【参加報告】国連ユニバーサル・ヘルス・カバレッジハイレベル会合にて政治宣言が承認される(2019年9月23日)
日付:2019年10月11日
2019年9月23日、第74回国連総会で国連ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)ハイレベル会合が開催されました。本会合は「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:より健康な世界を構築するために共に動く(Universal Health Coverage: Moving Together to Build a Healthier World)」をテーマに掲げ、UHC政治宣言(UHC Political Declaration)が国連加盟国により承認(Approval)*されました。また、国連総会に合わせてUHCに関する取り組みの進捗を測定する「グローバル・モニタリング・レポート2019(2019 Global Monitoring Report)」、そしてグローバルヘルスに関連する国際機関の連携をより効果的・効率的にするための「健康な生活とすべての人々の幸福のためのグローバル行動計画(Global Action Plan for Healthy Lives and Well-being for All)」が公表されました。
■UHC政治宣言(UHC Political Declaration)
UHCは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを目指しており、2030年までに達成すべき持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)にも含まれています。
UHC政治宣言では、保健財政の強化、プライマリー・ヘルス・ケア(PHC)の推進、薬剤耐性(AMR)・メンタルヘルスを含む感染症・非感染性疾患(NCD)対策、水・衛生や栄養の改善、保健教育の推進、保健人材の育成等、多岐にわたるテーマが盛り込まれました。特にNCDにおいては、危険因子の影響を最小限に抑えることを目的とした適切な財政措置を含む政策の立法、規制措置の推進と実施、そして国の政策に沿った健康的な食事とライフスタイルの促進の重要性について言及がなされました。
本会合には、安倍 晋三総理大臣、ムハンマド=バンデ国連総会議長、テドロス・アダノムWHO事務局長、メリンダ・ゲイツBill & Melinda Gates財団共同議長等が出席しました。安倍総理大臣は、「日本が1961年に国民皆保険制度を導入し、UHCを達成したことが、日本の社会経済発展、健康長寿の達成を支えてきたこと、日本はこの経験に根ざし、世界の人々にUHCの重要性を広く訴えてきたこと」について言及するとともに、「本年開催したG20大阪サミット及びアフリカ開発会議(TICAD7)においては、UHCを議題の一つとして取り上げ」たことを紹介し、保健に加え、栄養、水・衛生等分野横断的取組の促進、保健財政の強化の重要性について強調されました。
本会合と同時に開催されたマルチステークホルダーによるサイドイベントでは、アントニオ・グテーレス国連事務総長、デイビット・マルパス世界銀行総裁をはじめとした国際機関の代表が登壇するとともに、オックスファムやUHC2030をはじめとした世界各国からの市民団体も参加し、パネル1「すべての人々の公平性、包摂的発展、繁栄の原動力としてのUHC(UHC as a Driver of Equity, Inclusive Development and Prosperity for All)」およびパネル2「UHCを達成するためのマルチセクターおよびマルチステークホルダーの行動と投資の加速(Accelerating Multi-Sectoral and Multi-Stakeholder Action and Investments for Achieving UHC)」が開催されました。パネル2に登壇した世界保健機関UHC親善大使でもある武見 敬三参議院議員は、「日本が長年にわたり外交的な課題として掲げてきているUHCを達成する上で、この政治宣言をきっかけとして、人々の健康を最終的な目標にしたうえでのUHC達成の重要性」について言及されていました。
今後は、第75回国連総会(2020~2021年)において国連事務総長からUHC達成に向けた進捗報告を国連総会で実施するとともに、本政治宣言を各国で実行していくための推奨を第77回国連総会(2022~2023年)において示すということが各国の首脳・リーダーから要望されました。また、第78回国連総会(2023~2024年)では、第2回目のUHCハイレベル会合を開催し進捗を確認することが合意されました。
■グローバル・モニタリング・レポート2019(2019 Global Monitoring Report)
「グローバル・モニタリング・レポート2019(2019 Global Monitoring Report)」がWHO、国連児童基金(UNICEF: United Nations Children’s Fund)、世界銀行、国連人口基金(UNFPA: United Nations Population Fund)、そして経済協力開発機構(OECD: Organisation for Economic Co-operation and Development)により発表されました。本レポートでは、SDG3における健康に関連した項目を測定するためのトレーサー指標を用いた進捗の報告とデータ提出および整備、そしてNCD対策等について分析上の課題が提起されました。
■健康な生活とすべての人々の幸福のためのグローバル行動計画(Global Action Plan for Healthy Lives and Well-being for All)
「健康な生活とすべての人々の幸福のためのグローバル行動計画(Global Action Plan for Healthy Lives and Well-being for All)」が、グローバルヘルス分野の12の国際機関(Gavi、Global Fund、GFF、UNAIDS、UNDP、 UNFPA、UNICEF、Unitaid、UN Women、WFP、WHO、世界銀行)によって公表されました。このグローバル行動計画は、健康に関連したSDGs進展を効果的かつ効率的に加速するために各国を支援するための取り組みで、新たに以下の7つのアクセレレーターが設定され、国レベル、および地域レベルにおける取組の方向性が定められました。
- プライマリ・ヘルスケア(Primary Health Care)
- 持続可能な保健のための財政(Sustainable Financing for Health)
- コミュニティ及び市民社会との関与(Community and Civil Society Engagement)
- 健康の決定要因(Determinants of Health)
- 脆弱な地域における革新的なプログラミング及び感染症流行への対策(Innovative Programming in Fragile and Vulnerable States and for Disease Outbreak Response)
- 研究開発・イノベーション・アクセス(Research and Development, Innovation and Access)
- データとデジタル・ヘルス(Data and Digital Health)
*訂正:9月23日に承認(Approval)され、10月10日の国連総会にて採択(Adoption)された
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