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【開催報告】超党派国会議員向け勉強会「薬剤耐性問題の喫緊課題~サイレント・パンデミックの脅威~」(2023年12月5日)

【開催報告】超党派国会議員向け勉強会「薬剤耐性問題の喫緊課題~サイレント・パンデミックの脅威~」(2023年12月5日)

日本医療政策機構は、世界保健機構(WHO: World Health Organization)などにより設立されたAMRグローバル・リーダーズ・グループと共催し、超党派国会議員向け勉強会「薬剤耐性問題の喫緊課題~サイレント・パンデミックの脅威~」を開催いたしました。今回は、国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター長の大曲貴夫氏と、GARDP ビジネスディベロップメント&パートナーエンゲージメント ディレクターのヤン・フェリス氏が講演を行い、薬剤耐性の喫緊の課題と国内外の最新動向をご説明いただきました。講演後にはご参加いただいた国会議員の方々より多くのご質問をいただき、活発な意見交換の場となりました。

趣旨

微生物に対して抗菌薬が効かなくなる、薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)は世界で猛威を振るっており、AMRが直接起因する世界の年間死亡者数は、2022年の時点で127万人と英医学紙上にて報告されました。近年では、AMRの拡大を「サイレント・パンデミック」や「コロナ禍の次に来る脅威」とも呼ばれています。一方、抗菌薬の新規開発は1980年代以降、世界的に停滞しており対策が急務です。

今回の勉強会では、感染症対策の専門家である大曲氏から、事例を踏まえた日本国内におけるAMRの現状と課題ついてお話いただきました。また、WHOなどにより発足した薬剤耐性菌感染症の新規治療薬を開発する非営利団体であるGARDPのフェリス氏からは、抗菌薬の研究開発の全体像と国際貢献の重要性についてお話をいただきました。

 

ポイント

  • 2023年11月18日(土)~11月24日(金)の1週間はWHOが定める世界抗菌薬啓発週間(WAAW: World Antimicrobial Awareness Week)であり、AMRグローバル・リーダーズ・グループでもAMRの様々な問題を世界に向けて重点的に発信している。
  • AMR対策ではいかに有効な抗菌薬を生み出し、適正に使用していくかが重要である。この目標を達成するためには、2023年に日本が議長国として取りまとめたG7保健大臣会合宣言や首脳宣言でも言及されているインセンティブ政策の強化やワンヘルスアプローチに基づくAMR対策の実現にも注力すべきである。
  • 2024年は国連総会(UNGA: United Nations General Assembly)がAMRに関する第2回ハイレベル会合を開催する。2016年の第1回に続き、あらゆる立場の国や地域、組織が集まる世界的な議論と交渉の場になると想定される。
  • 現在、AMRによる世界的な死亡者数はHIV/AIDs(Human Immunodeficiency Virus / Acquired Immuno Deficiency Syndrome)やマラリアの死亡者数より多く、AMR関連死亡者数を含めると年間で約495万人にものぼる。国内でも薬剤耐性菌は広がりを見せており、AMRによる国内の死亡者数は右肩上がりである。また、薬剤耐性菌は海外から輸入される場合もある。
  • 抗菌薬は様々な治療に使用されており、現代医療に抗菌薬は必要不可欠であるが、1990年以降、抗菌薬の新規開発が滞っている。同時に、適正使用の観点から抗菌薬の使用を制限する必要があるため、抗菌薬市場の構造的な課題に阻まれ、抗菌薬が新たに上市されないという問題がある。
  • 抗菌薬が長期的に持続可能な環境で使用されつづけるために、研究開発を支援するプッシュ型インセンティブのさらなる強化が必要である。薬剤耐性の領域では、前臨床及び初期臨床開発はCARB-Xによる資金提供が行われ、後期臨床開発はGARDPが技術支援を進めており、相補的で横断的かつ国際的な支援体制が構築されつつある。今後は支援体制の強化のみならず、既存の国際的な支援体制を日本企業等が効果的に活用できる仕組みも考慮した総合的な後押しが期待される。
  • 並行して、承認取得後に使用量(販売量)と売上げ(収益)を切り離すことで、抗菌薬の上市を支援するプル型インセンティブの創設を進めることが重要である。今年度から日本もプル型インセンティブとして抗菌薬確保支援事業を開始した。引き続きより効果的で大規模なプル型インセンティブを通じて、プッシュ型インセンティブや創薬エコシステムを補完し、抗菌薬市場の構造的な課題を克服することが期待される。
  • 日本は感染症領域では特にアクセスの視点から国際貢献を継続している。世界で約40年ぶりに開発された結核に対する治療薬や最も治療が困難な院内感染症の1つであるグラム陰性菌に対する治療薬等をGARDP等の世界の関係機関と連携しながら、低中所得国に治療薬を提供している。
  • 一方で、AMR対策に有効な治療薬を開発し、低中所得国を含めて全世界の人々の手元に届けるためには、まずは膨大な数の化合物(選択肢)から将来の薬の候補を見つけ出す必要がある。そのため、化合物の裾野の拡大や効率的な探索・評価の推進等、感染症に対する創薬支援が不可欠である。

 

【プログラム】(敬称略)

開会挨拶

塩崎 恭久(AMR グローバル・リーダーズ・グループ メンバー/元厚生労働大臣)

薬剤耐性問題の喫緊課題:
講演1「日本における現状と課題」

大曲 貴夫(国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター長)

講演2「GARDP(グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ)の取り組み」

ヤン・フェリス(GARDP ビジネスディベロップメント&パートナーエンゲージメント ディレクター)


質疑応答

 

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