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【HGPI政策コラム】(No.30)-認知症政策チームより-「国際社会の認知症政策の現在地 2022」

【HGPI政策コラム】(No.30)-認知症政策チームより-「国際社会の認知症政策の現在地 2022」

<POINTS>

  • 2022年5月25日、ADIより各国の政策評価に関するレポート「From Plan to Impact Ⅴ -WHO Global action plan: The time to act is now-」が発表された

  • 認知症政策を国家的に策定している国と地域は48に留まっている(うちWHO加盟国は39)。2025年までにWHO加盟国の75%が国家戦略の策定を完了するというWHOの目標を達成するには、今後3年間で毎年新たに35の計画策定が必要となり、目標達成は極めて困難な状況にある

  • 一方、こうした政策策定の進捗状況を毎年取りまとめたレポートは非常に価値の高いものであり、日本もこうした国際社会における情報共有に積極的に貢献する必要がある


「From Plan to Impact Ⅴ」

今回のコラムでは、2022年5月25日に国際アルツハイマー病協会(ADI: Alzheimer’s Disease International)から公表された「From Plan to Impact Ⅴ -WHO Global action plan: The time to act is now-」(以下、「ADI2022年レポート」)についてご紹介いたします。

ADIが作成する本レポートは、毎年各国・地域の認知症国家戦略の策定状況とその事例について取りまとめており、国際的な認知症政策の動向を知るには貴重な資料となっています。本コラムでは、2020年、2021年のレポートについても紹介しており、今回が3回目となります。

国際社会の認知症政策の現在地(2020年7月)
国際社会の認知症政策の現在地―2021―(2021年6月)


2025年の目標達成は極めて困難な状況に

今回の調査では、2022年5月時点の認知症国家戦略策定状況として、48の国と地域が策定済みであることが示されました。そのうち世界保健機関(WHO: World Health Organization)に加盟しているのは39ヵ国でした。(2021は、策定済みが40、うちWHO加盟国は32。2020年は、策定済みが31、うちWHO加盟国は27)


図1

WHOが2017年に公表した「Global action plan on the public health response to dementia 2017-2025」(以下、WHOアクションプラン)では「WHO加盟国の75%以上が2025年までに、認知症に関する国の政策、戦略、計画、枠組みを策定または更新し、単独または他の政策・計画と整理統合を完了する」ことを目標としています。その達成のためには2025年までの3年間で毎年35の国と地域が新たに国家戦略を策定することが必要とされ、極めて困難な状況にあると判断せざるを得ません。


図2

評価指標についても、若干のアップデートがありました。「4F:計画は承認されているが、実行されていない」という項目が新設されています。あくまで予想ではありますが、数年にわたる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、国家戦略の承認後、実行のための人員が割けない状況が発生しているのではないかと考えています。

日本の評価は、2021年も変わらず「5B:政策は承認され、財政措置また進捗評価も実施されている」となっています。レポートでは、日本においてCOVID-19が認知症の人に与えている影響についても触れられており、COVID-19に感染した認知症の人が入院可能な病床が限られていることや、訪問診療によって対応しているものの需要に追い付いていない状況が示されています。


図3

上図では、先ほど示した認知症国家戦略が策定済みの国と地域のうち、上記の評価指標で「STAGE5」とされている国と地域を太字で示しています。今回新たにオーストリア、オランダ、フィンランドの3か国が昇格しています。世界中がCOVID-19と対峙する中、政策の進展が見られたというのは大変素晴らしいことだと言えます。

そして今回のレポートでも、各国の様々な事例が記載されています。その中でも、中低所得国の深刻な状況が多数報告されています。本レポートによれば、世界の認知症の人うち約60%が低中所得国に暮らしており、そうした国々では、ワクチン接種やその他の感染症対策に、人的・経済的リソースを割かれる状況が続いているとのことです。

また現在戦火に見舞われているウクライナも見過ごすことはできません。本レポートでは、認知症国家戦略も策定段階に入っていたものの、ロシアによる軍事侵攻によってその状況は大きく変化したことが記されています。

 

まとめ

今回のコラムでは、昨年、一昨年に続き、ADIレポートの内容についてご紹介しました。このように、世界中の認知症国家戦略策定状況が毎年更新されるレポートは大変貴重なものです。この情報収集に当たっているADI及び関係者の皆様に改めて敬意を表したいと思います。

またこうしたレポート作成がより円滑に進むよう、日本からの国際社会に向けた発信も大変重要です。これまでのコラムでも指摘してきましたが、日本の認知症施策は精緻な目標設定と進捗管理を行っているものの、発信については十分とは言えません。まして日本語以外の言語での発信はほとんどなく、今後の課題です。こうした観点からは、ADIの日本支部に当たる認知症の人と家族の会が中心となって運営している「日本認知症国際交流プラットフォーム」は重要な役割を果たすことができると考えています。私も運営委員の1人ですので手前味噌ではあるのですが、認知症の人と家族の会という全国に支部を持つ市民社会組織が国際発信を担うことは、情報の客観性という観点でも意義深いことであると考えています。現在は、主にウェブサイトを構築しての日英両言語による情報発信が主な機能ですが、今後はさらに相互交流の機能や、市民社会とアカデミア、企業など、認知症に関わる様々なステークホルダーをつなぐ役割、そしてそうした活動状況を国際社会に発信するといった可能性も秘めています。

来年はいよいよG7が日本で開催されます。英国でG8認知症サミットが開催された2013年から10年という節目の年でもあります。2022年7月に日本医療政策機構も政策提言「これからの認知症政策2022」を公表し、G7の主要議題として認知症を掲げることを訴えました。日本のリーダーシップによって、この数年認知症アジェンダが停滞を見せていた国際社会が改めてその重要性を認識し、認知症政策の推進が再度活発化することを強く期待しています。またそうした機運の醸成に向けて、日本医療政策機構や認知症未来共創ハブも、市民社会サイドからの働きかけを続けていきたいと考えています。

 

【執筆者のご紹介】

  • 栗田 駿一郎(日本医療政策機構 マネージャー/認知症未来共創ハブ 運営委員)
  • 牧野 ひろこ(日本医療政策機構 アソシエイト)

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