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【開催報告】第42回特別朝食会「持続可能な社会保障制度を支える医療の課題とこれからの在り方」(2019年1月18日)

【開催報告】第42回特別朝食会「持続可能な社会保障制度を支える医療の課題とこれからの在り方」(2019年1月18日)



この度、厚生労働省医政局長である吉田学氏をお招きし、第42回特別朝食会を開催致しました。吉田氏には、2025年に向けて地域包括ケアシステムの更なる推進と、地域医療構想の実現に向けた医師の働き方改革や、保健医療分野における情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)の活用、さらには2040年を見据えた今後の日本の医療政策についてお話しいただきました。





■講演の概要
ー「2025年」の目標達成へ
厚生労働省では、いわゆる「団塊の世代」の全員が75歳以上となる2025年に向けて、医療と介護の一体的な改革を目指して、各種施策を推進している。特に、健康寿命の延伸を目指し、地域包括ケアシステムの構築と深化を進めてきたが、今では高齢者に留まらず全世代のウェルビーイングにつながる「地域共生」へとシフトしている。
地域包括ケアシステムは、これまでの「病院/在宅」「施設/在宅」の二元論から、循環型サービスに移行することで切れ目のない体制づくりを目指すものである。これは「医療と介護の連携」という縦軸と「生活支援とまちづくり」という横軸によって成り立つ。

そもそも、地域包括ケアシステムは単なるコンセプトペーパーであって、地域の中で実践によって形作られるネットワークでありマネジメントといえるだろう。今後、地域包括ケアシステムを各地で実装・深化させるには、全世代型の地域共生を目指して「地域におけるサービス展開の総合化・包括化・効率化」「個別サービスの充実と、その質のマネジメント」「人的・財政的な社会資源の持続可能性の強化」「社会福祉法人・医療法人などのサービス提供主体の改革」を同時並行で行いながら、「行政・サービス提供者・利用者・市民の意識改革」「専門職の育成・強化」「ICT技術やAIを活用したネットワーク・情報プラットフォームの構築」といった社会を支えるインフラの整備・強化も早急に進める必要がある。

2025年に向けて、地域包括ケアシステムの目指すところは、まさに「地域・コミュニティづくり」そのものであるといえる。

ー地域医療構想の実現
地域医療構想は、2025年時点での必要な病床数を4つの病床機能ごとに推計し、地域の医療関係者などと協議のうえ、効果的・効率的な医療提供体制の構築をめざすものである。その推進に向けて、主に次の4つの視点から取り組んでいる。

1.医療機関の機能分化・連携、再編・重点化
医療機関の機能分化・連携、再編・重点化においては、エリアの医療を一手に担うのか、他の病院と分担・連携しながら全体としてエリアを構築するのかなど、オンライン診療も含め個々の病院が地域の中でどのように貢献するかというビジョンを描く必要がある。

2.在宅医療、介護サービス、生活インフラ
また在宅医療や介護サービスの整備も地域医療構想の実現には重要だが、前提として最低限の生活インフラが整っていることが必要である。例えば、交通手段がなければ、自宅で暮らしていても郵便局・銀行・日常の買い物、さらには通院などができず、生活の基盤が崩れていく。各地域の生活インフラの状況も含めて、地域医療構想を考え実現する必要がある。

3.地域医療構想を推進する環境基盤
環境基盤整備の観点では、地域ごとの状況を比較できるデータ、エビデンスの整備・構築が重要である。今後は、各都道府県においてデータやエビデンスを用いて地域の医療提供体制を整備する企画力が求められる。さらには行政のみならず、地域のリーダーや大学などの学術機関、さらにはローカルシンクタンクなどもその一翼を担いうる存在である。トップダウンで進めるのではなく個々の都道府県やそれぞれの医療機関が主体的に適切な判断ができるよう、全体を可視化できるインフラを整えたい。地域の医療提供体制の状況が客観的に把握され、マーケット全体のユーザーの付加価値が最適化されるという状態が望ましい。

4.人材
人材の観点では、例えば人口10万人当たりの医師数はもうまもなくOECD平均に達する。医師数は増えていながらも、地域ごとの偏在、診療科ごとの偏在がいまだに課題である。2018年に成立した改正医療法・医師法では、医師の少ない地域での勤務を促す環境整備のほか、都道府県における医師確保の体制整備、さらには外来医療機能の偏在・不足に向けた情報の可視化を目指している。また女性医師が働き続けることのできる環境整備も喫緊の課題である。

ー医師の働き方改革について
今まさに議論が進んでいる点であるが、2019年4月から全ての分野で働き方改革関連法が適用されるものの、医師に対しては2024年までこのルールを適用しない。2019年の3月中を目途に規制の具体的な在り方や、労働時間の短縮策などを検討し、結論を出す。そして、2024年4月の規制適用に向けて、関係各所への周知、理解促進を行う。これは医師の負担を減らすというだけでなく、働き方改革を通じて医療全体を良くしていくという姿勢で取り組んでいる。そもそも、これまで医療機関において労働時間の管理や、企業などでいうところの産業保健体制が適切に整備・運用されてきたのかには疑問がある。

各エリアでのそれぞれの医療機関の位置づけや機能を踏まえて医師の勤務形態も変化する。具体的には、医師の健康管理、勤務時間のインターバル、連続勤務の規制など一連の対応策を提案し、協議頂いている段階である。また今後は、医療専門職間または医療機関のスタッフ間でのタスクシフティング、あるいは医師間でのタスクシェアリングによる勤務時間の短縮なども検討していきたい。

医師の働き方改革は独立して議論をされているように見られているが、医療提供体制や医療の質にも大きく影響する課題であり、まさに2025年に向けての地域医療構想の実現や医師偏在解消といった、それぞれの目標とも大きく関係するテーマである。

ー保健医療分野の「Society5.0」
これまでも保健医療分野のICT化推進については議論が進められてきた。ポイントとしては「医療情報の見える化」「PDCAサイクルの構築」「ICT/AIの導入・活用」といった点が挙げられる。実際に実務面を検討する段階にある現在、まずはシステムの設計に取り組んでいく。運営主体の位置づけや、情報の発生元、その入力・保管・活用は誰がどのような権限で行うのか、また持続可能なシステムにするためのメンテナンスやその費用負担元など、議論すべき点が多くある。さらには、そもそもシステムが誰のために構築され、何のために利活用されるのか、またそこに伴うリスクは誰がどの程度まで許容するのか、といった点を共通認識として議論を深めなくてはならない。

厚生労働省では具体的に、保険医療記録共有、救急医療情報共有、パーソナルヘルスレコード(PHR: Personal Health Record)・健康スコアリング、乳幼児期・学童期の健康情報、データヘルス分析、科学的介護データ提供、がんゲノム、人工知能などの8つのデータヘルス改革に取り組んでいるが、上記の点を整理した上で、今後の政策を推進する必要がある。

ー2040年に向けて
厚生労働省では現在、2040年を見据えた社会保障の在り方を検討している。これまでの高齢者数が増える時期から、2025年を過ぎると生産年齢人口が減る時期に直面する。一方で、高齢者の健康寿命が延伸しており、元気な高齢者が増えるという側面もある。こうした状況を踏まえて、日本の社会のビジョンを考える必要がある。

健康寿命の更なる延伸と、多様な就労・社会参加の進展によって、医療・介護・生活支援サービスといった社会保障ニーズを減らすことが求められる一方、それだけでは持続可能な社会保障制度を構築することはできず、医療・福祉サービスで働く1人1人の生産性を向上させる取り組みも進めなくてはならない。もちろん、給付と負担の見直しという、兼ねてからの政策課題に対する議論を避けて通ることはできないが、生産年齢人口の減少という新たな局面に対応した政策課題として、2040年を見据えて取り組んでいきたい。

講演後の会場との質疑応答では、活発な意見交換が行われました。


■吉田 学氏

昭和59年(1984年)  厚生省入省
平成6年4月~9年3月 山口県庁勤務(健康福祉部高齢保健福祉課長など)
※省復帰後、多数役職を経て、
平成25年1月~ 内閣官房社会保障改革担当室審議官(「社会保障制度改革国民会議」事務局兼務)
平成26年7月~ 厚生労働省大臣官房審議官(医療介護連携担当)
平成28年6月~ 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長
平成29年7月~ 厚生労働省子ども家庭局長
平成30年7月~ 厚生労働省医政局長[現職]

  

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