活動報告 調査・提言

【政策提言】2023年G7広島サミットに向けた提言~薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて 求められる政治的リーダーシップと国際連携(2022年12月19日)

【政策提言】2023年G7広島サミットに向けた提言~薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて 求められる政治的リーダーシップと国際連携(2022年12月19日)

日本医療政策機構は、2023年G7広島サミットに向けた提言として、「薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて 求められる政治的リーダーシップと国際連携」を公表しました。


【概要】

提言1:AMR対策に求められる政治的リーダーシップを継続すべき
提言2:外務大臣・保健大臣合同会合等の領域横断的な議論の場を設定し、AMR対策を議論すべき


薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)対策は、健康危機上の重要課題として国内外で継続的に認識され、世界でも関係者の努力により着実に対策を進めてきました。近年、G7ではパンデミックに対する予防・備え・対応(PPR: pandemic prevention, preparedness, and response)として診断・治療・予防の全ての領域における総合的なイノベーションの重要性が認識されています。

ポストコロナ時代を迎え、平和と安定及び繁栄を享受し続けるうえで、国際公共財たる抗菌薬が果たす役割は看過できません。国際保健規則(IHR: International Health Regulation)やパンデミック条約等、感染症に関する国際的な取り決めの検討が進むなかで、人間・動物・環境の健康が一体であるというワンヘルスの発想に基づきAMR対策を推進するためには、G7等のハイレベル会合でもその概念と呼応する形で領域横断的な議論の場が設定される必要があります。資金動員に関する検討も求められます。来たる2023年のG7議長国として、感染症対策は自国のみでは完結せず、自国と世界の利益が隣接しているという考えに基づき、国際社会における責務を果たすことが重要です。

詳細は末尾のPDFをご覧ください。



2023年G7広島サミットに向けた提言


薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて
求められる政治的リーダーシップと国際連携

 

背景

薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)対策は、健康危機上の重要課題として国内外で継続的に認識され、世界でも関係者の努力により着実に対策を進めてきた。近年、G7ではパンデミックに対する予防・備え・対応(PPR: Pandemic Prevention, Preparedness, and Response)として診断・治療・予防の全ての領域における総合的なイノベーションの重要性が認識されている。この認識は前回日本が議長国を務めた2016年G7伊勢志摩サミット及び2016年以降の経済財政運営と改革の基本方針においても一致するところである。そこで、このモメンタムを活かしながら、来たる2023年の広島サミットに向けて、より包括的で実効的なAMR対策を進めるために提言を公表する。なお、日本医療政策機構では、既にAMR対策に関してプル型インセンティブに焦点を当てた提言等を公表している。関連する提言等についてはウェブサイトを参考にしていただきたい。


提言1:AMR対策に求められる政治的リーダーシップを継続すべき

2016年以降のG7では、保健大臣会合、財務大臣・中央銀行総裁会合、農業大臣会合、気候・エネルギー・環境大臣等、ひいては首脳会合でもAMR対策の重要性が明記され続けている。2022年2月には、英医学誌「Lancet」で、AMRが直接起因する世界の年間推定死亡者数(2019年)が127万人にのぼることが報告され、HIV/AIDS、マラリアの死者数を上回ることが明らかになった。2050年にはAMRによる死亡者が1000万人にのぼり、その大半はアジアとアフリカで発生すると予測されている。三大感染症でもAMRの問題は大きくなっており、G7各国でも適切なAMR対策が実施されていれば、G7諸国をあわせて2019年だけで50万人の命を救うことが可能であったと考えられている。G7が国際社会を先導し、AMR対策の推進に向けた政治的リーダーシップの発揮を継続すべきである。


提言2:外務大臣・保健大臣合同会合等の領域横断的な議論の場を設定し、AMR対策を議論すべき

G7の場を越えて、国際社会においてもAMR対策を含む新興・再興感染症対策の重要性は認識されている。国連持続可能な開発サミット(国連サミット)において、2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」は象徴的である。SDGsには、3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。」と掲げられており、評価指標でも選択抗菌薬耐性菌による血流感染の割合(Percentage of bloodstream infections due to selected antimicrobial-resistant organisms)が採用されている。我が国でも2022年に改定された「グローバルヘルス戦略」においてAMRが独立した項目で議論され、対策の必要性が強調されている。国際社会が2030年のSDGs達成に向けて今まさに一丸となって活動を進めているなかで、AMR対策を気候変動等と同様、国際連携及びワンヘルスアプローチが求められる地球規模課題と位置づけ、外務大臣・保健大臣や保健大臣・財務大臣等の各合同会合を開催し、AMR対策を議論すべきである。

AMR対策に求められる国際連携とその意義

ポストコロナ時代を迎え、平和と安定及び繁栄を享受し続けるうえで、国際公共財たる抗菌薬が果たす役割は看過できない。例えば、薬剤耐性結核の高蔓延国であるウクライナは、今まさに薬剤耐性の問題に直面している。国際保健規則(IHR: International Health Regulation)やパンデミック条約等、感染症に関する国際的な取り決めの検討が進むなかで、人間・動物・環境の健康が一体であるというワンヘルスの発想に基づきAMR対策を推進するためには、G7等のハイレベル会合でもその概念と呼応する形で領域横断的な議論の場が設定されるべきである。来たる2023年のG7議長国として、感染症対策は自国のみでは完結せず、自国と世界の利益が隣接しているという考えに基づき、国際社会における責務を果たすことが重要である。

 

以上

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