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【プレスリリース】サイレントパンデミック薬剤耐性(AMR)にも対応できる感染症法・特措法を(2021年1月26日)

【プレスリリース】サイレントパンデミック薬剤耐性(AMR)にも対応できる感染症法・特措法を(2021年1月26日)

AMRアライアンス・ジャパン

 

報道関係者各位

サイレントパンデミック薬剤耐性(AMR)にも
対応できる感染症法・特措法を

AMRアライアンス・ジャパンは感染症法等の改正に向けた新しい提言を発表

AMRアライアンス・ジャパン(事務局:日本医療政策機構)は2021年1月26日に、国内の薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)に関する感染症法等の改正に対して提言を取りまとめました。

 

細菌(病原体)が、抗菌薬の使用に伴い変化し、抗菌薬の効果が小さくなることを薬剤耐性(AMR)といいます。毎年、世界中で少なくとも約 70 万人もの人が薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)菌感染症により死亡していると考えられています。このまま対策が取られなければ、2050 年には年間死亡者数は 1,000 万人にまで上昇するとの予測もあります。 

AMRは国民の安全上の深刻な脅威であるものの、国内の広がりの状況や最適な対応方法については知らないことがまだ多く存在します。多くのAMRは、その病原菌の菌種に依らず、発生メカニズム、感染症の拡大防止のために必要な対策、克服すべき課題等に共通点が多いことから、効果的な対策を進めるための一体的な取組みが必要となります。
AMRアライアンス・ジャパンは、AMR対策アクションプランにより進められてきた国内のAMR対策の推進を維持し、今後さらにAMR対策を強化するため、感染症法等を以下のように改正し、次期AMRアクションプランに加え「AMR感染症に関する特定感染症予防指針」を策定することを提言します。

  • 感染症法において、「薬剤耐性菌(AMR)感染症」を1つの感染症として規定すべきである。
  • 感染症法施行規則において、AMR感染症にかかる特定感染症予防指針の策定を規定すべきである。
  • 新型インフルエンザ等特措法においても、AMR感染症をその対象として規定すべきである。

 

この度の提言は、数か月をかけ当アライアンス内外の専門家に対しヒアリングを実施した成果物であり、感染症法等を改正すること目指しています。具体的な提言の内容は、以下全文、または末尾のPDFファイルにてご覧いただけます。 AMRアライアンス・ジャパンは今後も、国内のAMR対策がより強化されるよう貢献し、より多くの国民の命を守ることを目指します。

 

英語版を公開いたしました。(2021年2月5日)

【AMRアライアンス・ジャパンについて】
AMRアライアンス・ジャパンは、AMR対策の推進により公衆衛生を向上させることを目的として、国内感染症関連学会、医薬品・医療機器関連企業等が2018年11月に設立した、AMR対策をマルチステークホルダーで議論するための独立したプラットフォームです。構成メンバーは、日本化学療法学会、日本感染症学会、日本臨床微生物学会、日本環境感染学会、日本薬学会、日本医療薬学会、日本 TDM 学会、日本医真菌学会、日本小児感染症学会、MSD 株式会社、塩野義製薬株式会社、日本製薬工業協会、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、ファイザー株式会社、日本医師会、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、医療と子育て及び特定非営利活動法人日本医療政策機構(事務局)です(2020年12月末現在)。

 

 

 

 

 

 

【提言全文】

AMRアライアンス・ジャパン/日本医療政策機構

AMRアライアンス・ジャパン提言
感染症法等の改正に向けて

2021年1月26日

毎年、世界中で少なくとも約 70 万人もの人が薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)菌感染症により死亡していると考えられている。このまま対策が取られなければ、2050 年には年間死亡者数は 1,000 万人にまで上昇するとの予測もあり1、世界規模で AMR 対策が進められている。日本においては、「 薬剤耐性「(AMR)対策アクションプラン National Action Plan on Antimicrobial Resistance 2016 2020 2」(以下、AMR対策アクションプラン)のもと、政府関係者及び専門家の皆様の多大なる貢献により着実に対策が進められてきた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID 19」)の拡大に伴い、AMRを含む国内の様々な感染症対策は、見直しの状況下にあり、2021年1月現在、次期の AMR対策にかかる計画は確定していない。一方で、自由民主党政務調査会新型コロナウイルス関連肺炎対策本部感染症対策ガバナンス小委員会は、AMRを含む感染症対策のガバナンス体制の見直しに向け、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、「感染症法」)及び新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、「新型インフルエンザ等特措法」)を含めた関連法体系全体の改正を、遅くとも2021年の通常国会の早期に目指す旨の提言3を発表し、当該関連法の本年早期の改正が見込まれている。
多くのAMR感染症は、その病原菌の菌種に依らず、発生メカニズム、拡大防止のために必要な対策、克服すべき課題等に共通点が多いことから、効果的な対策を進めるための一体的な取組みが必要となる。AMRアライアンス・ジャパンは、AMR対策アクションプランにより進められてきた国内のAMR対策の推進を維持し、今後さらにAMR対策を強化するため、感染症法等を以下のように改正し、次期AMRアクションプランに加え「AMR感染症に関する特定感染症予防指針」を策定することを提言する。

感染症法において、「 薬剤耐性菌(AMR)感染症」を1つの感染症として規定すべきである。
多くのAMR感染症は、その病原菌の菌種に依らず、発生メカニズム、拡大防止のために必要な対策、克服すべき課題等に共通点が多い。したがって、効果的な対策を進めるためには、国内におけるAMR感染症の正確な現状把握に基づく系統だった取組みを行う必要があることから、以下の病原菌に起因する感染症を感染症法上1つの「 薬剤耐性菌「(AMR)感染症」として規定し、必要な対策を講じるべきである。なお、必要な対策については、発生頻度や医療現場の状況等を踏まえ、検討すべきである。

  • 結核(多剤耐性結核菌・超多剤耐性結核菌)
  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
  • カルバペネム耐性腸内細菌目細菌
  • 第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌
  • バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌
  • バンコマイシン耐性腸球菌
  • ペニシリン耐性肺炎球菌
  • 多剤耐性アシネトバクター
  • 多剤耐性緑膿菌
  • カンジダ・アウリス
  • 薬剤耐性淋菌
  • 非結核抗酸菌
  • クロストリディオイデス・ディフィシル
  • 薬剤耐性マイコプラズマ・ジェニタリウム
  • 薬剤耐性カンジダ
  • アゾール耐性アスペルギルス・フミガタス
  • 薬剤耐性ヘリコバクター・ピロリ
  • 多剤耐性バクテロイデス・フラジリス
  • 薬剤耐性カンピロバクター
  • 薬剤耐性サルモネラ
  • キノロン耐性赤痢菌
  • βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌
  • 薬剤耐性A群連鎖球菌
  • 薬剤耐性B群連鎖球菌 等

感染症法上の分類については、AMR感染症の感染経路、保菌者の扱い等を踏まえ定義するべきである。また、AMR感染症の正確な現状把握のために必要な情報(報告すべき項目「(AMR感染症患者の病原体情報、使用した抗菌薬、アウトカム等)及び期間)については、専門家による詳細な検討が求められるとともに、情報の収集方法については、COVID-19 対策として整備された新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS:Health Center Real-time information-sharing System on COVID-19)の有効な活用を検討すべきである。

感染症法施行規則において、AMR感染症にかかる特定感染症予防指針の策定を規定すべきである。
AMR対策にかかる5~10年の中長期的な計画においては、国内政策の推進を維持する上で基本的な指針が必要である。したがって、感染症法第十一条(特定感染症予防指針)に基づき、感染症法施行規則において当該指針の策定を規定し、AMR対策アクションプランを参考に「AMR感染症に関する特定感染症予防指針」を作成すべきである。当該指針の内容としては、以下を盛り込むべきである。

  • 抗菌薬の適正使用の推進

➢適切な「成果指標」の設定

・抗菌薬の「適正使用」を推進するための目標設定は、医療現場の現状を踏まえることが重要である。成果指標(数値目標)は、抗菌薬の画一的かつ過剰な使用抑制(適正な使用の抑制)に繋がらないような適切な数値を検討すべきであり、そのためには、地域、疾患等を特定した上で、既存のデータベースもしくは医療機関に対するアンケート等を利用して設定する方法が考えられる。

➢「感染対策実施体制」の評価

・「感染症専門医による診断と治療のアドバイスを提供できる体制」を、診療報酬を含む適切な方法にて評価すべきである。
・「(AMR拡大防止のための)PCR(polymerase chain reaction)法を用いた積極的な耐性菌スクリーニング検査、及び(AMR発生防止のための)迅速微生物同定・感受性検査を提供できる体制」を、診療報酬を含む適切な方法にて評価すべきである。
・新たに規定する薬剤耐性菌(AMR)感染症に関連する情報(抗菌薬の使用状況、耐性菌の検出状況、感染者の発生状況、感染対策に関わる情報等)を医療現場の負担なく収集できる体制を整備するべきである。

➢「専門的人材」の育成

・上記に掲げた「感染対策実施体制」を構築するために必要な感染症専門医や認定臨床微生物検査技師等、関連する多職種の人材を育成し、診療報酬を含む適切な方法にて評価すべきである。
・TDM(Therapeutic Drug Monitoring)を含む薬物動態学・薬物動力学の活用・実施や抗菌薬適正使用支援の中心的役割を担う専門・認定資格を有する薬剤師の人材を育成し、診療報酬を含む適切な方法にて評価すべきである。

  • 抗菌薬事業を持続的に支える「インセンティブ」の整備

➢現在、産官学民の有識者が、プッシュ型のインセンティブに加えて、国内で実装可能な「プル型のインセンティブ・モデル」の検討を進めている4。開発促進策の検討・実施にあたっては当該報告書を参考にすべきである。

➢また、AMR治療薬の「適正な薬価施策」も検討すべきである。

  • 抗菌薬の「安定的な供給」の担保

➢2020年9月、厚生労働省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」が、抗菌薬を含む医療用医薬品の安定確保策を取りまとめた。具体策については当会議の報告書(取りまとめ)5等を参考にすべきである。

新型インフルエンザ等特措法においても、AMR感染症をその対象として規定すべきである。
AMR感染症、特に、結核(多剤耐性結核菌・超多剤耐性結核菌)、薬剤耐性淋菌等に起因する感染症については、新型インフルエンザ等特措法に基づく緊急事態措置に準じた措置が必要となる可能性がある。したがって、新型インフルエンザ等特措法第二条(定義)にAMR感染症を規定することを検討すべきである。

以上

1 O’Neill, J. “Review on Antimicrobial Resistance. Tackling Drug Resistant Infections Globally: Final Report an d Recommendations.” Recommendations.”,
https://www.biomerieuxconnection.com/wp-content/uploads/2018/04/Tackling-Drug-Resistant-Infections-Globally_-Final-Report-and-Recommendations.pdf(最終閲覧日2021年1月25日)

2 薬剤耐性( AMR )対策アクションプラン National Action Plan on Antimicrobial Resistance 2016 2020 、
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf (最終閲覧日2020年12月18日)

3 新型コロナウイルス関連肺炎対策本部感染症対策ガバナンス小委員会 提言 、
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200661_1.pdf(最終閲覧日2020年
12月18日)

4 第7回日経・ FT 感染症会議 「横浜感染症ステートメント 2020 」、
https://adweb.nikkei.co.jp/kansensho2020/7thnfc_statement2020_ja.pdf(最終閲覧日2020年12月18日)

5 医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 取りまとめ、
https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/000676422.pdf(最終閲覧日2020年12月18日)

 

■AMRアライアンス・ジャパン 事務局(事務局:日本医療政策機構)
https://www.amralliancejapan.org/
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ3 階
Tel: 03-4243-7156 Fax: 03-4243-7378
E-mail: info@hgpi.org(担当:McEnany、柴田、坊野、河野、近藤、粟野)

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