【政策提言】「がんゲノム医療」への患者アクセスの改善に向けて(2023年8月10日)

日本医療政策機構は、政策提言「『がんゲノム医療』への患者アクセスの改善に向けて」を公表しました。
エグゼクティブサマリー
- 「がんゲノム医療」は、導入当初は高度な医療として位置づけられてきたが、2019年に遺伝子パネル検査が保険収載されて以降、臨床現場での経験も蓄積されつつある。こうしたことから、現在は、がんゲノム医療への患者アクセスを一層改善し、さらに幅広く国民に届けていく段階に入っていると考えられる。
- がんゲノム医療を拡充していく上での政策課題は多岐に亘るが、これを「患者のアクセス機会」という観点から整理してみると、
A:医療人材面での制約(専門人材等のマンパワーの不足)
B:遺伝子検査面での制約(遺伝子パネル検査の実施時期・回数の制約)
C:地理的または情報面での制約(検査施設や治験への患者アクセスの難しさ)
の三つの分野に大別することができる。
- こうした問題意識に基づき、日本医療政策機構では、「がんゲノム医療の患者アクセスの改善」に向けて、以下の通り提言する。
【提言Ⅰ】業務の合理化と人員の確保(図1)
がんゲノム医療の一層の普及を展望し、(1)思い切った業務の合理化を進めるとともに、(2)業務量に見合った人員が確保出来る体制にすること
図1
【提言II】遺伝子検査の実施方法等の見直し (図2)
症例の蓄積を踏まえ、診療報酬上認められている遺伝子検査の実施方法等を臨床現場のニーズ並びにがん種の特性にあったかたちに見直すこと
図2
【提言III】検査拠点・治験への患者アクセス改善(図3)
がんゲノム医療にかかる地理的制約・情報格差に留意し、検査拠点・治験への患者アクセスを抜本的に改善すること
図3
当機構では、2021年度に「産官学民で考えるがん個別化医療の未来」プロジェクトを立ち上げ、有識者へのヒアリングや調査を幅広く実施してきている。その成果を踏まえ、2022年9月には、「がん個別化医療」に関する包括的な政策提言を行ったが、その後、同プロジェクトの第2期として、がんゲノム医療に焦点を当てながら、「がんゲノム医療への患者のアクセス改善に向けた方策」について、追加的な調査・ヒアリングを幅広く行ってきた。
本提言は、そうした内容を踏まえてまとめたものである。今後のがん対策において、本提言が活かされ、患者本位の医療がさらに発展していくことを強く期待している。
詳細は末尾のPDFファイルをご覧ください。
協賛(五十音順)
MSD株式会社
中外製薬株式会社
バイエル薬品株式会社
ヤンセンファーマ株式会社
調査・提言ランキング
- 【調査報告】認知症条例比較研究会最終報告書「共生社会の実現に向けた認知症条例へ」(2024年12月27日)
- 【政策提言】環境と医療の融合で実現する持続可能な健康長寿社会~プラネタリーヘルスの視点を取り入れた第3期健康・医療戦略への提言~(2024年12月20日)
- 【政策提言】腎疾患対策推進プロジェクト2024「労働世代における慢性腎臓病(CKD)対策の強化にむけて」~健診スクリーニング、医療機関受診による早期発見、早期介入の重要性~(2024年10月28日)
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【政策提言】がん対策プロジェクト「乳がん医療の地域格差是正に関する提言書」(2025年1月31日)
- 【出版報告】こどもの健康プロジェクト 家庭向け小冊子「家庭で学ぶ・家庭で実践する、知的障がいのある子どものためのストレスマネジメント」(2025年2月3日)
- 【政策提言】保健医療分野における気候変動国家戦略(2024年6月26日)
- 【調査報告】「2023年 日本の医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」(2024年1月11日)
- 【政策提言】持続可能な社会のための気候と健康の融合:国が決定する貢献(NDC)にプラネタリーヘルスの視点を(2024年12月9日)