【開催報告】HGPIセミナー特別編「カビが引き起こす感染症と薬剤耐性対策を考える―薬剤耐性真菌という新たな脅威―」(2024年8月23日)

今回のHGPIセミナー特別編では、帝京大学医真菌研究センター 副センター長・教授の槇村浩一氏、国立感染症研究所真菌部 部長でありハンセン病研究センター長の宮崎義継氏、高知大学医学部臨床感染症学講座の教授である山岸由佳氏をお迎えし、薬剤耐性真菌に関する最新の知見と課題について議論を行いました。
<POINTS>
- 薬剤耐性真菌の中で、特にカンジダ・アウリスは世界的に大きな脅威となっており、世界保健機関や米国疾病予防管理センターも重要な病原体として位置付けている。日本国内でも、カンジダ・アウリスの海外からの持ち込みや国内での耐性化に備えた対策が必要である。
- 真菌感染症の診断・治療には専門的な知識と経験が必要であり、人材育成が急務である。医療従事者を対象とした真菌感染症の教育プログラムの整備や、抗真菌薬適正使用支援チームの活動強化が求められる。
- 医療従事者のみならず市民のなかでも真菌感染症対策の必要性が十分に理解される必要がある。初等教育以降の微生物教育や微生物研究に対する研究費の配分の見直しなどを進め、感染症対策・微生物研究を国のインフラとして再構築する長期的な取り組みが重要である。
講演1「世界的脅威となっている薬剤耐性真菌 ―カンジダ・アウリスの事例―」
槇村 浩一(帝京大学 医真菌研究センター 副センター長・教授)
■生物学的な特性も影響して真菌は治療薬の開発が困難であり、近年は真菌感染症による死亡者数が増加している
真菌は生物として独特の特徴を持っている。真菌はカビ、酵母、キノコを含む広い範囲の生物群を指す。生物の系統関係から見ると、真菌は細菌やウイルスよりも哺乳類等の動物と近縁の関係にあり、ヒトと細胞の構造が類似している。そのため、ヒトと真菌を区別し、真菌のみを特定できる特異的な診断マーカーを見つけることが難しく、抗真菌薬や検査機器、試薬の開発を一層困難にしている。
真菌の中には、免疫の低下に伴い人間の身体に害を及ぼす真菌症と呼ばれる疾患群を引き起こす種類も存在しており、こうした真菌は病原真菌と呼ばれている。病原真菌による真菌症はその感染症の発症部位から、水虫のような皮膚疾患として発症する表在性真菌症と、ムーコル症やカンジダ症など臓器にまで及ぶ症状を引き起こす深在性真菌症に大別され、特に深在性真菌症は命に係わる重篤な病状に発展する恐れが高いと言われる。なかでも、臓器移植や、がん化学療法、自己免疫疾患に対する免疫抑制等、免疫機能の低下や全身状態が悪化している状態では深在性真菌症が大きな脅威となる。
また、日本における深在性真菌症の発生頻度も増加傾向にある。1970年以前は国内の病理剖検例のうち深在性真菌症と鑑定される場合はわずか約1%であったが、2013年には5.1%まで増加している。20人に1人以上が深在性真菌症によって命を落としており、真菌の生物学的特性に伴う困難を乗り越えて、抗真菌薬の開発や真菌症の診療ガイドラインの整備を進展させる必要がある。
■真菌の一種であるカンジダ・アウリスは環境中での長期生存能力、空気伝播、消毒薬耐性などの特性から効果的な対策が困難であり、海外ではアウトブレイクを起こしている事例もある
本来、深在性真菌症は抗真菌薬で治療が可能であるが、近年では抗真菌薬が効きにくい薬剤耐性を獲得した真菌が出現し、世界的な問題になっている。とりわけ、カンジダ・アウリス(Candida auris)という真菌への警戒感は強い。
カンジダ・アウリスは2009年に新種として日本から報告された真菌である。深在性真菌症を引き起こすのは主にカンジダ、アスペルギルス、クリプトコックス、ムーコルと呼ばれる4グループの真菌である。自然界に数多い真菌の中でこれらのグループが感染症を引き起こす(日和見真菌症の原因菌となる)ことができるのは、37℃近辺で生育し、なおかつ、ヒト組織を唯一の栄養源として利用できるという2つの条件を満たすからであった。その一方で、カンジダ・アウリスは、42℃という高温下でも生育可能であり、さらに病原性も高く、多剤耐性傾向が強い。
現在、カンジダ・アウリスは6つの遺伝子型(クレード)が知られているが、実際にこのうちクレード1、3、4(アウトブレイク株)が世界中でアウトブレイクを起こしている。さらに海外株は血流感染を起こし、90%以上がフルコナゾール耐性、約40%が2種類以上の抗真菌薬に耐性を示すことが明らかになっている。なお、日本が報告したカンジダ・アウリスはクレード2(国内株)であり、主に耳からのみ分離され、病原性が低い。
日本でも2021年末にクレード1(アウトブレイク株)が1株検出されている。2024年8月時点でも日本で検出されるカンジダ・アウリスは主にクレード2(国内株)ではあるものの、クレード1(海外株)の検出を受けて、厚生労働省から事務連絡(多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのあるカンジダ・アウリス(Candida auris)について(情報提供及び依頼))が通達され、対策が強化されている。
カンジダ・アウリスは環境中での長期生存能力が高く、空気伝播も認められ、消毒薬耐性を持つ場合もあり、一度院内感染が起こると対策が非常に困難である。カンジダ・アウリス対策として、まず培養同定検査と感受性検査のみならず、遺伝子検査の確実な実施が重要である。菌が検出された場合は、可能な限り個室あるいは集団隔離したうえで、情報共有と適切な治療を行う必要がある。また、海外株の流入を防止する観点からは、メディカルツーリズムでの訪日客など、海外の医療施設に滞在した経歴を持つ層への注意も必要である。
■カンジダ・アウリス対策を含む真菌感染症及び耐性真菌対策の取組は急務であり、その最大の課題の1つは、研究費の不足と人材育成である
世界保健機関(WHO: World Health Organization)の報告によると、真菌感染症に関する研究費は全感染症研究の1.5%未満に留まっている。さらに、日本では真菌の研究者が減少しており、人材育成も急務である。日本は高温多湿であり、真菌感染症の蔓延リスクが高い。市民一人一人が真菌に対して関心を持ち、専門家を育成することが、国全体のためにも、国際的にも重要であるとの認識のもとで、今後の対策の方向性として5つ提示したい。
- 感染症対策・微生物研究を国のインフラとして再構築する必要がある
- 新しい抗真菌薬と診断法の改善に対して研究費を集中的に増額する必要がある
- 医真菌学教育と医真菌学研究の人材育成を進める必要がある
- 真菌感染症および病原真菌のレファレンス・コンサルテーション先を国内で維持・確保する必要がある
- 初等中等教育から高等教育でもカビに関する教育や微生物教育を充実させ、市民が微生物リテラシーを向上させる必要がある
真菌感染症、特に薬剤耐性真菌は新たな脅威として認識されつつある。カンジダ・アウリスの例が示すように、新種の出現や既知の種の薬剤耐性化は、臨床現場でも大きな課題となる。今後、真菌感染症対策が感染症対策全体の中でより重要な位置を占めることが予想されるなかで、継続的な真菌感染症及び耐性真菌対策の取り組みが一層強く求められる。
講演2「新興真菌Candida auris:本邦における疫学・薬物耐性傾向」
宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部 部長/ハンセン病研究センター長)
■カンジダ・アウリスは世界的に対策が求められており、日本国内でも全国的なサーベイランスの開始や感染対策マニュアルの整備などが始まっている
2009年に日本がカンジダ・アウリスを初めて発見して以来、国際社会でもカンジダ・アウリスは大きな課題として認識されている。例えば、WHOは2022年に「真菌優先病原体リスト(Fungal Priority Pathogens List)」において最も優先度の高いCritical groupにカンジダ・アウリスを指定しており、米国疾病予防管理センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)はCDCの優先病原体リスト(PPL: Priority Pathogens List)に相当する「2019 Antibiotic Resistance Threats Report」でカンジダ・アウリスを最も脅威となる病原菌であるUrgentに指定している。これは「Nightmare bacteria(悪夢の細菌)」と呼ばれるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌と同じ分類である。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2023年5月に自治体向けに情報提供依頼を発出し、国内の現状把握を目的としてカンジダ・アウリスの疑い例や薬剤耐性株の報告を求めた。これを受けて国立感染症研究所では、全国から集められた株の再同定と薬剤感受性試験、遺伝子型(クレード)の確認を行った。
国立感染症研究所のサーベイランス結果によると、集められた55株のうち、11株がカンジダ・アウリスと同定された。多くは我が国で初めてカンジダ・アウリスを発見した際と同様に耳由来であったが、一部は喀痰や気管支肺胞洗浄液からも分離されている。遺伝子型解析では、1株のみがクレード1(海外株)疑い、残りは全てクレード2(国内株)であった。薬剤感受性試験では、CDCの基準に基づくと9株がフルコナゾールに耐性を示したが、他の抗真菌薬への耐性は認められなかった。
これらの結果から、我が国では従来通りクレード2が主流であり、多剤耐性株は今のところ検出されていないことが確認された。しかし、耳由来株からもクレード1が検出されたことから、耳由来株であっても重篤な病状に発展する可能性のある株の存在に注意が必要である。また、インバウンド医療の増加に伴い、他のクレードや薬剤耐性株が海外から流入する可能性を考慮すると、カンジタ・アウリスの継続的なモニタリングやサーベイランスが重要である。
カンジダ・アウリスのサーベイランスは、米国や英国では定着例も含めた積極的な調査が行われている。それに反して、国内では感染症法上の規定がなく、前述の通り厚生労働省通知に基づく情報収集に留まっている。また、スクリーニング検査は国内では基本的に未実施だが、海外では必要に応じて鼠径部皮膚のぬぐい液を用いたスクリーニングが実施されている。院内感染対策については、2023年に国立国際医療研究センター、国立感染症研究所、厚生労働省が共同で「カンジダ・アウリスの臨床・院内感染対策マニュアル」を作成しており、着実に対策が進んでいる。
■検査・診断、治療、感染制御、サーベイランス、人材育成の側面でカンジダ・アウリスに特有の課題があるが、カンジダ・アウリス対策はあくまでAMR対策の一部として総合的かつ戦略的に実施する必要がある
カンジダ・アウリスが問題視される理由は多岐にわたるが、「検査・診断」、「治療」、「感染制御」、「サーベイランス」、そして「人材育成」の5つの側面から課題と対策を指摘したい。
検査・診断面の課題は、他菌種と誤同定される可能性の高さである。血液培養によるスクリーニング検査などの従来の検査法では、生化学的性状(生物学的な特性)が影響して正確な同定が困難であり、培養偽陰性や菌種誤同定の可能性が大きく信頼性が低いとされている。そのため、最新の質量分析装置や遺伝子検査による確定診断が必要であるが、これらの設備が全ての医療機関で導入されているわけではない。地方衛生研究所であっても、最新の検査設備や全ゲノム解析が可能な機器を有する施設は限られているため、各医療機関と、国立感染症研究所や経験豊富な研究施設との連携体制の構築が必要である。
次に治療面の課題は、耐性率の高さと抗真菌薬の入手困難さである。海外で分離される株の90%以上が代表的な抗真菌薬であるフルコナゾールに耐性を示し、40%程度が2種類以上の抗真菌薬に耐性を示すことが報告されている。また、グルカン合成酵素阻害薬やGPI蛋白阻害薬などの新規抗真菌薬開発も進められているが、いまだに流通が不十分であり入手が困難なため、一般的な治療に用いるには時間を要することも課題のひとつである。
感染制御面の課題は、真菌のなかでも特にカンジダ・アウリスが環境中で長期間生存可能なことである。臨床現場では一度病室でカンジダ・アウリスが検出されると、完全な除菌の確認が困難である。高度な隔離設備が整備された海外の主要病院でも一度アウトブレイクを経験すると、数ヶ月後に同一遺伝子型の株が再検出されるなど、サーベイランスの継続を余儀なくされており、感染制御の難度は非常に高い。
加えて、全国規模のサーベイランス体制の強化も課題である。米国や英国などの海外では全数把握や定着例も含めた積極的なスクリーニング検査が導入されている。有効性と実現可能性については検討すべきであるが、日本の現状では厚生労働省通知に基づく任意の情報収集にとどまっており、今後は感染症法に基づく全数把握や、定着例も含めた積極的な調査の実施を検討する必要がある。カンジダ・アウリスは現時点で我が国では大きな問題とはなっていないが、その特性から一度アウトブレイクが発生すると制御が困難となる可能性が高い。そのため、予防的な対策の実施と、迅速な対応が可能な体制の整備が重要である。学会や厚生労働省を中心に、欧米に準じた対策の準備が進められているが、今後はさらに医療機関、検査機関、行政が一体となった取り組みが求められる。
最後に人材育成・確保の重要性を強調したい。現在、院内検査室などに遺伝子検査機器が整備されていても、臨床現場で適切に運用できる人材が不足している。真菌の正確な同定の困難さは前述の通りであり、検査に熟練した人材育成と確保が急務である。また、真菌感染症、特にカンジダ・アウリスに関する研究の推進も重要な課題である。新規抗真菌薬の開発、より迅速で正確な診断法の確立と普及、効果的な環境除染方法の開発など、基礎研究から臨床研究まで幅広い分野の研究者の育成と支援が必要である。
しかしながら、カンジダ・アウリス対策は単に一つの病原体の対策に留まらせるのではなく、AMR対策の一部として位置づけられるべきである。これまで蓄積してきたAMR対策の知見を活用しつつ、真菌特有の課題にも対応できる総合的で戦略的なAMR対策の立案が求められる。そのためには、細菌学、真菌学、感染症学、公衆衛生学など、多分野の専門家による学際的なアプローチが不可欠である。
講演3「抗真菌薬適正使用を中心に」
山岸 由佳(高知大学 医学部 臨床感染症学講座 教授)
■真菌感染症における治療選択肢の拡大とともに対策を講ずべき病原体も変化しており、早期発見・診断や適切な疾患管理が必要不可欠である
真菌感染症は医学の進展とともに増加傾向にある。移植医療や化学療法の進化に伴い、免疫機能の低下や全身状態が悪化している状態など感染リスクの高い患者の増加が背景にあると考えられている。実際に、日本の病理剖検例の年次推移を見ると、真菌感染症の発生頻度が特に70年代、80年代にかけて上昇している。真菌感染症のうちではカンジダ症とアスペルギルス症の発生頻度が常に上位だが、2000年以降はアスペルギルス症の方が増加傾向にある。ただし、抗真菌薬の上市年度を見ると、2000年以降に複数の薬剤が上市されており、治療選択肢の拡大も同時に進んでいる。
CDCやWHOは、細菌のみならず真菌にも注目すべく、人類にとって脅威となる病原体のリスト「真菌優先病原体リスト(Fungal Priority Pathogens List)」をWHOが公表している。特に対策を講ずるべきグループとしてカンジダ属やアスペルギルス属が重要視されており、中でもカンジダ属ではカンジダ・アウリスおよびカンジダ・アルビカンス、アスベルギルス属ではアスペルギルス・フミガータスが最も重要とされている。
深在性真菌感染症のうち侵襲性が高く最も身近な感染症にカンジダ症が挙げられる。カンジダ症に関しては、腸管や皮膚に常在しているカンジダ菌が、免疫機能の低下や医療処置に伴って血中に侵入し、カンジダ血症を引き起こす可能性がある。カンジダ血症は様々な臓器に播種し、重篤な感染症を引き起こす可能性があるため、早期診断と適切な治療が重要である。厚生労働省の報告によると、近年日本国内ではカンジダ属の中でもWHOが危険性を最も強く指摘するカンジダ・アルビカンスではなく、それ以外のカンジダ属の増加が問題となっている。特にカンジダ・グラブラータやカンジダ・パラプシローシスなどは薬剤耐性株の出現も懸念されている。アスペルギルス属では、アスペルギルス・フミガータスが最も多く検出されるが、アゾール系薬剤耐性株の増加が世界的な問題である。
アジア太平洋地域を対象とした深在性真菌症の検査に関する調査によると、特徴的な患者背景として新型コロナウイルス感染者と、従来から指摘されている免疫抑制状態の患者が指摘されている。新型コロナウイルスに関連する新興真菌症としては、コロナ関連肺アスペルギルス症(CAPA:COVID-19-associated pulmonary aspergillosis)やコロナ関連ムーコル症、コロナ関連侵襲性カンジダ症が注目されている。これらの感染症は、新型コロナウイルス感染症の重症患者において特に問題となっており、予後不良因子となっている。また、海外のがん研究機関における真菌研究の結果では、T細胞性免疫抑制薬やB細胞性免疫抑制薬の使用も侵襲性呼吸器真菌感染症のリスク因子であると報告されている。これらの結果を踏まえ、疾患を合併している場合は、基礎疾患に対する診断・治療が行える医療体制の確保に加え、基礎疾患と併発している真菌症に対して早期発見・治療などの適切な疾患管理の必要性が明らかになった。
■真菌感染症対策では診断・治療のバンドル化や、抗真菌薬適正使用支援、新規抗真菌薬開発、疫学情報の収集・分析、そして市民に対する学修支援・啓発活動が期待される
真菌感染症の適正使用に向けた取り組みとして、診断・治療のバンドル化や、抗菌薬適正使用支援(AS: Antimicrobial Stewardship)チームの活動が重要である。バンドル化とは、数ある感染対策のうち、特に有用とされる数個の対策をまとめて実施する方法であり、実際には学会などが作成したチェックリストに沿って自動的に治療選択を行うことが一般的である。ASチームは、医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師、事務職など多職種で構成され、主治医と協力しながら適切な診断支援(DS:Diagnostic Stewardship)をあわせて行う。具体的には、抗真菌薬の選択、投与量・投与期間の最適化、薬物相互作用の確認、治療効果のモニタリングなどを行う。ASの推進により、患者の予後改善、抗真菌薬の使用量・費用の適正化、入院期間の短縮などの効果が期待できる。また、人材育成の観点からも、ASチームの活動は重要であり、ガイドラインの活用や症例検討を通じて、次世代の専門家を育成することが可能となる。
世界的にも新規抗真菌薬の開発は、薬剤耐性菌の出現に対応するため重要な課題である。現在、複数の新規化合物が臨床試験段階にあり、これらの薬剤が実用化されると、治療選択肢の拡大につながる。日本国内でも新規抗真菌薬の開発が進められており、既存薬とは異なる作用機序を持つ薬剤や、広域スペクトルを有する薬剤の臨床試験が行われている。しかし、新薬の開発には長期間を要するため、既存の抗真菌薬を適切に使用しながら、薬剤耐性菌の出現を最小限に抑える努力が必要である。
また、疫学情報の収集・分析も重要であり、日本でも全国規模のサーベイランス体制の構築が進められている。これにより、真菌感染症の発生動向や薬剤耐性の状況を把握し、適切な治療戦略の立案に還元することが可能となる。
これからも真菌感染症に対する理解や認知度を向上させる必要がある。例えば、CDCが主導して、毎年9月中旬に行われる「Fungal Disease Awareness Week」に類似した取り組みを日本でも推進することも一案である。医療従事者だけでなく、市民に対しても真菌感染症対策の重要性を伝え、予防や早期発見・早期治療に繋げていきたい。
【開催概要】
- 登壇者(順不同):
槇村 浩一 氏(帝京大学 医真菌研究センター 副センター長・教授)
宮崎 義継 氏(国立感染症研究所 真菌部 部長/ハンセン病研究センター長)
山岸 由佳 氏(高知大学 医学部 臨床感染症学講座 教授) - 日時:2024年8月23日(金)18:00-19:30
- 形式:オンライン(Zoom ウェビナー)
- 言語:日本語
- 参加費:無料
- 定員:500名
■登壇者プロフィール
槇村 浩一 氏(帝京大学 医真菌研究センター 副センター長・教授)
東京医科大学卒業 帝京大学大学院細菌学、同大医学部第一内科(1990年)、米国Tampa Bay Research Institute、ウイルス学講座 客員研究員(1991年)を経て、1996年より帝京大学医真菌研究センター 講師、2011年より同大医学部教授。2021年から同大医真菌研究センター 副センター長・教授。この間、国際宇宙ステーション日本実験棟 微生物研究主任を務めた。研究テーマは、ヒトの健康を障害する真菌全般。フィールドは院内環境に留まらず動物園から古代遺跡に及ぶ。
宮崎 義継 氏(国立感染症研究所 真菌部 部長/ハンセン病研究センター長)
内科学、特に感染症内科学・医真菌学・呼吸器内科学の専門家。2013年より国立感染症研究所の真菌部設置に伴い部長に就任。2019年からはハンセン病研究センター長との併任。厚生労働省の薬事審議会 医療機器・再生医療等製品安全対策部会の委員も務める。
国立感染症研究所には、2007年に生物活性物質部部長として入職。国立感染症研究所入職前は、長崎大学の医学部および医学部付属病院において、検査部および第二内科の講師を務めた。1995年米国国立衛生研究所フェロー。1994年伊万里市市民病院勤務。
1988年長崎大学医学部卒業。医学博士(長崎大学)。
山岸 由佳 氏(高知大学 医学部 臨床感染症学講座 教授)
順天堂大学医学部卒。小児科医として岐阜大学医学部附属病院および関連病院で研修・研鑽を積み、2008年4月より愛知医科大学病院の感染制御部、2013年より感染症科(新設)の医師として研鑽を積んだ。2016年より愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学 准教授、2017年4月教授(特任)を経て2021年7月より現職の高知大学医学部附属病院 感染症科(新設) 教授および高知大学医学部附属病院 感染管理部 部長に着任。また2022年~高知大学医学部 臨床感染症学講座(新設) 教授を併任している。医師、医学博士。
日本臨床検査医学会 臨床検査専門医 日本小児科学会 専門医・指導医 日本感染症学会 感染症専門医・指導医などの資格を有している。
学会活動は幅広く、現在、日本化学療法学会 理事、日本医真菌学会 理事、日本性感染症学会 理事、日本外科感染症学会 理事などの役職も担っている。
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