【政策提言】「個人の年齢、職業、生活様式などのライフコースに沿ったワクチン・予防接種の活用強化に向けた提言」(2022年8月31日)
日付:2022年8月31日
タグ: 予防接種・ワクチン

日本医療政策機構は、「個人の年齢、職業、生活様式などのライフコースに沿ったワクチン・予防接種の活用強化に向けた提言」を公表しました。
当機構では、2021年6月に公表した政策提言 「ライフコースアプローチに基づいた予防接種・ワクチン政策 5つの視点と具体策」において重要な論点とされた、ライフコースに基づいた予防接種・ワクチン政策について、その必要性を共有する有志の専門家による議論を取りまとめ、今後求められる取り組みについて論点を整理しました。この提言を通じて、日本の予防接種・ワクチン政策が推進され、ワクチンによって防ぐことのできる疾患(VPD: Vaccine Preventable Diseases)から国民の健康と安全、さらには社会経済活動を守ることのできる体制の整備の構築のための議論が産官学民において広がり、具体的な対策が実践されることを期待しています。
■エグゼクティブサマリー
1. ワクチン(の接種率の向上)を通じて国家の健康を支える予防接種・ワクチン政策の強化
- アクセス
- 住んでいる自治体の予防接種政策や近隣医療機関の接種体制の違いによって予防接種・ワクチンへのアクセスが左右されない体制の構築
- アフォーダビリティ
- ワクチンの接種率向上に向けた、公費助成による自己負担の軽減
- 公費助成を検討する際の費用対効果の観点の必要性と、そのための評価体制の構築
- アウェアネス
- 疾患および予防接種情報に関する、ライフコースに合わせたわかりやすく効果的な情報提供体制の強化
- 年齢層ごとの主要な情報ソースを考慮した情報発信の強化
- アクセプタンス
- 予防接種・ワクチン政策や、そのリスクとベネフィットに関する国民の包括的な理解を醸成するための義務教育課程でのカリキュラム化
- ワクチンに対するベネフィットの礎となるVPDsの疾患そのものや疾病負荷に関する理解の醸成と、そのための情報発信の強化
- ワクチンの安全性と副反応、有害事象に対する救済制度等に関する適切な情報発信の強化
- アクティベーション
- ライフステージに合わせて、適切なタイミングで必要な情報を伝えるリマインダーの強化と自治体ごとの好事例の横展開
- 学校や職場など、所属する組織からの情報発信の促進
- 各ステークホルダーに求められる取り組み
- 被接種者を取り巻く多様なステークホルダー、社会が一体となり、情報格差のない意思決定環境の構築
- 定期接種・任意接種、A類・B類などの違いによる接種率への影響に関する分析と、最新のエビデンスに基づいた定期的な制度見直しの徹底
- 予防接種事業の責務を担う地方自治体の創意工夫を促す制度の構築
- メディアによる情報発信の影響の振り返りと今後のさらなる検討の深化
- 健康の専門家としての医療従事者に対する予防接種および予防接種に関わる患者とのコミュニケーションに関する教育の強化
- コロナ禍での予防接種・ワクチン接種体制に鑑みた、保健所・地方衛生研究所の活用やマルチステークホルダーの連携体制の強化
2. 個人のライフコースに沿った予防接種・ワクチン行政の推進
- ライフコースに沿った予防接種・ワクチン政策の推進に向けて
- ライフコースに沿った予防接種実施体制の強化
- 乳幼児・小児のワクチン接種の推進に向けた、保護者を取り巻く予防接種環境の強化
- 母子保健事業や学校保健事業と連携した予防接種促進の推進
- 有事における集団免疫の獲得に向けた小児のワクチン接種の重要性の発信の強化
- 比較的受診率の低い青年・成人層への効果的な情報発信
- 接種対象者に届く、国による強い勧奨の強化
- 副反応や有害事象に関する偏った情報発信に対する対応の検討
- 集団免疫を念頭に置いた、抗体検査と予防接種を両輪とした感染症対策の強化
- 高齢者の身近な医療・介護従事者を通した正確でわかりやすい情報発信の推進
- かかりつけ医や高齢者対象の健診などを通したわかりやすい啓発体制の強化
- 年齢だけではない、VPDsへの罹患やそれに伴うリスクなどに応じた接種勧奨の実施
■ワーキンググループ1「ライフコースアプローチ」メンバー(敬称略、五十音順、所属および肩書は全体討議時点)
ワーキンググループメンバー
- 阿真 京子(「子どもと医療」プロジェクト代表)
- 荒井 秀典(国立長寿医療研究センター 理事長/日本老年医学会 副理事長)
- 稲葉 可奈子(関東中央病院産婦人科 医長/みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表/コロワくんサポーターズ)
- 岩田 敏(国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 感染症部長/慶應義塾大学医学部 客員教授/予防接種推進専門協議会 委員長)
- 大石 和徳(富山県衛生研究所 所長/国立感染症研究所 名誉所員)
- 片倉 陽子(ファイザー株式会社 ポリシーアンドパブリックアフェアーズ部門 ポリシーアンドパブリックアフェアーズ部 部長)
- 永井 英明(独立行政法人 国立病院機構 東京病院 感染症科部長)
- 渡辺 大輔(愛知医科大学 皮膚科学講座 教授)
スペシャル・アドバイザー
- 武見 敬三(参議院議員/ワクチンを活用して疾病の予防、罹患率の減少を目指し、国民の健康増進を推進する議員の会(ワクチン予防議連) 会長)
- 古屋 範子(衆議院議員/ワクチンを活用して疾病の予防、罹患率の減少を目指し、国民の健康増進を推進する議員の会(ワクチン予防議連) 会長代理/衆議院 経済産業委員長)
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