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【政策提言】抗菌薬市場におけるプル型インセンティブ制度の導入に向けて(2021年3月24日)

【政策提言】抗菌薬市場におけるプル型インセンティブ制度の導入に向けて(2021年3月24日)

日本医療政策機構は2016年から薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)の課題を取り上げ、AMRアライアンス・ジャパンの事務局も務めています。このたび、AMR対策のさらなる推進に向けて、日経・FT感染症会議 アジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC)AMR部会(事務局:AMRアライアンス・ジャパン)は2021年3月24日に、抗菌薬市場におけるプル型インセンティブ制度の導入に関する政府向け提言書を発表いたしました。

細菌(病原体)が抗菌薬の使用に伴い変化し、抗菌薬の効果が小さくなることを薬剤耐性といいます。薬剤耐性が拡大すると感染症治療のみならず、抗菌薬の使用が前提となるがん治療等の現代医療を行うことさえ困難になります。抗菌薬の効果が十分に発揮されていれば助かるはずの命が今後救えなくなることが危惧されています。実際に、AMRという「サイレントパンデミック」の脅威は我が国に忍び寄ってきています。2019年、薬剤耐性菌2種(MRSA(Methicillin‐resistant Staphylococcus aureus )及びフルオロキノロン耐性大腸菌)の菌血症により日本国内で年間約 8,000 人が命を落としていることが明らかになりました。AMRは既に眼前の「感染症による健康危機」であり、この危機に立ち向かい、国民をAMRから守るためには抗菌薬が必要不可欠です。

しかしながら、抗菌薬の開発は1980年代をピークに減少しています。また、抗菌薬の開発には10-15年の歳月と約1,000億円以上の費用が必要となります。AMR発生のメカニズムを踏まえると、AMR対策は抗菌薬の適正な使用(検査に基づく必要な患者への必要な期間の集中的な治療等)が前提となります。そのため、製薬企業は新規抗菌薬の研究開発に成功しても、公衆衛生の観点から新たな抗菌薬の使用を制限する必要があり、「使用量あるいは販売量に応じた」収益は期待できない状況にあります。実際に、近年では5 つの抗菌薬メーカーが倒産しています。

このような抗菌薬市場の構造的な課題を乗り越え、製薬企業が新規抗菌薬の研究開発に対して持続的な投資ができるように、市場環境の改善に繋がる仕組みが求められています。具体的には、「プル型インセンティブ」という抗菌薬の「使用量(販売量)」と「売上げ(収益)」を切り離す仕組みが必要です。プル型インセンティブの検討は海外でも進んでおり、英国ではプル型インセンティブが試行的に導入され、米国でも連邦議会にプル型インセンティブに関する法案が提出されています。

我が国におけるプル型インセンティブの導入を目指し、日経・FT感染症会議 アジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC)AMR部会でも2020年より議論を重ねてまいりました。この度、これまでの議論を取りまとめた提言書を発表いたします。なお、本部会の事務局はAMRアライアンス・ジャパン(事務局:日本医療政策機構)が務めております。

提言書の内容は、末尾のPDFファイルにてご覧いただけます。

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