【講演報告】Tackling Dementia through Global Cross-Sector Collaboration(FT Dementia Summit 、2019年9月18日、イギリス・ロンドン)
日付:2019年10月8日
タグ: 認知症政策
2019年9月18日、日本医療政策機構代表理事の黒川清が、イギリス・ロンドンで開催されたFT Dementia Summitにおいて、「Tackling Dementia through Global Cross-Sector Collaboration」と題して講演を行いました。
本会議は、イギリスの大手メディアであるFinancial Timesが主催したもので、認知症に関して社会が直面する課題やその解決策のほか、最新の研究開発やケアに関する知見を共有することを目的として開催されました。主に企業が認知症という社会課題にどのように関わっていくか、認知症の研究開発の現状と展望、認知症ケアの在り方の3つの軸からセッションが構成され、産業界や認知症の研究開発や支援に関わるNGO、アカデミアが中心に登壇しました。
■企業が認知症にどのように関わるか
企業が認知症にどのように関わるかという観点では、認知症フレンドリーなサービス展開や認知症に関する市民社会の取り組みへの支援などが紹介されました。非ヘルスケアセクターの企業であっても、家族などを通して認知症にふれる従業員の数が増えており、認知症への関心が従業員目線においても高まっていることが例証され、保険会社や鉄道局の取り組みが紹介されました。各企業の顧客という視点でも、認知症のひとが増えており、認知症のひとへのサービスの提供が、実際にビジネスの現場において、利益を獲得していくうえで重要になってきていることも指摘され、ビジネスセクターと認知症のひとの暮らしの向上が相互補完関係になる未来について、議論が重ねられました。
■研究開発
研究開発の観点では、認知症に関する研究の現状について紹介されたほか、認知症の研究開発を支援するファンドの取り組みや、今後の研究開発において企業同士がどのように連携を深めるかなどが議論されました。特に、研究機関同士では研究情報データの共有が困難な場合であっても、産官学連携をすることで、情報共有プラットフォームが構築しやすい点などが指摘され、産官学連携の重要性が指摘されました。
■認知症ケア
認知症ケアに関するセッションでは、認知症の家族をケアする方の体験談が話されたほか、今後認知症ケアの質をどのようにして高めていくか、今後のケアの在り方がどのように変化していくかについて議論が交わされました。ケアの質の向上において、ケアする側の心理状況や満足感を高めていくことによって、ケアされる側の満足度があがることが示され、ケアする側に対する満足度向上のためのワークショップや、心理的負荷を除去するためのトレーニングを実施している英国認知症ケアーズ・カウント(Dementia Carers Count)の事例が紹介されました。さらには、ケアの質の維持や均てん化においても、官民連携の重要性が指摘され、ケア領域における善意ある民間企業の参入の重要性や、当事者参画型の研究を官民連携で実施していくことの必要性が指摘されました。
黒川は講演で、まず冒頭人類がこれまで歩んできた感染症との戦いの歴史について紹介、そして今、認知症こそが我々の社会が直面する大きな課題であると話しました。そして、これまで当機構が研究を進めてきた認知症産官学民による連携体制(PPP: Public Private Partnerships)の経緯を紹介したほか、世界認知症審議会(WDC: World Dementia Council)の発足以降、認知症に対する社会の捉え方が変化してきたことを紹介し、この機運を継続させていくことが必要だと話しました。さらに、高齢化最先進国である日本が先頭を切って、マルチステークホルダーが連携し認知症に対する投資・取り組みを積極的に行うことの重要性を訴えました。
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