活動報告 調査・提言

【調査報告】「子どもを対象としたメンタルヘルス教育プログラムの構築と効果検証」報告書(2022年6月16日)

【調査報告】「子どもを対象としたメンタルヘルス教育プログラムの構築と効果検証」報告書(2022年6月16日)

日本医療政策機構 こどもの健康プロジェクトでは、「子どもを対象としたメンタルヘルスプログラムの構築と効果検証」の報告書を公表いたしました。

昨今子どもを取り巻く医療の在り方は、医療政策課題の大きなテーマとなっています。全ての妊産婦の妊娠期から子育て期、そして子どもの出生後から成人期までの成育過程において切れ目のない医療・福祉等の提供、支援が求められています。これを受けて、2019年には成育基本法が施行され、さらには2023年のこども家庭庁設立が2021年12月に閣議決定されるなど政策面でも大きな動きが期待されています。当機構においても、2020年度よりこの社会的モメンタムを促進し、我が国の子どもの健康に貢献すべく、国内外のステークホルダーとの連携による議論の喚起や、調査研究によるエビデンス創出に基づく政策提言を行うべく、子どもの健康プロジェクトを立ち上げ、活動を進めてきました。

2021年度より、子どもの健康課題の中でも、とりわけ深刻かつ、社会経済的課題とも密接なメンタルヘルスについて、当機構の成人を含めたメンタルヘルスプロジェクトで得た知見をもとに、さらに発展させるべく「子どものメンタルヘルス」に関する取り組みをスタートしました。近年、日本の子どもの自殺率や虐待といった社会心理的な背景に基づく健康への影響は深刻さを増しています。また、先進国の中で、精神的幸福度は最下位、子どもの5人に1人は精神的な問題を抱えているといわれ、メンタルヘルス対策は喫緊の課題です。しかし、義務教育において具体的な知識や対応スキルを得るための実践的な教育は十分ではなく、全国的なプログラムの構築と実施が早急に求められています。

そこで日本医療政策機構 こどもの健康プロジェクトでは、こども自身がメンタルヘルス予防対策を行うことができることを目指し、複数の専門家の意見を収集した上で、小中学生向けのメンタルヘルスプログラムを構築しました。それを基に、都内小中学生約240人を対象に教育介入を行い、介入前後の効果を測定するためにアンケート調査を行いました。また2回の産官学民マルチステークホルダーによる専門家会合を実施し、子どものメンタルヘルスを取り巻く政策課題や具体的な方策について多職種で検討を行いました。

本事業の結果から、小中学生のメンタルヘルスケア教育へのニーズや教育介入の効果、および、メンタルヘルスに関する支援ニーズが明らかになると共に、こどものメンタルヘルス政策において、予防のための学校における教育機会の提供や、ライフコースアプローチを実践していくための省庁横断の政策推進の必要性などが示されました。


■小中学生を対象としたメンタルヘルス教育介入効果における注目すべき調査結果

【小中学生のメンタルヘルス教育へのニーズ】

  • 93%の小学生と96%の中学生が今回受講したメンタルヘルス教育の内容を「実際に使えそうな場面が想定できる」と、90%の小学生、97%の中学生が「役に立ちそう」と回答
  • 97%の小学生と100%の中学生が「再度このようなメンタルヘルス授業を受けてみたい」と回答

【小中学生へのメンタルヘルス教育の効果】

  • 授業後3か月の間で、「授業を受けてから嫌な気持ちになる場面があった」と考える小中学生のうち、約40%~50%が「うまく対処できた」と回答
  • 授業後3か月の間で、「授業を受けてから困っている家族や友達を助ける場面があった」と考える小学生のうち約80%、中学生のうち約40%が「助けることができた」と回答

【小中学生のメンタルヘルスに関する支援ニーズ】

  • 「今、抱えている不安や悩み」に関しては、小中学生ともに「未来」や「コロナ」という回答が最多
  • 「相談相手」としては、小中学生ともに「友達」や「親」とする回答が最も多かったが、それらと並んで「相談しない」という回答も多く(3か月後:小学生28%、中学生41%)、人知れず悩みを抱えている様子が明らかになった


また、本プロジェクトでは、学齢期の子どもとその保護者、学校の先生方、その他、様々な形で子どもたちを支援する立場の方々向けに、ストレスとうまく付き合うための方法やその支援方法等をまとめたパンフレットを作成しました。

報告書全文とパンフレットは、下記PDFをご覧ください。

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