【政策提言】腎疾患対策推進プロジェクト2024「労働世代における慢性腎臓病(CKD)対策の強化にむけて」~健診スクリーニング、医療機関受診による早期発見、早期介入の重要性~(2024年10月28日)

日本医療政策機構(HGPI)では2022年度より腎疾患対策推進プロジェクトを始動し、慢性腎臓病(CKD)の予防や早期介入の必要性、多職種や多機関連携の重要性、自治体の好事例の横展開の必要性、患者・当事者視点に基づいた腎疾患対策の推進の必要性などを提言してきました。
CKDは労働世代においても無縁ではない疾患です。労働世代の中にも CKDのある人、ハイリスクな人、人工透析を受ける人は決して少なくないことから、現状の腎疾患対策の課題を正確に理解した上で、労働世代に求められる現実的なCKD対策やその範囲を検討していく必要があると認識しています。
この度当機構では、労働世代におけるCKD対策の強化に向けて、産官学民の有識者の皆様へのヒアリングとこれまでの議論を今回調査し、提言として取りまとめました。
提言1:労働者の健診でのCKDスクリーニングを強化するべき
- 労働者における蛋白尿によるスクリーニングを強化しCKD患者とそのリスク群を早期発見するとともに、糖尿病・高血圧等の基礎疾患のある人への血清クレアチニンの測定に基づく腎機能評価を徹底すべきである。
- 蛋白尿や血清クレアチニンの異常値は個人差があるという特性を考慮しながら、誰がスクリーニングをしても、その個人にとって適切なタイミングで医療へ接続できるような基準を設定するとともに、血清クレアチニンの測定対象の拡大も視野に入れた更なる検討を進めるべきである。
- 健診結果の適切な活用方法を検討し、治療が必要な人が円滑に医療へ接続され、継続的な管理を受けられるように体制を構築していくべきである。
提言2:スクリーニングからCKDリスク群への医療受診勧奨、保健指導を強化すべき
- 労働者における経年的な健診データを活用して、事業者、保険者、かかりつけ医が連携して、効果的に医療受診勧奨、保健指導を実施すべきである。
- 労働者の医療受診から治療開始までの確率を上げるため、企業が近隣のクリニックから提携先を選定し、精密検査を行う医師と産業医や企業による円滑な連携体制の構築や、受診した者が確実に治療にたどり着くよう医療者への教育やフォローアップ体制の構築を行うべきである。
- 労働者におけるCKDの実態把握や早期スクリーニングの意義等について、腎疾患の専門医、疫学や公衆衛生学の専門家と密に連携を取りながら、より強固なエビデンスを確立すべきである。
また、本提言書の後半には、このテーマに関するこれまでの政策議論に対する当機構の理解と、今後の政策推進に向けた展望を示しています。詳細は末尾のPDFファイルをご覧ください。
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