域コミュニティなど、環境や健康への負荷は、特に適応力の低い人々に大きく影響を及ぼすことが繰り返し指摘されました。次に、環境と健康の課題は相互に関連しており、断片的な対応では解決できないことが示されました。都市計画と公衆衛生の目標においてコベネフィットを模索することや、生物多様性の損失と気候変動が互いに健康への影響を増幅させることを理解するなど、統合的かつ分野横断的なアプローチの重要性が強調されました。さらに、あらゆるレベルでの行動が求められることも明らかになりました。個人の行動変容、組織の変革、地域社会の都市設計への参加、政策間の協調など、多層的な取り組みが必要であることが示されました。
当機構では、本アカデミーを通じて形成されたネットワークや得られた知見が、受講生の皆様のそれぞれの現場や活動において活かされ、日本国内、国際社会におけるプラネタリーヘルス推進の基盤となることを期待しています。
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