「アルコールの有害な使用をめぐる様々な問題とその対策」議員勉強会開催報告
日付:2012年10月25日

日本医療政策機構は2012年10月25日(木)、参議院議員会館にて「超党派コングレッショナル・ブリーフィング(議員勉強会)」を開催いたしました。
わが国でも超党派議員連盟が中心となり「アルコール健康障害対策基本法案(仮称)」の制定に向けた動きが活発になっている中、本勉強会では、アルコールの有害な使用をめぐる様々な問題とその対策について、中谷元氏(アルコール問題議員連盟会長代行)による開会の辞に続き、カール・マン氏(ドイツ、ハイデルベルグ大学教授)、樋口進氏(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長 / 国際アルコール医学生物学会 次期理事長)により、それぞれの立場から世界レベルでのアルコール関連問題の現状と課題、対策のために必要な政策についてお話を伺いました。
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アルコール依存症は慢性の脳疾患である
国際アルコール医学生物学会(ISBRA)の前理事長であり、アルコール関連障害分野において世界で3番目に多作な執筆者として知られる、カール・マン氏は、アルコール依存症とは、アルコール摂取による問題が起こっているにも関わらず、アルコールの強迫的摂取をやめることができない慢性の脳疾患であり、その発症には遺伝や環境的要因が複合的に関与している、と指摘しました。
ヨーロッパのアルコール依存症による負担とその軽減に向けた対策
続いて、世界で最も飲酒量が多いEUでは、アルコールに関する総社会費用(*1) (2010年)が155.8 billionユーロ(約1.5兆円(2012年9月末日レート))であることを紹介し、アルコール使用障害は、ヨーロッパンにおいて負担・費用の大きい脳疾患であるにも関わらず、その治療・予防に対する費用の割合が少ないことを指摘しました。最後に、アルコール対策と有効性に関するWHOのエビデンス(2012)や、N.I.C.E.(*2) のガイドラインや勧告を紹介し、患者自身、家族、職場、社会全体の負担を軽減するために、ヨーロッパにおけるアルコール依存症についての認識及び治療の向上が必要だとしました。
日本における飲酒実態
アルコール関連問題の予防と治療に、臨床、研究の両面より携わってきた、樋口進氏は、日本では、若年女性の飲酒者割合が増加傾向にあり、口腔・咽頭・食道がん等のアルコールに関連した慢性疾患死亡率が増加していることを指摘しました。また、2012年に発表された厚生労働科学研究によると、アルコールの社会的コストの推計が、約4兆円と示され、酒税総額の約3倍の社会的損失があることを指摘しました。
今後、日本で求められるアルコール政策
続いて、WHOで2010年5月に採択された、「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を紹介し、アルコール対策へのコミットの向上や、低リスク・高リスク飲酒に関する啓発の推進等、日本で求められる対策を提案しました。特に、「アルコール問題対策への有効性が示されている、カウンセリング等を通じた簡易介入が保険診療に組み込まれることが必要」と述べました。
「アルコール健康障害対策基本法案」の制定に向けて
勉強会の出席議員や関連団体の方々からは、今回の勉強会を経て、「アルコール健康障害問題対策基本法案(仮称)」の成立に向けて、継続的に超党派での活動を続けていくことを確認し、勉強会を閉会しました。
*1 社会費用とは、社会が負担する費用であり、飲酒者だけに生じる飲酒代等の費用ではなく、飲酒により生じるすべての費用と定義される。
*2 N.I.C.E. (National Institute for Health and Clinical Excellence)は、英国の国営の保健制度NHS(National Health Service)の一施設として設立され、医療の質と安全性の向上のために国レベルでの診療の指針を示し、標準化を目指している。
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「アルコールの有害な使用をめぐる様々な問題とその対策」議員勉強会
■テーマ
「アルコールの有害な使用をめぐる様々な問題とその対策」
■スピーカー
・カール・マン 氏(ドイツ ハイデルベルグ大学 教授)
・樋口 進 氏(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 院長 /国際アルコール医学生物学会 次期理事長)
■日時
2012年10月25日(木)11:00-12:00
■場所
参議院議員会館
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わが国でも超党派議員連盟が中心となり「アルコール健康障害対策基本法案(仮称)」の制定に向けた動きが活発になっている中、本勉強会では、アルコールの有害な使用をめぐる様々な問題とその対策について、中谷元氏(アルコール問題議員連盟会長代行)による開会の辞に続き、カール・マン氏(ドイツ、ハイデルベルグ大学教授)、樋口進氏(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長 / 国際アルコール医学生物学会 次期理事長)により、それぞれの立場から世界レベルでのアルコール関連問題の現状と課題、対策のために必要な政策についてお話を伺いました。
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アルコール依存症は慢性の脳疾患である
国際アルコール医学生物学会(ISBRA)の前理事長であり、アルコール関連障害分野において世界で3番目に多作な執筆者として知られる、カール・マン氏は、アルコール依存症とは、アルコール摂取による問題が起こっているにも関わらず、アルコールの強迫的摂取をやめることができない慢性の脳疾患であり、その発症には遺伝や環境的要因が複合的に関与している、と指摘しました。
ヨーロッパのアルコール依存症による負担とその軽減に向けた対策
続いて、世界で最も飲酒量が多いEUでは、アルコールに関する総社会費用(*1) (2010年)が155.8 billionユーロ(約1.5兆円(2012年9月末日レート))であることを紹介し、アルコール使用障害は、ヨーロッパンにおいて負担・費用の大きい脳疾患であるにも関わらず、その治療・予防に対する費用の割合が少ないことを指摘しました。最後に、アルコール対策と有効性に関するWHOのエビデンス(2012)や、N.I.C.E.(*2) のガイドラインや勧告を紹介し、患者自身、家族、職場、社会全体の負担を軽減するために、ヨーロッパにおけるアルコール依存症についての認識及び治療の向上が必要だとしました。
日本における飲酒実態
アルコール関連問題の予防と治療に、臨床、研究の両面より携わってきた、樋口進氏は、日本では、若年女性の飲酒者割合が増加傾向にあり、口腔・咽頭・食道がん等のアルコールに関連した慢性疾患死亡率が増加していることを指摘しました。また、2012年に発表された厚生労働科学研究によると、アルコールの社会的コストの推計が、約4兆円と示され、酒税総額の約3倍の社会的損失があることを指摘しました。
今後、日本で求められるアルコール政策
続いて、WHOで2010年5月に採択された、「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を紹介し、アルコール対策へのコミットの向上や、低リスク・高リスク飲酒に関する啓発の推進等、日本で求められる対策を提案しました。特に、「アルコール問題対策への有効性が示されている、カウンセリング等を通じた簡易介入が保険診療に組み込まれることが必要」と述べました。
「アルコール健康障害対策基本法案」の制定に向けて
勉強会の出席議員や関連団体の方々からは、今回の勉強会を経て、「アルコール健康障害問題対策基本法案(仮称)」の成立に向けて、継続的に超党派での活動を続けていくことを確認し、勉強会を閉会しました。
*1 社会費用とは、社会が負担する費用であり、飲酒者だけに生じる飲酒代等の費用ではなく、飲酒により生じるすべての費用と定義される。
*2 N.I.C.E. (National Institute for Health and Clinical Excellence)は、英国の国営の保健制度NHS(National Health Service)の一施設として設立され、医療の質と安全性の向上のために国レベルでの診療の指針を示し、標準化を目指している。
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「アルコールの有害な使用をめぐる様々な問題とその対策」議員勉強会
■テーマ
「アルコールの有害な使用をめぐる様々な問題とその対策」
■スピーカー
・カール・マン 氏(ドイツ ハイデルベルグ大学 教授)
・樋口 進 氏(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 院長 /国際アルコール医学生物学会 次期理事長)
■日時
2012年10月25日(木)11:00-12:00
■場所
参議院議員会館
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開催日:2012-10-25
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