【お知らせ】世界保健機関(WHO)市民社会委員会「持続可能な保健財政」に関する提言書の公表と賛同(2026年5月19日)
日付:2026年6月22日
タグ: グローバルヘルス, グローバルヘルス戦略
日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、世界保健機関(WHO: World Health Organization)が設置する市民社会委員会(CSC: Civil Society Commission)の加盟団体として、このたび公表された提言書「2030年に向けた保健財政に関する市民社会からの提言(Health Financing: Civil Society Perspectives on the Path to 2030)」に賛同しました。本提言書は、WHO CSC「持続可能な保健財政」ワーキンググループにより取りまとめられたものであり、HGPIは日本から唯一同ワーキンググループの委員として参画し、提言書の作成に携わりました。本提言には、公表時点で世界112以上の市民社会組織が署名しており、日本からはHGPIが署名団体として参加しています。
提言の背景
経済協力開発機構(OECD: Organisation for Economic Co-operation and Development)の最新データによれば、2025年には政府開発援助(ODA: Official Development Assistance)が記録史上最大となる23.1%の減少を示し、国際保健財政は構造的な転換点を迎えています。低・中所得国では、援助の縮小と債務返済負担の増大が重なり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)達成をはじめ各国が掲げてきた保健分野の目標を実現するための財政的な余力が急速に失われつつあります。また、ランセット誌に掲載された研究は、現在の傾向が続けば、2030年までに5歳未満児の死亡が最大540万人増加する可能性があると指摘しています。
提言の概要
本提言は、こうした状況を踏まえ、保健を「削減対象のコスト」ではなく、すべての人にとっての基本的人権であると同時に、経済的・社会的なリターンをもたらす戦略的な「投資」であるという視点への転換を強く求めるものです。第79回世界保健総会(WHA: World Health Assembly)および2027年の国連総会UHCに関するハイレベル会合に向けて、加盟国およびWHOに対し以下4点を提言しています。
- 命を救う必須サービスの保護とプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)への投資(加盟国宛て):
プライマリ・ヘルス・ケアへの国内総生産(GDP: Gross Domestic Product)比1%の追加投資、削減により失われたサービスの棚卸しと再統合、メンタルヘルス、非感染性疾患(NCDs: Non-Communicable Diseases)、性と生殖に関する健康と権利(SRHR: Sexual and Reproductive Health and Rights)など脆弱性の高い領域の明示的な保護
- 国内資金動員と保健支出インパクトの最大化(加盟国宛て):
予算における優先順位付けや累進課税(健康税を含む)を通じた国内公的資金の動員、不正な資金流出への対応や債務問題の公正かつ迅速な解決、エビデンスと公平性に基づく支出判断による「保健に投じる一円一円」のインパクトの最大化、市民社会への説明責任を担う恒久的なパートナーとして位置づけた保健財政の調整メカニズムの制度化
- 保健財政プロセスにおける社会参加・市民社会参画の制度化(WHO・加盟国宛て):
第77回WHAで採択された「社会参加(Social Participation)に関する決議」の実装強化を基盤に、文書化されたフィードバックの仕組みを伴う協議の最低基準化、意思決定機関への市民社会の公式な代表参画の担保、草の根団体や周縁化されたコミュニティを代表する団体への直接的な資金支援
- 保健財政の透明性と説明責任における市民社会参画の実現(WHO・加盟国宛て):
WHOによるグローバルな観測機能の強化、性別・障害・地域・年齢・社会経済的状況等で分解されたデータの公表、加盟国による各国保健会計(NHA: National Health Accounts)の参照年から12か月以内の提出、市民社会主導の独立モニタリングへの支援、オープンアクセスを既定の標準とする運用と明確なデータガバナンスルールの確立
特に当機構からは、日本政府が推進する「UHCナレッジハブ」の積極的な活用は、国内外の知見共有とベストプラクティスの横展開を通じて、持続可能な保健財政の実現に極めて重要であることや、WHO本部だけでなく、地域事務所・国事務所との連携強化のためにWHO事務局長の積極的な支援のもと、各国政府および市民社会と協力して、保健省と財務省、ドナー、影響を受けるコミュニティを結集する協議体の設立を求めることを提起させていただきました。
WHO事務局長との対話イベントの開催
第79回WHA期間中の2026年5月19日(火)に本提言をWHOのテドロス事務局長に直接届ける対話イベントが開催され、盛況のうちに終了しました。本イベントは、2025年5月に行われた第78回WHAのサイドイベント「グローバルヘルスへの投資の確保:いま求められる新たなアプローチ(Securing Investments in Global Health: Time for a New Approach)」を起点として、セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)とのパートナーシップのもと実施された全3回のダイアログシリーズの最終回として位置づけられるものです。
HGPIは引き続き、WHO CSCの加盟団体およびワーキンググループの委員として、2027年の国連総会UHCに関するハイレベル会合をはじめとする国際的な保健財政に関する議論に積極的に貢献してまいります。
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