【調査報告】スウェーデンにおける薬剤耐性(AMR)対策(2024年11月21日)
日付:2024年11月21日
タグ: AMR
近年、抗菌薬(抗生物質)が細菌やカビなどの微生物に対して効かなくなる薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)が世界中で急速に広がっています。AMRの蔓延は「サイレント・パンデミック」や「COVID-19に続く次なる脅威」と呼ばれ対策が急がれています。
AMRを引き起こす抗菌薬は医療機関のみならず、様々な場所で使われています。例えば、家畜や愛玩動物への使用、また病院排水や人体からの排泄物を通じて環境中に抗菌薬が放出され、多様な経路でAMRは拡大していきます。そのため、AMR対策にはこれらの要因を考慮し、人・動物・環境を包括的に捉える「ワンヘルス・アプローチ」が重要となります。ワンヘルス・アプローチに基づくAMR対策には、医療機関に限らず、高齢者施設、教育機関、上下水道施設、農畜水産業施設等の分野横断的な連携が求められます。
こうしたセクター横断的なAMR対策に先進的に取り組む国の1つがスウェーデンです。また、スウェーデンは2023年前半のEU議長国として欧州議会決議の採択を主導し、同年のG7議長国である日本とともに、世界のAMR対策を先導してきました。
そこで今回、日本医療政策機構ではスウェーデンにおけるAMR対策について調査を行い、その成果をレポートとして公開いたします。本レポートでは、スウェーデンにおけるAMR対策の取り組みを概観したうえで、特に「Antibiotic Smart Sweden」という活動に焦点を当てています。Antibiotic Smart Swedenは、現在スウェーデンが注力するAMR対策の枠組みの1つであり、地域に根差した市民主体のAMR対策を実現する革新的な取り組みとして注目されています。複数の自治体や地域が参画し、下水道施設や高齢者施設でのAMRの動向把握調査、教育機関での普及啓発等を展開しています。
本レポートの知見が今後日本における地域に根差したAMR対策の展開や、セクター横断的な取り組みの促進に寄与することを期待しています。
※本レポートの英語版については後日公開予定
■11月18日~24日は世界薬剤耐性啓発週間(WAAW: World AMR Awareness Week)
世界保健機関は、11月18日から24日までを「世界薬剤耐性啓発週間(WAAW)」として定めています。2024年のテーマは「Educate. Advocate. Act now.(教育、提唱、今すぐに行動)」です。このテーマは、人、動物、植物、環境の各分野から世界中で収集された約200の意見をもとに選定されました。今年は特に、国連総会ハイレベル会合や第4回AMRに関する世界閣僚級会合が開催され、政治的・財政的なコミットメントと説明責任の強化に向けた重要な機会となります。WAAWを通じて、私たち一人一人が薬剤耐性問題について学び、理解を深め、具体的な行動を起こすことが求められています。
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