【開催報告】第6回超党派国会議員向け医療政策勉強会「30分で伝える医療政策最前線:コロナ禍におけるこころのケア~認知行動療法の活用と普及の重要性~」(2021年6月1日)
日本医療政策機構は、衆議院議員会館にて第6回医療政策勉強会「30分で伝える医療政策最前線:コロナ禍におけるこころのケア~認知行動療法の活用と普及の重要性~」を開催いたしました。
今回は、日本における認知行動療法の第一人者である大野裕氏(一般社団法人 認知行動療法研修開発センター 理事長)にご講演いただき、新型コロナウイルス感染症がこころの健康へ与える影響、認知行動療法の有用性等についてお話いただきました。
講演後にはご参加いただいた国会議員の方々より多くのご質問をいただき、活発な意見交換の場となりました。
■概要
当機構では、2019年度よりメンタルヘルス政策プロジェクトをスタートさせ、日本のメンタルヘルス政策における現状の課題の整理と課題解決の方向性を検討してまいりました。2020年7月に公表した第一弾の政策提言「メンタルヘルス2020 明日への提言~メンタルヘルス政策を考える5つの視点~」では、薬物治療以外の選択肢を拡充させることの重要性を指摘し、精神療法の中でも最もエビデンスが構築されている認知行動療法の拡大について言及しています。
上記提言をもとに、2021年3月には、厚生労働省 令和2年度障害者総合福祉推進事業(3次)「認知行動療法及び認知行動療法の考え方に基づいた支援方法に係る実態把握及び今後の普及と体制整備に資する検討」を実施し、今後の認知行動療法の普及に向けて政策提言を作成いたしました。ご講演頂いた大野 裕氏には、上述の事業において、ワーキンググループメンバーとしてご参画も頂きました。
今回の「30分で伝える医療政策最前線」では、これまでのメンタルヘルス政策プロジェクトをベースとし、認知行動療法についてより多くの国会議員に知っていただくことを目的として開催致しました。
講演では、以下の項目について現在のお取り組みや今後の展望をお話いただきました。
コロナ禍におけるこころの危機
COVID-19によるパンデミックは私たちの身体のみならず、感染することへの不安や経済危機による生活への不安、さらには自由な活動を制限されることによる孤立や落ち込み、怒りなど、こころに大きな影響を与えている。
こころの不調に対する「治療としての認知行動療法」の有用性と普及の課題
1960年初頭に米国で開発された認知行動療法は認知(考え)や行動を修正することで気持ちを整え問題解決能力を高めることを目指す治療法である。日本では、自殺率の上昇を背景に2010年度にうつ病に対する精神医学専門療法として保険収載された。通常診療に比べ、認知行動療法は患者自身がセルフケアの手法を学ぶことで、長期的な治療効果が期待できる。現在は不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD: Post Traumatic Stress Disorder)等の精神疾患の治療や、慢性疼痛等身体症状の軽減にも活用されている。
一方で、認知行動療法を受けたいという患者のニーズには十分に応えられておらず、今後は人材育成や診療報酬、提供体制といった多角的な観点から普及に向けた取り組みを進める必要がある。
こころの健康を保持・増進させる「認知行動変容アプローチ」の活用の可能性
治療のみならず、ストレスに適切に対処する手法として「認知行動変容アプローチ」の活用が期待される。実際に一部の企業や学校では認知行動変容アプローチが導入され、その効果が示されている。またCOVID-19の拡大により、人工知能(AI)を活用したチャットボットなど、デジタルツールを用いた認知行動変容アプローチへの期待も高まっている。今後、対面支援と組み合わせながら、個人の状態やニーズに合わせた支援が必要である。
国民のウェルビーイング向上のためのプラットフォーム構築の必要性
近年、諸外国で国民のウェルビーイング向上に向けた政策が提案されている。日本でも、国民のこころの健康の保持・増進のためのプラットフォームを構築することが必要だ。このプラットフォームにおいて、認知行動変容アプローチが支援手法の一つとして活用されることが望ましい。また一律でサービスを提供するのではなく、国民が自身の状態やニーズに応じて自分でサービスを選択できる体制が必要となる。
■「認知行動療法及び認知行動療法の考え方に基づいた支援方法に係る実態把握及び今後の普及と体制整備に資する検討」
<【開催報告】第7回超党派国会議員向け医療政策勉強会「30分で伝える医療政策最前線:日本における予防接種・ワクチン政策の課題とコロナ禍」(2021年6月8日)
【開催報告】第5回超党派国会議員向け医療政策勉強会「30分で伝える医療政策最前線:生涯を通じた女性の健康支援~リプロダクティブヘルス・ライツの重要性~」(2021年5月27日)>
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