【開催報告】HGPIサロン2025:日本の社会保障の未来を見据えて 第1回「医療・介護サービスの効率化とICT活用による生産性向上」(2025年2月14日)

日本医療政策機構(HGPI)は、非営利・独立・超党派の民間シンクタンクとして、医療・社会保障の課題に取り組んできました。当機構は多様なステークホルダーの集合知を活かして、社会に新たな選択肢を提示することで市民主体の医療政策の実現を目指しています。
現在、日本の社会保障制度は急速な高齢化と生産年齢人口の減少という構造的な課題に直面しています。後期高齢者の増加に伴う医療介護サービスの需要拡大により、社会保障給付費は2040年までに190兆円に達すると予測され、これに生産年齢人口の減少による労働力不足が重なり、現役世代の負担増大と制度の持続可能性の危機をもたらしています。一方で、政府や民間の有識者の中では、これらの課題を克服するための前向きな取り組みが進展しています。医療・介護分野では技術革新が加速しており、新たなサービスやシステムイノベーションが生まれつつあります。また、共生社会の実現を目指した政策や活動が全国各地で展開されるなど、希望ある動きが広がっています。こうした取り組みは、日本の医療介護産業を成長産業としてさらなる発展に導くとともに、地域社会の活性化にも寄与する可能性を秘めています。
過去には社会保障制度改革国民会議が2012年に設置され、長期的な視点で社会保障制度の持続可能性や成長の方向性を議論しました。この議論は、「自助・共助・公助」の最適なバランスを探りつつ、社会保障制度の充実と効率化を追求する中で、日本の社会保障政策の土台を築きました。現在は、その流れを受け継ぎ、全世代型社会保障構築会議が開催され、さらに前進する議論が行われています。さらに、厚生労働省は2024年に「近未来健康活躍社会戦略」を公表し、持続可能な社会保障制度の構築に向けた具体的なビジョンを示しています。この戦略では、「医療・介護産業の成長促進」「国民への還元を目指したイノベーション活用」「健康活躍社会の実現」を主要目標として掲げています。
このような変化の兆しを背景に、当機構では「HGPIサロン2025」のテーマを「日本の社会保障の未来を見据えて」として、未来に向けた議論の場を、2025年を通じて提供いたします。本サロンは、チャタムハウスルールの下、参加者同士が自由かつ率直に対話を行い、政策形成のための洞察やアイデアを生み出すプラットフォームとして機能します。ICTの活用による医療・介護の効率化や予防医療の強化、女性や高齢者の活躍促進など、具体的な課題に焦点を当て、理事や参加者とともに建設的な議論を進めてまいります。
HGPIサロンは、医療・社会保障における課題を共有しながら、未来を見据えた解決策を共に探求する場です。本企画は、運営費を賄うための会場費や運営費に限定して使用されておりますが、個人賛助会員の皆様には無料でご参加いただけます。ぜひこの機会にご参加いただき、私たちとともに日本の社会保障の明るい未来を描いていただければ幸いです。
第1回目となる今回は、当機構理事の武藤真祐と同シニアアソシエイトの渡部大地が参加者の皆様とともに議論を実施いたしました。中では、高齢化と過疎化に直面する日本の医療制度の危機的状況が議論され、病院の赤字経営、地方での医師不足、診療所の閉鎖など具体的な課題に対し、医療機関の経営改革、タスクシフト、テクノロジーの活用、患者負担の見直しといった多角的な解決策が提案される一方、制度改革に必要な国民的議論と合意形成の難しさ、医療従事者の意識改革、そして「誰でも・いつでも・どこでも」というフリーアクセスの持続可能性についてなど幅広い意見が交わされました。
【プログラム】
18:30-18:35 | オープニング | ||
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18:35-19:30 | 対談セッション | ||
ゲスト:武藤 真祐(日本医療政策機構 理事) 対談内容: |
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19:30-19:55 | 質疑応答 | ||
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19:55-20:00 | クロージング |
【開催概要】
- 第1回登壇者
オープニング:黒川 清(日本医療政策機構 理事・終身名誉チェアマン)
ゲスト:武藤 真祐(日本医療政策機構 理事)
モデレーター:渡部 大地(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
- 日時:2025年2月14日(金)18:30-20:00(受付開始:18:15)
- 形式:対面のみ
- 会場:Global Business Hub Tokyo(〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2大手町フィナンシャルシティ グランキューブ3階 GBHT)
- ルール:チャタムハウスルール
- 言語:日本語のみ
- 参加費:
- 個人賛助会員:無料 >> 個人賛助会員のお申込みはこちら
- 一般:事前クレジットカード決済 4,000円 当日キャッシュレス決済 4,400円
- 学生(学部生のみ):事前クレジットカード決済 3,000円 当日キャッシュレス決済 3,300円(要学生証)
- 定員:60名(個人賛助会員優先)
※応募者多数の場合抽選
■登壇者プロフィール
武藤 真祐(日本医療政策機構 理事)
東京大学医学部卒業(MD)。 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。東大病院、三井記念病院にて循環器内科に従事後、宮内庁で侍医を務める。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年医療法人社団鉄祐会を設立。2015年シンガポールでTetsuyu Healthcare Holdings Pte, Ltd. を設立。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床教授。日本医療政策機構理事。公益社団法人 経済同友会規制改革委員会委員長。公益財団法人国際文化会館理事。2019年度第29回武見奨励賞受賞。
黒川 清(日本医療政策機構 理事・終身名誉チェアマン)
東京大学医学部卒。1969-84年在米、UCLA医学部内科教授、東京大学医学部内科教授、東海大学医学部長、日本学術会議会長(2003-06年)、内閣府総合科学技術会議議員(03-06年)、内閣特別顧問(06-08年)、WHOコミッショナー(05-09年)などを歴任。国会による東京電力福島原発事故調査委員会委員長(11-12年)、 グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)代表理事・会長(13-18年)、内閣官房健康・医療戦略室健康・医療戦略参与(13-19年)など。現在、世界認知症審議会(WDC: World Dementia Council)委員・副議長、新型コロナウイルス対策の効果を検証する国のAIアドバイザリー・ボードの委員長、政策研究大学院大学・東京大学名誉教授。東海大学特別栄誉教授。
渡部 大地(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
神戸大学卒業後、理学療法士として地域の高齢者を対象とした臨床業務に従事。その後、同大学大学院にて保健学修士号を取得し、リハビリテーション医療をマクロな視点から捉えることに関心を深め、公益社団法人日本理学療法士協会事務局に入職。災害リハビリテーションの推進やチーム医療の強化に向けた活動支援を担当。また、理学療法士の国際展開を見据え、国内外の関連機関と連携し、新たな国際事業を立ち上げる。
在職中には厚生労働省保険局に出向し、被用者保険者における健康づくりを促進するデータヘルス計画やコラボヘルスの推進に取り組む。
これらの経験を活かし、2024年9月より日本医療政策機構に参画。患者・当事者支援、薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)、非感染性疾患(NCDs: Non-Communicable Diseases)に関連するプロジェクトに従事し、政策提言や社会実装に向けた取り組みを推進している。
■今後の開催予定
第2回 2025年6月27日「健康寿命の延伸と予防医療の強化」津川 友介(日本医療政策機構 理事)
第3回 2025年10月7日「社会保障制度の見直しと世代間の公平性確保」小野崎 耕平(日本医療政策機構 理事)
第4回 2025年11月11日「多様な就労・社会参加の促進と共生社会の実現」堀田 聰子(日本医療政策機構 理事)
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