【開催報告】認知症政策プロジェクト「特発性正常圧水頭症(iNPH)関連施策の課題と展望~治療で改善できる認知症へのフォーカス~」アドバイザリーボード会合(2022年6月10日)
日付:2022年6月29日
タグ: 認知症政策
日本医療政策機構は、2022年6月10日に「特発性正常圧水頭症(iNPH)関連施策の課題と展望~治療で改善できる認知症へのフォーカス~」アドバイザリーボード会合を開催いたしました。
当機構認知症政策プロジェクトでは、2022年度の活動の1つとして、「特発性正常圧水頭症(iNPH)関連施策の課題と展望~治療で改善できる認知症へのフォーカス~」を実施しています。
日本における認知症の人の数はまもなく700万人を超えるとされる現代において、高齢期においてもよりよい生活を送るためには、認知症に伴う症状の緩和や原因疾患の治療が望まれています。認知症の原因疾患の多くは治療が難しいとされる中で、特発性正常圧水頭症(iNPH: idiopathic normal pressure hydrocephalus)は「治療で改善できる認知症」とされ、その患者数は認知症の人の約5%程度の約37万人に上るとされています。また近年では認知症の主要な原因疾患とされるアルツハイマー病との併発も指摘されており、推計よりもさらに多くのiNPH患者の存在が指摘されています。また、iNPHの適切な治療により得られる効果としても、寿命延伸のみならず、高い医療経済効果や転倒防止等、数多くのメリットが提起されつつあります。さらに「治療可能な認知症に対する医療のあり方に関する調査研究事業」も厚生労働省老人保健健康増進等事業で実施される等、政策的な重要性も徐々に高まりつつあります。
一方で、iNPHの治療によって認知症の症状を改善させ、1人でも多くの当事者が質の高い生活を送るためには、多くの課題も散見されます。第一に、的確な早期診断が重要となるが、他の認知症諸領域に比べて、iNPHに対する医療提供者の認知度は決して高いとは言えず、認知症疾患医療センターでの診断から診療所を含むかかりつけ医による診断まで、診断されるシーンも多岐にわたります。第二に、iNPHの場合、精神科や神経内科等の認知症専門医による診断後、脳脊髄液の流通が悪化した部分にカテーテルを留置し、腹部空間等へ持続的に脳脊髄液を排出することで脳への圧迫を除去するためのシャント術を行う脳神経外科医との連携等、専門領域をまたがる協働が必要となります。さらには、このような治療提供体制の拡充に向けては、地域格差も散見され、全国均てん化も期待されています。
このような多岐にわたる課題を社会全体で解決していくべく、本プロジェクトでは、iNPHに関わる医療者、アカデミア、産業界の他、患者当事者の方の参画も得て、産官学民のマルチステークホルダーによる議論を基に、必要な施策を洗い出し政策提言のとりまとめを予定しております。
今回のアドバイザリーボード会合では、3月に実施されたプレ会合における議論も踏まえながら、iNPH施策の推進に当たっての課題の整理や想定される打ち手について、医療提供体制をメインに、産官学民のマルチステークホルダーを交えて議論を行いました。
なお、会議は新型コロナウイルス対策を鑑み、WEB会議システムによって行われました。
アドバイザリーボードメンバー(敬称略・五十音順)
- 石井 一成(近畿大学医学部 放射線医学教室 放射線診断学部門 主任教授)
- 伊関 千書(山形大学医学部 内科学第三講座 講師)
- 數井 裕光(高知大学医学部 神経精神科学教室 教授)
- 佐藤 友哉(Integra Japan 株式会社 マネージャー 水頭症・認知症ケア推進担当)
- 中島 円(順天堂大学医学部 脳神経外科学講座 准教授)
- 柳石 学(日本メジフィジックス株式会社 営業本部 マーケティング部 中枢グループ)
- 山田 茂樹(滋賀医科大学 脳神経外科学講座 病院講師)
当事者サポーター
- T.S.(70代・男性)
オブザーバー
- 中西 亜紀(厚生労働省 老健局認知症施策・地域介護推進課課長補佐 兼 研究開発係長 兼 老人保健課 厚生労働技官(認知症担当))
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