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【開催報告】第50回特別朝食会「骨太の方針2023年を踏まえて~これからの日本の保健医療のあり方~」(2023年6月20日)

【開催報告】第50回特別朝食会「骨太の方針2023年を踏まえて~これからの日本の保健医療のあり方~」(2023年6月20日)

この度、田畑裕明氏(衆議院議員/自由民主党 厚生労働部会 部会長)をお招きし、第50回特別朝食会を開催いたしました。2022年8月より自由民主党厚生労働部会長を担われている田畑氏に、骨太の方針2023年を踏まえたこれからの日本の保健医療のあり方についてご講演いただきました。

<講演のポイント>

  • 労働市場改革の完遂には、「三位一体の労働市場改革」が必要不可欠であるが、全産業・全事業所においてすべてを一度に導入するにはハードルが高く、組織に合わせて段階的に組み合わせながら導入する必要がある
  • 持続可能な社会保障制度の構築には、2024年度に予定されている介護・医療・障害福祉報酬トリプル改定やそれに伴う法改正、財源確保に向けた予算編成が非常に重要である
  • 創薬力強化において、薬価改定が広範かつ頻繁であることが製薬企業等の財務基盤の脆弱性に繋がっているため、特許期間を含めた適切な評価が重要である。またジェネリック医薬品においても安定供給に向けた産業構造転換が求められる


■「骨太の方針」の概要

「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~(骨太の方針)」が「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行政策」、「規制改革実施計画」とともに2023年6月16日に閣議決定された。骨太の方針は、来年度の政府全体の予算編成方針を定める重要な政策の取りまとめであり、これらをもとに8月末に向けて概算要求までの議論を深めていく。

骨太の方針2023は、岸田政権が3年目に入り議論が煮詰まってきたことにより、昨年より9ページ増の全45ページ、次の5章から構成されている。

  1. マクロ経済運営の基本的考え方
  2. 新しい資本主義の加速
  3. 我が国を取り巻く環境変化への対応
  4. 中長期の経済財政運営
  5. 当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方

今回の講演では特に保健医療のあり方という視点から第2章と第4章についてまとめる。


■第2章 新しい資本主義の加速 ~三位一体の労働市場改革~

雇用労働政策に関心を持って活動しているが、この30年、日本人の平均賃金は横ばいで欧米諸国と比較しても賃金の伸びが鈍化していることに大きな危機感がある。平成初期とは異なり、現在はゼロ金利政策や保険料、社会保障費などの増大による国民への負担が大きく、可処分所得が減っている現状から、労働市場改革をやり遂げる必要がある。そのためには「三位一体の労働市場改革」実現が必須であるが、全産業、全規模の事業者に対して三位一体の自由な労働市場を作り、ジョブ型人事を導入することは現実的に困難であり、段階的に適応する分野から導入することが重要である。今後はこれに伴う法制度の作成や、制度の拡充化を図っていく。その中で、以下の3つが特に、今後の改革のためには重要な動きである。

  1. リ・スキリングによる能力向上支援
    日本では大学を卒業することで全ての学びが終了したと考えるが、知識を身につけ、学びを実践する喜びを感じるなど、学び続けることで自身をアップデートする価値観を広めていく必要がある。
  2. 個々の企業の実態に応じた職務給の導入
    年齢ではなく能力で評価され、客観的に報酬に反映する仕組みが中堅企業まで浸透することが重要である。
  3. 成長分野への労働移動の円滑化
    多様な背景を持つ中途採用人材が多く集まる中小企業で成長が達成されている。


■第4章 中長期の経済財政運営 ~持続可能な社会保障制度の構築~

医療や介護における総論的な問題

今国会では、日本版CDC法案と呼ばれる国立健康危機管理研究機構法案が採択され、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し「国立健康危機管理研究機構」を設立することが決まった。今後は実現に向けた予算的な措置や体制の整備が必要である。

また、コロナ禍で停滞していた地域医療構想の進展や、子どもの支援の需要、分娩可能な医療機関の閉鎖問題を抱える周産期医療などの問題解決が求められる。救急医療体制において、2022年中の救急自動車による救急出動件数は722万9,838件(対前年比103万6,257件増、16.7%増)、搬送人員は621万6,909人(対前年比72万5,165人増、13.2%増)と救急出動件数、搬送人員ともに対前年比で大幅に増加し、集計開始以来、最多となり負担が増大している。消防庁でも救急安心センター事業(♯7119)の利用を促進する対策を講じている。

医療DXではマイナンバーカード、オンライン資格確認において個人情報の紐づけ誤りが発生し、国民のマイナンバーカードへの信頼が揺らいでいることは、憂慮すべきで遺憾である。ヒューマンエラーを発生させない前提で構築されたが、結果として発生しており、解消に向けた対応が必要である。2024年秋には紙の国民健康保険証が廃止されることが明確に記載されているが、国民には様々な背景や事情があり、段階的な移行が現実的である。また、健康寿命延伸のため、健康づくり・予防・重症化予防を強化し、デジタルヘルスは医療DXと関連付け、第3期データヘルス計画を見据えてエビデンスデータを活用した解析・分析に力を入れていく必要がある。

歯科医療について、歯の健康が全身の健康につながるという認識が増したことから、口腔の健康の指摘・重要性が記載された。がん医療について今国会において議員立法によりガンゲノム医療の法案が成立した。この分野は期待が高く、がん治療の伸展をさらに誘発する。難聴対策、難病対策、移植医療対策、慢性腎臓病対策、アレルギー対策、メンタルヘルス対策、栄養対策等も多くの議員の指摘を受け、厚生労働部会長として多くの協議・議論を主導した。

創薬力の強化に関して

製薬企業や医薬品・医療に関わる企業の財政的圧迫の要因として、薬価改定が2年に1回の頻度で実施され、改定範囲の幅が広くなっていることが考えられる。特許期間中の価格維持に関しても大きな課題があり、「保険収載時を始めとするイノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置」と記載されたことは1つの楔となっている。また、ドラックラグ・ドラッグロスの問題に対応すると明確に記載されたので、未承認薬の解消に向け、短期的課題・中長期的課題に分けて対応する。

「新規モダリティへの投資や国際展開を推進するため、政府全体の司令塔機能の下で、総合的な戦略を作成する。」とあるが、すでに自民党の社会保障制度調査会において創薬力の強化育成に関するプロジェクトチームがあり、政府全体としてこの分野における国際展開のための司令塔機能を置くことを提言した。厚生労働省単独ではなく官邸も巻き込みながら、政府全体の司令塔機能を厚生労働省の外に置いて連携し、大きなムーブメントとして国際展開をしていくのが理想である。医療保険財政の中でイノベーションを推進するため、長期収載品等の自己負担の在り方の見直し・検討を進める。薬剤の分野において選定療養を広めるのではなく、長期収載品においても様々な特性のある薬剤があると考えられることから、「自己負担の在り方の見直し、検討を進める」といった表記に留められた。

大麻由来医薬品の利用等に向けては次の臨時国会で関連法案の法改正が予定されている。OTC医薬品やセルフメディケーションの促進、バイオシミラーの使用促進等も記載されており、輸入促進や国内製造強化という意味合いが含まれている。プログラム医療機器の実用化促進に向けた承認審査体制の強化などはハードルが高いが、迅速化できるように取り組む必要がある。血液製剤に関して、人口減少に伴う中長期的な視点から、献血する若者の数が減少するという危機感を持ち、献血への理解促進とともに、国内自給、安定的な確保及び適正な使用の促進などの対応が必要である。

医療介護分野における費用や職業紹介

第4章に「次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定(トリプル改定)においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う。」とある。2024年度の同時改定には介護報酬の改定があり、一部、法改正が含まれると見込まれる。後期高齢者の増加、認知症高齢者の対応など、地域における介護保険会計の健全化が問題である。現在の介護報酬体系は介護度の改善に対する報酬が無いため、介護度が高い状態を保つ、もしくはより介護度が高い人を受け入れる事業者が多いと考えられ、介護度の改善に対するインセンティブに肉付けが必要である。また4~5年間にわたる様々な協議を経て、認知症基本法(共生社会の実現を推進するための認知症基本法)が議員立法として成立した。基本法に基づいた介護支援体制を構築していくことで、多くの人がより安心して介護を受けられ介護難民を出さない環境づくりなどにも対応を進める。

コメディカルや介護職員の人手不足が問題になっているが、民間の有料職業紹介事業者における法外な紹介料取得や、クーリングオフ期間後の契約解除に伴う高い罰則金請求なども問題である。ハローワークなどの公的な職業紹介機関がより機能し、健全な活動の見える化が必要である。これについては多くの議員からも声が上がっている。

財政運営の新たな舵取り

国の財政運営は、3年サイクルで1つの財政フレームの方向性が定められているため、現在は2021年の骨太方針の財政運営の考え方に準ずる。2021年において、社会保障関係費は高齢化による増加分に相当する伸びに収められるとされており、予算編成についても高齢化の伸び以上は他の予算を圧縮し、財源を確保することが財政的な指針となっていた。圧縮する財源としてより多く活用されていたのは薬剤費であり、多いときで1600億円近くを捻出している。その考え方を覆す必要があり、多くの賛同する議員と強く働きかけた。今回の骨太の方針の中では記載されなかったものの、自由に議論する平場の会議で財務官僚の次長と議論ができたことから、12月の予算編成で再度検討されるものと考えている。トリプル改定において公定価格を上乗せすることに関して、昨年の予算の編成方針とは異なる形になった。

社会保障費の増額に伴う財源の捻出には不必要な歳出を抑える必要がある。一方で医療や介護、創薬の現場の投資意欲、働くモチベーションを意識しながら、政治的なメッセージを発信し、あるべき議論を進めていく。

インフレと物価上昇への対策の必要性

最近はデフレから反転しインフレ傾向にあり、物価上昇基調に局面が変わっている。岸田政権は民間企業に賃金上昇を依頼し、経団連ベースでは大企業を中心に春闘で3%以上の賃上げが報告されている。一方で公定価格の対象事業所で働く方々が蚊帳の外になることから、政府として民間企業の賃金上昇を目指すのであれば、公定価格もそれに見合う価格に上げる必要がある。

被扶養者はいわゆる「年収の壁」があり、社会保険上は106万と130万が適用されている。この壁を超えることは厚生年金などにも影響するため冷静に議論する必要があり、政府は見直しに取り組むことを宣言している。

医療機関や製薬企業においては、エネルギー価格や電気代などの高止まりが顕著であり、経営を圧迫している。本来は利益を賃金に還元することが市場メカニズムとして当然であるべきだが、目減りしている中に得た収益を企業の維持管理に回さざるを得ない現状は由々しき問題である。

ジェネリック医薬品

多くの医療現場や調剤薬局において、ジェネリック医薬品の安定供給に関する不安の声が上がっている。厚生労働省においても有識者検討会が提言を出しているが、次の構造的な問題がある。

  • 市場実勢価格が反映されない薬価制度
  • 過度な価格競争
  • 薬局・医療機関との交渉による価格下落
  • 共同開発、製造能力に余力のない企業の存在など

医療財政の観点から、広く安定的にジェネリック医薬品を供給し続ける産業構造への転換が大変重要で、次の対策が求められる。

  • 共同開発の仕組みの是正
  • 更なる製造能力向上のため製造能力に応じた評価の検討
  • 医療上の必要性が高い医薬品から段階的に薬価制度への反映
  • 医薬品全体におけるサプライチェーンの強靭化

抗菌薬も重要物資に指定されたため、経済安全保障の視点においても医薬品に積極的に取り組むべきである。


講演後の会場との質疑応答では、国の財源のあり方や、予防医療における受診継続率の課題などについて、活発な意見交換が行われました。

 

(写真:井澤 一憲)


プロフィール

田畑 裕明(衆議院議員/自由民主党 厚生労働部会長)
1973年富山県生まれ。富山市議会議員、富山県議員を経て2012年衆議院議員初当選。以来4期連続当選。衆議院厚生労働委員会理事、総務副大臣、厚生労働大臣政務官を歴任。2022年8月より自由民主党厚生労働部会長に就任。医療、医薬品分野の政策づくりも精力的に取り組む。「ひきこもり支援推進議員連盟」「認知症グループホームを考える議員連盟」「地域で安心して分娩できる医療施設の存続を目指す議員連盟」ではそれぞれ事務局長を務めている。


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