【開催報告】こどもの健康推進プロジェクト 公開フォーラム「“異次元”の子ども関連施策の推進に向けた課題と展望」(2023年4月6日)
日付:2023年4月14日
タグ: こどもの健康
本公開フォーラムは、2023年2月に当機構が公表した緊急提⾔(【緊急提言】「成育基本法・成育基本計画の実施と運用に向けた課題と展望」(2023年2月17日))の内容を広く発信し、議論を深化させることを目的に開催いたしました。元厚生労働省医系技官で小児科専門医の千先園子氏(国立成育医療研究センター こどもシンクタンク企画調整室 副室長)、長年にわたり、こどもの健康政策を推進され、当機構「こどもの健康推進プロジェクト」スペシャルアドバイザーとしてご助言をいただいている五十嵐隆氏(国立成育医療研究センター 理事長)、「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」の共同代表を務められ、こども家庭庁創設に向けた提言を取りまとめられた、自見はなこ氏(参議院議員)がご登壇されました。
<POINTS>
- こども政策は、社会全体で取り組んでいくべき課題であり、小児医療関係者のみならず、包括的な視点から多様なステークホルダーが参画し、提言していくことが重要である。
- 研究結果を政策実装する過程においてボトルネックが生じており、自治体間の相互参照機会の拡充(好事例の横展開)が必要である。また、自治体のみでデジタルヘルスの推進、公的支援を補う民間事業者の育成は難しいため、国主導のもと産官学民の連携を推進することが重要である
- 「健康」の定義は、「身体的、心理的、社会的に良い状態」であることが1988年にWHOにより示されている。日本の身体的健康は、OECD加盟38か国の中で第1位である一方で、心理的健康は第37位、社会的健康は第27位である。これまでの日本の小児医療は身体的健康の改善を目指し取り組みを行ってきたが、今後はこれら3つの側面すべてに着目し、「バイオサイコソーシャル」な健康の推進が重要である
- 例えば、こどものメンタルヘルスや社会性を評価し、支援する仕組みが欠如しているため、学校検診の充実や個別検診などの手段を用いて、「バイオサイコソーシャル」の面からこどもと家族を支援し、こどものリスクに対応できる体制構築が必要である
- こども家庭庁は、年齢や制度の壁を克服した切れ目のない包括的支援イメージを掲げているが、依然として、「母子保健」以降の保健分野が明記されていない。「小児保健・思春期保健」の整備、学校保健との連携により継続的・包括的支援の推進が必要である
- こども家庭庁の設置、こども政策の推進に当たっては、専任大臣のもと強い権限と予算を確保し政治主導で進めていくことが重要である。「バイオサイコソーシャルを一体的に保証する」ことはこども家庭庁内にも共有されており、2023年秋に閣議決定されるこども大綱にも反映されるものと思われる。バイオサイコソーシャルが「一体的」であることが非常に重要であり、今後運用の中で、「身体的・心理的・社会的(バイオ・サイコ・ソーシャル)」に切り分けて考えられてしまわないよう理解の促進が必要である
- こども基本法に規定される「こどもの意見表明権」は非常に重要な権利であり、2023年4月1日以降は、国と地方自治体は、こどもの意見をこども政策に反映することが「義務」となっている。年齢を問わずに発達段階に応じてこどもの声を聴くこと、子育て当事者の親の声を聴くことが求められる
【開催概要】
- 日時: 2023年4月6日(木)16:00-18:00
- 形式: ハイブリッド開催
(現地参加・オンライン(ZOOMウェビナー)) - 会場: 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ Global Business Hub Tokyo
- 主催: 特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI)
- 言語:日本語
- 参加費:無料
- 定員:会場 30名・オンライン 200名
【プログラム】(敬称略・順不同)
16:00-16:20 開会・趣旨説明・日本医療政策機構による緊急提言の紹介
乗竹 亮治(日本医療政策機構 理事・事務局長/CEO)
16:20-16:30 緊急提言を踏まえた 成育基本法・成育基本計画の実施と運用に向けた次の打ち手
千先 園子(国立成育医療研究センター こどもシンクタンク企画調整室 副室長)
16:35-17:20 基調講演(1) “異次元”の子ども関連施策の推進に向けて期待される視座
五十嵐 隆(国立成育医療研究センター 理事長)
17:25-17:45 基調講演(2) 「チルドレン・ファースト」社会の実現に向けて
自見 はなこ(参議院議員)
17:50-18:00 閉会の辞
黒川 清(日本医療政策機構 代表理事)
■登壇者プロフィール
五十嵐 隆(国立成育医療研究センター 理事長)
1978年東京大学医学部医学科卒業。清瀬小児病院、Harvard大学Boston小児病院での研修後、2000年より東京大学小児科教授。副院長、東京大学教育研究評議員を兼務。東京大学名誉教授。2012年より国立成育医療研究センター理事長。日本学術会議第二部会員、日本小児科学会会長、東京大学医師会会長、日本小児腎臓病学会理事長、日本腎臓学会理事を歴任。現在、子ども環境学会会長、日本小児科学会監事、東京大学医師会監事、American Pediatric Society名誉会員。
自見 はなこ(参議院議員)
長崎県佐世保市生まれ北九州育ち。1998 年筑波大学第三学群国際関係学類卒業、2004年東海大学医学部医学科卒業。小児科専門医。日本医師連盟・日本小児科医連盟参与、東海大学医学部医学科客員准教授。東京大学医学部付属病院小児科、青梅市立総合病院小児科、虎の門病院小児科等での勤務を経て、2016 年参議院議員選挙比例区(全国区)より初当選。自民党女性局長代理、厚生労働大臣政務官等を歴任し、現在参議院厚生労働委員会理事、自民党政務調査会厚生労働部会副部会長、自民党政調新型コロナウイルス対策本部「訪日外国人観光客コロナ対策PT」事務局長、自民党女性局長等を務める。
千先 園子(国立成育医療研究センター こどもシンクタンク 副室長/こころの診療部 医員)
2009年千葉大学医学部卒業。東京医療センター初期研修、国立成育医療研究センター小児科後期研修を修了し、都立小児総合医療センター児童思春期精神科に勤務。Hong Kong UniversityにてMaster of Public Health取得、National University Hospital Singapore等での疫学研究、小児発達臨床に従事。2019年成育基本法の成立を受けて、実装に関与すべく、厚労省入省。2020年〜厚生労働省子ども家庭局母子保健課 課長補佐として、成育関連施策の立案、研究、事業実施を担当。2021年環境省環境保健部リスク評価室 室長補佐としてエコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)を担当。同年8月から現職。2022年創設「成育こどもシンクタンク」に取り組み、EBPM推進のためのエビデンスに基づいた政策提言、社会実装促進を目指して活動中。
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