【活動報告】医療情報の信頼プロジェクト グローバル賢人会議「情報共創時代の健康・医療情報のあり方」(2024年4月22日)
日付:2024年4月22日
タグ: 医療情報の信頼
日本医療政策機構(HGPI)医療情報の信頼プロジェクトでは、グローバル賢人会議「情報共創時代の健康・医療情報のあり方」報告書を公開しました。
近年の情報のデジタル化の波と、健康・医療情報が直接的に人々の健康を左右するという特徴を鑑み、医療関係者、行政、企業、患者・当事者リーダーに加え、哲学、宗教学、情報学などの有識者にお集まりいただき、国際的かつ専門分野横断的に健康・医療情報のあり方について、全2回の会合を行いました。
■第1回会合:健康・医療情報の正確性や信頼性
基調講演1
中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康管理学講座健康情報学 教授)
「情報共創時代の健康・医療情報のあり方」と題し、健康情報学の専門家である京都大学大学院の中山健夫氏より、情報のやり取りが多面的となっている現代において、治療の意思決定に必要なShared Decision Makingによるヘルスコミュニケーションの概念の重要性をもとにした「エビデンス」の本質に加え、今後の健康・医療を取巻く情報のあり方についてご講演いただきました。
基調講演2
Garth Graham(YouTube ヘルスケア & パブリックヘルス ディレクター兼グローバルヘッド)
いまや数十億人規模で利用されるようになっている動画コンテンツYouTubeよりYouTubeヘルスケア&パブリックヘルス ディレクター兼グローバルヘッドのガース グラハム氏より、動画コンテンツの普及にともなうプラットフォーム運営会社としての課題や社会的責任、そして現在の取り組みについてもご紹介いただきました。
ディスカッション
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを踏まえ「正確な健康・医療情報」に関する課題を発信者、受信者それぞれの視点から、さらには発信者と受信者の間にある溝を埋めるべく効果的な解決策についても議論が行われました。加えて、情報の信頼性と妥当性というテーマのもと、健康・医療情報と向き合う個人の考え方や社会のあり方、そして医療情報の特徴といった根幹の部分にまで議論は及び、社会的課題としての健康・医療情報の本質を検討することができました。
■第2回会合:健康・医療情報のあるべき伝え方・受け取り方
基調講演
尾身 茂(公益財団法人 結核予防会 理事長)
新型コロナウイルス感染症拡大下における専門家としての立ち位置、国との対話と国民との対話のバランスなど実際のパンデミックのフェーズ毎に焦点をあててお話しいただきました。
ディスカッション
情報伝達の効果的な方法について、発信者が認識すべき健康・医療情報の特殊性や、情報発信における責任や注意点など、より具体的な方法が共有されました。なかでも、緊急時に正確な情報を迅速に発信することに対して、事前にメディアと国が協力体制を構築しておくことが今後必要になるなど、災害を始めとした危機的状況が多く発生する我が国ならではの議論があったことは特徴的でした。最後に、国民誰もが健康・医療情報に関わることが多い現代社会で、情報共創において求められる理念について議論が行われました。
全2回の議論を通して、健康・医療情報の在り方について、医学専門的な視点のみならず人間の本質を踏まえた上で検討すべき社会課題として議論することができました。会合での議論は、結論を出すことや課題解決に向けた提言を行うのではなく、多様な立場からの意見・視点を抽出・収集することを目的に行いました。本報告書もその考えに基づいて取りまとめていることから、今後、健康・医療情報について議論を行う際の参考としてぜひご活用ください。
【開催概要】
- 第1回会合日時:2023年7月21日(金)14:00-17:30
- 第2回会合日時:2023年10月25日(水)14:00-17:30
- 会場:グーグル合同会社オフィス内イベント会場(東京都渋谷区)
会合メンバー(敬称略、五十音順・ご所属・肩書はご参画当時)
青木 伊知男(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所 上席研究員)
天野 慎介(一般社団法人 全国がん患者団体連合会 理事長)
石川 ひろの(帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 教授)
市川 衛(メディカルジャーナリズム勉強会 代表)
猪又 竜(心臓病疾患 当事者/長野県ヘルプマークディレクター)
岩永 直子(医療記者 フリーランス)
大曲 貴夫(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長特任補佐/国際感染症センター長・同科長/感染症内科医長 併任)
小川 真里子(東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授)
尾身 茂(公益財団法人 結核予防会 理事長)
北中 淳子(慶應義塾大学 文学部 人文社会学科(人間関係系) 教授)
忽那 賢志(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授)
小林 圭吾(メンタルヘルス 当事者)
桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長)
澁谷 遊野(東京大学 空間情報科学研究センター 共同利用・共同研究部門 准教授)
宿野部 武志(一般社団法人ピーペック 代表理事)
鈴木 蘭美(モデルナ・ジャパン株式会社 代表取締役社長)
住田 朋久(慶應義塾大学大学院 社会学研究科 訪問研究員)
反田 篤志(マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー)
戸田 聡一郎(東北大学大学院 文学研究科 専門研究員)
仲條 亮子(グーグル合同会社 YouTube日本代表 マネジングディレクター)
中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 健康管理学講座健康情報学 教授)
古田 大輔(ジャーナリスト/日本ファクトチェックセンター編集長/メディコラボ代表)
松本 紹圭(産業僧/株式会社Interbeing 代表取締役/世界経済フォーラム Young Global Leader)
美代 賢吾(一般社団法人日本医療情報学会 理事・看護部会 部会長/国立研究開発法人国立国際医療研究センター医療情報基盤センター長)
本村 昌文(岡山大学 学術研究院ヘルスシステム統合科学学域 教授)
山田 恵子(埼玉県立大学 保健医療福祉学部 准教授/医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト(研究代表者))
吉村 健佑(千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センター長 特任教授/こびナビ幹事)
Garth Graham(YouTube ヘルスケア & パブリックヘルス ディレクター兼グローバルヘッド)
協賛企業・団体(五十音順)
グーグル合同会社
国立大学法人 政策研究大学院大学 グローバルヘルス・イノベーション政策プログラム
モデルナ・ジャパン株式会社
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