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【開催報告】HGPIセミナー特別編 認知症月間・世界アルツハイマー月間記念「認知症共生社会の実現に向けた企業の役割とは」(2024年9月19日)

【開催報告】HGPIセミナー特別編 認知症月間・世界アルツハイマー月間記念「認知症共生社会の実現に向けた企業の役割とは」(2024年9月19日)

今回のHGPIセミナー特別編は、2024年の認知症月間・世界アルツハイマー月間を記念して開催いたしました。株式会社日本総合研究所の紀伊信之氏、株式会社文化放送の村田武之氏をお招きし、各社の認知症に関する取り組みをご紹介いただき、事例の検討から認知症共生社会の実現に向けた企業の役割の現在地を把握するとともに、今後果たすべき役割について考えました。


<POINTS>

  • 民間企業は、認知症の本人やその家族等と多様な接点を持っており、企業が認知症への理解を深め、当事者視点の対応を行うことで、認知症共生社会の構築に寄与できる。
  • 各業種によってさまざまな特徴があり、その特徴を生かしながら、認知症への対応や発信を行っていくことが重要である。
  • 一方で認知症の本人や家族等の就労継続には業種・業態によって様々な課題があるが、まずは課題を抱えていることを周囲に伝えることのできる職場環境づくりが不可欠である。


■紀伊氏ご講演概要

認知症があってもなくても、誰もが暮らしやすい社会「共生(協生)社会」の構築に取り組んでいる。経済産業省や厚生労働省の政策推進のための調査研究や事務局機能の運営のほか、地方自治体の計画策定支援、民間企業の調査研究やビジネス開発に幅広く関わっている。日本は「認知症1000万人時代」と言われ、つまり誰にとっても認知症がごく当たり前となる時代が到来している。その中でも民間企業は、(1)製品・サービスの提供者として(2)近隣者・市民として(3)本人の勤務先・働く場所の提供者として(4)認知症の人の家族の勤務先として、と整理できるように、実は認知症の人と非常に多様な接点を持っている。近年この4つの場面を中心に、様々な取り組みが行われている。今後こうした企業の取り組みはさらに増えていくことが期待され、当社としても各ステークホルダーの伴走支援に加えて、様々な実態調査等を通じた提言も行っていきたい。

 

■村田氏ご講演概要

ラジオ放送は中高年のみならず、幅広い年代に聴かれているメディアである。近年は、インターネットのアプリ経由で聴取する人も増えており、SNSと連動させて番組を作っていくなど、時代とともに変化している。特にラジオ番組やCMは、検索や購買行動につながりやすいとされ、リスナーの行動を促すメディアという特徴もある。当社では、認知症や介護に関する情報提供を行うレギュラー番組を持っているほか、自身がアルツハイマー病当事者でもある司会者の梶原しげる氏がメインパーソナリティを務める特別番組も放送した。9月は認知症月間としてのキャンペーンも行っており、関連番組や特設サイトを開設している。音声メディアとしてのラジオは、日常の身近な存在であり、番組とリスナーの音声を介したコミュニケーションによって、共感を生み出しエンゲージメントを高めることのできる特徴がある。認知症共生社会の構築に向けて、丁寧な番組作りを通じて、一人暮らしの人であっても、自分の居場所を作れるような「音声」を届けていきたい。

 

■パネルディスカッション概要

パネルディスカッションでは「認知症共生社会の実現に向けた企業の役割とは」と題して、講演では触れられなかった部分を中心に議論を深めました。
まず、認知症に関する事業を通じて社内の意識変化として、当事者の声を聞いたり実際に関わったりしたことで認知症に対する見方の変化やこの取り組みを継続していこうという空気が生まれたといった点が挙げられました。

さらに今後、社員自身が認知症になったり、認知症の家族を介護する社員がいた際の環境整備については、業種・業態、企業規模などに応じた課題があるものの、まずは認知症に限らず働く上で障壁となる課題を抱えていることを気兼ねなく周囲に伝えることのできる社内環境が必要であるとの意見が挙がりました。そして、そういった課題や意見を踏まえて、社内の物理的・心理的な環境整備、制度構築を進めていくことが必要であるといった意見が交わされました。

そして、日本社会の多くの企業が「認知症の自分ごと化」を進めていくためには、村田氏はラジオ事業の立場から、「認知症は大変だ」ではなく、現代の私たちにとって「当り前のことだよね」という空気感を、音声という限られた情報を通して、分かりやすさとコンテクストを意識した番組作りをしていきたいと語りました。そして紀伊氏からは、現在注力している当事者の意見を踏まえた製品・サービスづくりを通じて、認知症への対応がサスティナブルなビジネスにつながる環境を作ることで、認知症の人や家族の生活体験の向上に寄与していきたいとのコメントがありました。また企業それぞれが認知症に対する見方・対応を変革していくことのできるような働きかけもしていきたいとのご意見も上がりました。

今回のHGPIセミナーでは、「認知症共生社会の構築に向けた企業の役割」をテーマに、当機構のセミナーとしては珍しく、民間企業2社の方にご登壇いただきました。両者は、各社が持つサービスを通じて、社会に発信・働きかけを行っているという共通した特徴があり、個社の取組だけではなく、社会の様々なステークホルダーを巻き込んでいくことも企業の持つ役割であると改めて感じることができました。視聴者からも多くの質問が挙がり、活発なセミナーとなりました。

 


【開催概要】

  • 登壇者(順不同・敬称略)
    紀伊 信之(株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 部長/プリンシパル)
    村田 武之(株式会社文化放送 事業局事業部 部長)
  • 日時:2024年9月19日(木)15:00-17:00
  • 形式:オンライン(Zoom ウェビナー)(アーカイブ配信なし)
    ※当日の投影資料および公開可能なアーカイブ映像については、後日個人賛助会員の皆様限定で配信いたします。
  • 言語:日本語
  • 参加費:無料
  • 定員:500名

 

【プログラム】

15:00-15:05 開会・趣旨説明
栗田 駿一郎(日本医療政策機構 シニアマネージャー)
15:05-15:30 事例1:株式会社日本総合研究所様
紀伊 信之氏(株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 部長/プリンシパル)
15:30-15:40 紀伊氏への質疑応答
15:40-16:05 事例2:株式会社文化放送様
村田 武之氏(株式会社文化放送 事業局事業部 部長)
16:05-16:15 村田氏への質疑応答
16:15-16:50 パネルディスカッション「認知症共生社会の実現に向けた企業の役割とは」
紀伊 信之氏(株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 部長/プリンシパル)
村田 武之氏(株式会社文化放送 事業局事業部 部長)

モデレーター:栗田 駿一郎(日本医療政策機構 シニアマネージャー)

 


◼︎登壇者プロフィール

Nobuyuki kii紀伊 信之 氏(株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 部長/プリンシパル)
1999年 京都大学経済学部卒業後、株式会社日本総合研究所入社。在職中、神戸大学にてMBA取得。2018年4月より現職。B2C分野のマーケティング、新規事業開発等のコンサルティングを経て、「産官学、現場と政策のハブとなり、Well-Beingがあふれる超高齢社会の実現に貢献する」をコンセプトに高齢者・介護分野の官民の調査・コンサルティングに従事。経産省のオレンジイノベーション・プロジェクトを始めとして、国・自治体・企業の認知症関連の各種プロジェクトを推進している。

Takeyuki Murata村田 武之 氏(株式会社文化放送 事業局事業部 部長)
1998年文化放送に入社。営業部での広告営業を経て制作部に異動し、情報番組、バラエティ番組等を中心に番組制作業務に従事。特別番組制作で日本民間放送連盟賞や日本放送文化大賞等を受賞。編成部に異動し、編成企画、戦略立案、キャンペーン、イベント、新規事業、CSR、アライアンスなど多岐に渡る業務に関わる。現在は、ビジネス系番組でプロデューサーを務める他、様々なキャンペーンや事業企画などの立案・実施等に関わる。

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