【政策提言】「がん個別化医療」の特質を踏まえた医療体制等の整備に向けて(2022年9月20日)

日本医療政策機構は、政策提言「『がん個別化医療』の特質を踏まえた医療体制等の整備に向けて」を公表しました。
エグゼクティブサマリー
- 遺伝子変異などのがんの特徴に合わせて、一人ひとりに適した治療を行う「がん個別化医療」は、今後重要な役割を担っていくことが期待されている。
- 「がん個別化医療」を一層発展させていくためには、医療アクセス、人材育成、研究開発、薬事承認・保険適用、患者支援等、様々な分野における政策課題を克服していくことが必要である。
- それら課題は、がん治療が共通に抱えているものも少なくないが、「がん個別化医療」は、以下の三つの特質を有しており、そのために、こうした政策課題への対応が一層困難になっている側面がある。
- 現時点では、適応症例が限られる
- 遺伝子情報を扱う
- 検査や治療の費用が高額になりがち
- こうした問題意識に基づき、日本医療政策機構では、「がん個別化医療」の特質を踏まえた医療体制等の整備に向けて、以下の通り提言する。
提言Ⅰ:医療提供体制、人材、研究・治験、患者支援策等、あらゆる分野において、「ハブ&スポークス型」のネットワークを整備し、人的資源や知見を集約しやすくすること。その際、オンライン技術の利活用を含む積極的なICT化によって、情報や医療資源の集積を効率化すること。
提言Ⅱ:遺伝子情報のデータ整備を図るとともに、遺伝子情報によって不合理な差別等がされないよう、遺伝子情報差別を禁止する法整備や国民啓発を行うこと。
提言Ⅲ:薬事承認・保険適用の条件等を、がん個別化医療の特質や臨床現場のニーズにあった科学的・合理的なものに見直していくこと。
当機構では2021年度「産官学民で考えるがん個別化医療の未来」プロジェクトを立ち上げ、様々な有識者とも議論を重ねてきました。本提言書は、そうした議論を踏まえてまとめたものです。今後のがん対策において、本提言が活かされ、患者本位の医療がさらに発展していくことを強く期待しています。
アドバイザリーボードメンバー(敬称略・五十音順)
- 秋月 玲子(ヤンセンファーマ株式会社 メディカルアフェアーズ本部オンコロジー部 部長)
- 飯島 康輔(中外製薬株式会社 ファウンデーションメディシン事業部長)
- 五十嵐 中(横浜市立大学医学部医学科 健康社会医学ユニット 准教授)
- 今井 光穂(慶應義塾大学医学部 腫瘍センター 特任助教)
- 岩田 広治(愛知県がんセンター乳腺科部長/副院長)
- 江夏 総太郎(日本イーライリリー株式会社 研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部 オンコロジー領域本部長)
- 大津 敦(国立がん研究センター 東病院 病院長)
- 黒田 知宏(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授)
- 小杉 眞司(京都大学医学研究科 医療倫理学・遺伝医療学 教授)
- 桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長)
- 坂下 千瑞子(東京医科歯科大学医学部 血液内科 特任助教)
- 角南 久仁子(国立がん研究センター 中央病院 病理・臨床検査科 遺伝子診療部門医員)
- 添田 純平(武田薬品工業株式会社 日本オンコロジー事業部 メディカルアフェアーズ部 部長)
- 津川 友介(カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部(内科) 公衆衛生大学院(医療政策学) 准教授)
- 成川 衛(北里大学 薬学部 臨床医学(医薬開発学)教授)
- 長谷川 一男(NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ 代表)
- 眞島 喜幸(NPO法人 パンキャンジャパン 理事長)
- 光冨 徹哉(近畿大学 医学部 医学科 教授)
- 武藤 香織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授)
- 吉野 孝之(国立がん研究センター東病院 消化菅内科長)
協賛(五十音順)
- 武田薬品工業株式会社
- 中外製薬株式会社
- 日本イーライリリー株式会社
- ヤンセンファーマ株式会社
■関連する項目
【開催報告】「産官学民で考えるがん個別化医療の未来」プロジェクト 第1回アドバイザリーボード会合(2021年12月14日)
【開催報告】「産官学民で考えるがん個別化医療の未来」プロジェクト 第2回アドバイザリーボード会合(2022年2月22日)
調査・提言ランキング
- 【当事者の声】薬剤耐性 伊東幸子氏 非結核性抗酸菌症(2022年3月18日)
- 【お知らせ】「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)グローバルヘルスおよびヘルスコミュニティからの化石燃料に関する公開書簡」に署名(2023年11月1日)
- 【政策提言】「患者・市民・地域が参画し、協働する肥満症対策に向けた6つの提言」(2023年11月1日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【調査報告】「社会経済的要因と女性の健康に関する調査提言」(2023年3月6日)
- 【論文発表】「プラネタリーヘルスフレームワークの観点から日本の保健医療システムの持続可能性を再考する」が国際学術誌 Health Systems & Reformに掲載(2023年11月21日)
- 【調査報告】「子どもを対象としたメンタルヘルス教育プログラムの構築と効果検証」報告書(2022年6月16日)
- 【政策提言】「集学的な痛み診療・支援体制の均てん化に向けて」(2023年3月31日)
- 【緊急提言】少子化時代における我が国の産科医療体制のあり方について(2023年9月15日)
注目の投稿
-
2023-10-31
【申込受付中】オンライン公開シンポジウム「認知症共生社会における「認知症予防」を考える~リスクの個人化に社会はどう向き合うべきか~」(2023年12月12日)
-
2023-11-01
【政策提言】「患者・市民・地域が参画し、協働する肥満症対策に向けた6つの提言」(2023年11月1日)
-
2023-11-02
【開催報告】医療情報の信頼プロジェクト 第1回グローバル賢人会議「情報共創時代の健康・医療情報のあり方」(2023年7月21日)
-
2023-11-06
【開催報告】産官学民で考えるがん個別化医療の未来プロジェクト 招待制政策対話イベント「がんゲノム医療の患者アクセス改善に向けた課題と展望」(2023年10月11日)
-
2023-11-10
【開催報告】プラネタリーヘルス専門家会合「健康な地球・健康な人々:アジア太平洋地域における気候変動と健康をきっかけとした新たな協力体制の構築に向けて」(2023年11月2日)