【開催報告】グローバル専門家会合~ライフコースに基づいた予防接種政策に向けた今後の打ち手を考える~(2020年12月18日)
日付:2021年4月6日
タグ: 予防接種・ワクチン
日本医療政策機構はグローバル専門家会合「『予防接種・ワクチン政策推進』プロジェクト~ライフコースに基づいた予防接種政策に向けた今後の打ち手を考える~」を開催いたしました。
*****最終報告書を作成し、発表しました。(2021年4月6日)
詳しくは、当ページ下部のPDFファイルをご覧ください。
■概要:
世界保健機関(WHO: World Health Organization)は、健康、社会、経済、教育への影響を考慮した際に、ワクチン接種が最も費用対効果の高い公衆衛生学的な介入であると述べている。一方で、世界的にはワクチン接種をしないもしくはできないことにより「ワクチンで予防可能な疾患(VPD: Vaccine Preventable Disease)」に毎年150万人が罹患している。日本では、ワクチン接種に関連する健康被害に対して社会が過敏に反応し、メディア報道や訴訟などにより予防接種政策を再考しなければならない事例が生じている。また、子どもを持つ親が親自身や子どもへのワクチン接種を躊躇したり拒否したりするワクチン忌避(Vaccine Hesitancy)と呼ばれる現象も見られている。そのため、定期予防接種をスケジュール通りに国民に提供できない事態が生じている。また、制度の変更などの影響もありVPDが日本でもいまだに報告されている。
近年の国際機関や諸外国における予防接種政策では、科学技術の進歩や生活様式の多様化を踏まえた上で、小児期のみならず青年期、中年期、高齢期を含む生涯を通じたライフコースに基づいた予防接種の重要性が益々高まっている。また、ワクチン忌避の動きに対応するために、その有効性、安全性そして接種の必要性について科学的なエビデンスをわかりやすく発信するとともに未接種世代に対してキャッチアップのための制度を導入するなど、様々な取り組みを実施している。日本では予防接種の制度設計、行政の認識、また医療提供者の認識といった要因において、ライフコースアプローチの取り組みが必ずしも十分とはいえない現状がある。
2020年11月上旬の時点において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19: Coronavirus Disease 2019)は、約120万人の命を奪うとともに、世界的な経済および社会の混乱を引き起こしている。その終息に向けて、有効な治療方法の確立とともに有効で安全なワクチンに対する期待が世界的に高まっている。日本においても、感染症に対する危機感の高まりとともに、季節性インフルエンザの予防接種に対して高齢者や基礎疾患を有している人などにおいても需要が高まっている。
以上のように、予防接種・ワクチン政策に関して社会の関心が高まる中で、国民一人一人が予防接種で享受する個人と社会に対する価値について理解を深め、ライフコースを通じて予防接種の実現と全世代に渡って予防接種のもたらす価値を認識することが重要である。日本において、ライフコースに基づく予防接種や未接種世代に対するキャッチアップに対する政策の実現が期待される。
本グローバル専門家では、当機構が設置している産官学民の専門家からなるアドバイザリーボードとともに、外部の有識者を交えて議論を行った。本議論を通して、今後のワクチン政策の議論や国民の議論の促進に寄与することを期待している。
■ラウンドテーブル・ディスカッションで示された論点:
- 論点 1:
- 被接種者とのコミュニケーション
- 論点 2:
- 医療従事者への教育
- 論点 3:
- 予防接種へのアクセス(医療機関にかかる機会がない方へのワクチン接種機会の拡充、予防接種の公的補助)
- 論点 4:
- ワクチンの科学的な評価
- 論点 5:
- 日本のワクチン施策のあり方(成人向けワクチン接種体制の整備と政策サイクルへのアカデミアの参画)
- 論点 6:
- 日本のワクチン研究開発体制の改善
- 論点 7:
- 新型コロナウイルスでの対応
■プログラム:
開会の辞
特別講演「予防接種・ワクチン政策の再考 ~COVID-19流行を経験して~」
- 武見 敬三(参議院議員/ WHO UHC親善大使/ スペシャルアドバイザー)
基調講演「グローバルなワクチンを取り巻く環境の変化とこれからの計画」
- Huong Thi Giang Tran(WHO 西太平洋地域事務局 疾病対策局 ディレクター)
基調講演「ライフコースアプローチの重要性と世界の動向」
- Lois Privor-Dumm (ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院 世界ワクチン・アクセス・センター 大人のワクチン ディレクター)
ラウンドテーブル・ディスカッション
パネリスト:
- 阿真 京子(一般社団法人 知ろう小児医療守ろう子ども達の会 前代表)
- 荒井 秀典(国立長寿医療研究センター 理事長/ 日本老年医学会 副理事長)
- 岩田 敏(国立がん研究センター 中央病院 感染症部/予防接種推進専門協議会 委員長)
- 氏家 無限(国際感染症センター トラベルクリニック医長/ 予防接種支援センター長)
- 大石 和徳(富山県衛生研究所 所長)
- 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所 所長)
- 落合 利穏(サノフィ株式会社渉外本部・ワクチン担当 ヘッド)
- 齋藤 昭彦(新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野 教授)
- 菅谷 明則(すがやこどもクリニック/ 特定非営利活動法人 VPDを知って、子どもを守ろうの会 理事長)
- 高島 義裕(WHO西太平洋事務局 疾病対策局 VPD部門 コーディネーター)
- 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター 第三室(予防接種室) 室長)
- 中山 久仁子(医療法人メファ仁愛会 マイファミリークリニック蒲郡)
- 廣瀬 佳恵(ヤンセンファーマ株式会社 インテグレイテッド・マーケットアクセス本部 ポリシーインテリジェンス部 マネージャー)
- 松本 愼次(欧州製薬団体連合会(EFPIA)日本支部 ワクチン部会 部会長)
- 宮入 烈(国立成育医療研究センター 生体防御系 内科部 感染症科 診療部長)
- 守屋 章成(名古屋検疫所 中部空港検疫所支所 検疫衛生課 空港検疫医療管理官)
モデレーター:
- 菅原 丈二(特定非営利活動法人 日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
閉会の辞
- 古屋 範子(衆議院議員/ 国民の健康増進を推進する議員の会(ワクチン予防議員連盟) 会長代行/ スペシャルアドバイザー)
■関連した項目(開催日順)
– 2020年11月10日(木)【開催報告】予防接種・ワクチン政策推進プロジェクト「国際潮流と日本の予防接種政策~求められる次の打ち手~」第3回アドバイザリーボード会合
– 2020年09月17日(木)【開催報告】予防接種・ワクチン政策推進プロジェクト「国際潮流と日本の予防接種政策~求められる次の打ち手~」第2回アドバイザリーボード会合
– 2020年09月07日(月)【提言】「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの国際的な供給体制に関する提言」
– 2020年08月07日(金)【開催報告】予防接種・ワクチン政策推進プロジェクト「国際潮流と日本の予防接種政策~求められる次の打ち手~」第1回アドバイザリーボード会合
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