【講演報告】未来のグリーン医療:医療の持続可能性とネットゼロ転換に関する国際フォーラム(資策會、2025年11月25日、台湾・台北市)
日付:2025年12月22日
タグ: プラネタリーヘルス
2025年11月25日、台湾・台北市の張榮發国際会議センターにて、「未来のグリーン医療:医療の持続可能性とネットゼロ転換に関する国際フォーラム(The Future of Green Healthcare: International Forum on Healthcare Sustainability and Net-Zero Transformation)」が開催され、日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)副事務局長の菅原丈二が登壇しました。
本フォーラムは、気候変動が健康および医療システムに及ぼす影響が深刻化する中、医療分野における持続可能性とネットゼロへの移行を、政策と実践の両面から国際的に議論することを目的として開催されました。台湾・衛生福利部(MOHW: Ministry of Health and Welfare)の助言のもと、資策會(Institute for Information Industry, III)が主催し、同部附属の医療・社会福祉機構管理会が共同主催しました。
午前に実施された国際フォーラム(約250名参加)には、医療のサステナビリティと脱炭素化を牽引する国際的な専門家が登壇しました。主な登壇者には、以下が含まれます。
Nick Thorp(グローバル・グリーン・アンド・ヘルシー・ホスピタルズ・ネットワーク ディレクター)
Sonia Roschnik(ジュネーブ・サステナビリティ・センター エグゼクティブ・ディレクター)
菅原 丈二(日本医療政策機構 副事務局長)
Donald Wai(クー・テック・プアット病院/イーシュン・コミュニティ病院 グリーン委員会 委員長〈シンガポール〉)

菅原は、「日本の医療分野におけるネットゼロへの取り組みの全体像:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の下で、課題を乗り越え、共通理解を醸成し、マルチステークホルダーによる政策改革を前進させる(Overview of Japan’s Healthcare Sector Net-Zero Initiatives: Breaking Barriers, Building Understanding, and Advancing Multi-Stakeholder Policy Reforms under Universal Health Coverage)」と題したセッションにおいて、日本の医療分野におけるネットゼロに向けた取り組みを包括的に紹介しました。また、講演では、日本政府の気候変動対策および医療政策の動向、医療機関における脱炭素化の実践例、制度的・構造的課題を整理するとともに、それらを克服するための政策的アプローチについて言及しました。特に、日本の保健医療制度を巡るこれまでの社会・経済環境からの変化やそもそもの気候変動に対する考え方、その潜在的なインパクトや日本と台湾の地理的、人工的、そして制度的な親和性などについて考えを共有しました。また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)の枠組みの下で、行政、医療機関、民間企業、市民社会など多様な主体が共通理解を形成し、マルチステークホルダーによる政策改革を進める重要性を強調しました。

続くパネルディスカッション「未来を形づくる:ネットゼロ医療をめぐる課題、知見、そして今後の道筋(Shaping the Future: Challenges, Insights, and the Road Ahead for Net-Zero Healthcare)」では、各登壇者がそれぞれの国・組織における経験を共有し、医療分野における国際的なネットゼロ政策の潮流、政策と現場実装の間に存在する課題、国際協力の可能性について活発な意見交換が行われました。

さらに午後には、台湾の保健当局および主要医療機関の関係者を招いた招待制のハイレベル政策ラウンドテーブルが開催され、今後の国家レベルでのネットゼロ医療政策の方向性について、国際的な知見を踏まえた議論が行われました。
当機構は、プラネタリーヘルスの視点から、医療分野における気候変動対策と持続可能性の統合を重要な政策課題として位置づけています。本フォーラムへの参加は、日本の経験と課題を国際社会と共有するとともに、アジア太平洋地域における医療のネットゼロ転換に関する議論を深化させる機会となりました。
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