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【HGPI政策コラム】(No.23)-こどもの健康チームより-こどもの健康コラム3-医療的ケア児支援法が9月から施行されます

Point

・医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(通称:医療的ケア児支援法)が2021年9月18日から施行される予定

・医療的ケア児支援法が制定された背景には、医療技術の進歩に伴って医療的ケア児が増加し、適切な支援が受けられる環境整備が重要な課題となっていることが挙げられる

・医療的ケア児支援法の施行により、医療的ケア児の生活を社会全体で支えることや、居住地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられること等が基本理念に明記され、その家族に対する支援も期待される

 

2021年6月11日、参議院本会議で「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(通称:医療的ケア児支援法)が可決されました※1。本稿では、法律が制定された背景、立法の目的および今後の期待についてご紹介したいと思います。


「医療的ケア」と「医療的ケア児」の定義

医療的ケアとは、人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引等の「日常生活に必要とされる医療的な生活援助行為」のことを指し、医療資格者が行う医療行為と区別されています。この医療的ケアを受ける「医療的ケア児」とは、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である児童を指します(図1)。ここでいう児童は、18 歳未満の者及び 18 歳以上の者であって高等学校等に在籍するものと明記されています。厚生労働省 社会保障審議会障害者部会の報告によると、2020年時点で全国の医療的ケア児は約2万人と推計され、近年は特に増加傾向である事がわかっています(図2)※2、3。

図1 出典:厚生労働省 令和元年10月1日難病・小児慢性特定疾病地域共生ワーキンググループ 資料2-1医療的ケア児に関する施策について

 

図2 出典:厚生労働省 第112回令和3年6月21日  社会保障審議会障害者部会 資料7「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」について


医療的ケア児支援法成立の背景

近年、医学・医療技術の進歩に伴い、2005年に9,987人と推計された医療的ケア児は、2019年で20,155人まで増加し、超未熟児であってもNICUなどで助かる命が増えています。人工呼吸器や胃ろう等を使用した状態で在宅治療を受け、地域で暮らすこどもが増える一方で、それに伴った様々な課題解決の必要性が高まってきました。医療的ケア児が地域で安心して暮らしていくためには在宅を含む小児医療の提供や障害福祉サービスによる援助が欠かせません。しかし、これまでは医療的ケア児の受入れは医療が中心で、福祉や保健、更には保育や教育という分野では体制整備や連携が遅れている状況にありました。こうした中、2016年に障害者総合支援法の見直しとして、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律が成立し、その中で医療的ケア児が定義され、医療、福祉、保健、保育、教育等の支援機関との連絡・調整を行う体制整備が都道府県の努力義務として課せられたことで、支援充実への大きな転機になりました※4。

しかしながら、厚生労働省 令和元年度障害者総合福祉推進事業「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査」報告書[1] ※5によると、学校や保育所について「保育園に入れない」、「預け先がない」とするほか、登校するために保護者の付き添いを求められるなど日常的な負担が当事者や家族の困りごとになっていることが明らかになっていました。

このような背景から、2021年6月11日、参議院本会議にて、超党派で取りまとめられた「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が可決されることとなりました。


医療的ケア児支援法の成立により期待されること

2021年9月18日より施行されるこの法律により、医療的ケア児の日常生活および社会生活を社会全体で支えることや、居住地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられること等を基本理念に位置づけ、国や地方公共団体に支援の責務があることが明記されました。また、保育所や学校の設置者等の責務として、保育所では看護師等又は喀痰吸引等が可能な保育士の配置、学校では看護師等の配置といった必要な措置の対応を明記しています。教育を行う体制の拡充についても触れられており、医療的ケア児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするために必要な措置の対応を求めています。さらに、医療的ケア児やその家族の相談・支援体制の拡充のため、各都道府県に医療的ケア児支援センターの設置を求めています。この医療的ケア児支援センターの役割として、医療的ケア児及びその家族の相談に応じ、又は情報の提供若しくは助言その他の支援を行うことや、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関等への情報の提供及び研修を行う等が明記されています。

これまで学校への受け入れにあたっては、医療的ケアの軽重を問わず、保護者の付き添いが求められるケースや保護者の送迎が求められるケース等が報告されていましたが、この法律の制定によって家族の負担軽減につながることが期待されます。また、医療的ケア児への更なる社会的支援により、地域共生社会実現に向けた体制整備の拡充が期待されます。

 

[1] 実施主体 : 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

 

【参考文献】

※1:厚生労働省,官報 号外第138号,6, 2021.06.18.
※2:厚生労働省,医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の公布 について, 府子本第742号,3文科初第499号,医発0618第1号,子発0618第1号,障発0618第1号,2021.06.18.
※3:厚生労働省,第112回社会保障審議会障害者部会 資料7「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」について,2021.06.21.
※4:厚生労働省,平成29年度医療的ケア児等の地域支援体制構築に係る担当者化合同会議 医療的ケアが必要な障害児への支援の充実に向けて
※5:三菱UFJリサーチ&コンサルティング, 厚生労働省 令和元年度障碍者総合福祉推進事業「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査」報告書,2020.03

 

【執筆者のご紹介】
田村 元樹(たむら もとき)(特定非営利活動法人 日本医療政策機構 プログラムスペシャリスト/浜松医科大学 健康社会医学講座 博士課程在学中)


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