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【開催報告】第45回特別朝食会「活力ある日本の復活に向けて~成育基本法と切れ目のない子育て支援~」(2019年12月20日)

【開催報告】第45回特別朝食会「活力ある日本の復活に向けて~成育基本法と切れ目のない子育て支援~」(2019年12月20日)

この度、参議院議員・小児科専門医 自見はなこ氏をお招きし、第45回特別朝食会を開催いたしました。自見氏にはわが国の母子保健政策における現状を踏まえ、2018年12月に成立した成育基本法を通して実現しようとしている子どもを中心とした母子保健政策のあるべき姿についてお話いただきました。

 

■ 子どもを中心とした母子保健政策の必要性
1948年に成立した児童福祉法は、戦後の戦争孤児の増加を背景に、安全かつ衛生状態の整った環境で子どもの命を守ることを目的とし、子どもは児童福祉の対象として位置付けられていた。成立以降、児童福祉法の理念規定は見直されておらず、子どもが権利の主体であることが明確でないといった課題が長期にわたって指摘されていた。2016年、児童福祉法の一部改正によって法体系が大きく変化し、理念規定である第1条に子どもの権利が明確化された。これは我が国の母子保健領域における長年の課題であった、当事者たる子どもの権利の明確化を実現する大改革であった。現在、議論が進められている全世代型社会保障改革においても、子ども、つまりは子どもを産み育てやすい環境づくりが中心にあるべきであると考えている。

 

■ 成育基本法の成立と切れ目のない子育て支援の実現に向けて
成育基本法の成立に向けた活動は、約25年前から日本小児科医会、日本産婦人科医会の医師らによる、「子どもを中心とした妊娠期からの切れ目のない支援をわが国で実現したいという思い」から始まった。その後、日本医師会が検討委員会を設置し、2012年8月には性教育を含む生命・健康教育、子育て環境の支援体制の構築、母子健康健診と保健指導の充実等の7つの項目の答申を出した。この答申を受けて自民党内では3年間にわたって議論を重ね、成育基本法の成立に向けた検討がなされた。2018年5月には超党派議連が設立され、児童虐待による悲しい事件や10代の思いがけない妊娠の増加、中絶件数が16万件にも上るといった現状も議論を後押しし、2018年12月8日に成育基本法が成立した。

成育基本法は、子どもやその保護者、妊産婦に必要な成育医療等を切れ目なく提供することを目的に、児童福祉法、母子保健法、健やか親子21、児童虐待防止等の政策を横断的に繋げている法律である。基本的施策として、①子ども・妊産婦の医療、②子ども・妊産婦の保健、③性教育を含む成育過程における心身の健康等に関する教育・普及啓発、④予防接種等に関する記録の収集等の体制整備、⑤子どもの死亡の原因に関する情報の収集(CDR: Child Death Review)等に関する体制整備、⑥調査研究を挙げた。これら基本施策については、厚生労働省内に医療従事者・関係者・当事者からなる協議会を設置し、基本計画の検討、決定事項の閣議決定、最低6年ごとの計画の見直しという評価・公表プロセスを規定した。

さらに、地方自治体レベルにおいてもCDRの実施状況から各自治体の子どもに関連する施策への実行力を測る尺度として活用したいと考えている。各種施策を実行するにあたり、地域の職能団体との連携強化が求められるが、CDRを各利害関係者との合意形成のプロセスにも活用し、地方自治体の施策充実に向けたツールとなることを期待している。

子どもを取り巻く課題への支援は、内閣府、厚生労働省、文部科学省が協働して取り組むべきにもかかわらず、その実施体制は省庁毎に分断される傾向にある。切れ目のない子育て支援を総合的に推進するために子ども家庭庁を創設し、三位一体で進めていきたいと考えている。

 

 

■今後進められていく関連施策

性教育
わが国の低用量ピルの服用率が先進国の中でも極めて少ないことからも明らかであるが、世界から大幅な遅れをとっている性教育やリプロダクティブヘルスに関する政策の推進は喫緊の課題である。女性が自分の健康を守り、そして自分自身が次世代の命を育むという自覚を得る機会は平等に担保されるべきであると考える。東京都教育委員会と東京都医師会が実施している性教育のパイロットプログラムの調査では、産婦人科医や助産師といった専門家が外部講師として実施する性教育に有益性が認められるという結果が得られた。現在、専門家の外部講師派遣が都内全域で活用される仕組みづくりを文部科学省と厚生労働省で協働して実施している。

難聴対策
難聴対策は、福祉と医療の領域を横断して取り組む必要がある。現在、難聴対策推進議員連盟を設立し、全ての子どもたちにスクリーニングの機会を与え、聴覚障害を早期発見し、療育・教育に結びつけるための活動を行っている。子どもの権利を重視し、子どもを中心に捉えた活動が必要であるが、それと共に医療と教育、療育、福祉を同じ議論のテーブルに乗せることが重要である。これこそがまさに成育基本法の具現化の1つの例である。

産後ケア事業
これまで、産後ケア事業の受給対象者は産後4か月までの母子であったが、母子保健法の改正を経て、産後1年までとした。さらに、各市町村について産後ケア事業の実施の努力義務を規定した。これにより、虐待のハイリスク家庭を把握し、適切な支援の実施につなげられるため、少子化対策の最優先事項として取り組む必要があると考えている。地域の産婦人科医、小児科医、助産師、保健師のチームが日本を変えていくことができると強く思っている。

わが国の社会や政治の中で、女性や子どもの声は最も届いていない声である。政治家として、これら成育基本法に基づく諸施策を推進し、妊娠期から成人まで切れ目のないサポートを通じて、母子愛着形成を支援し、子どもにとって暮らしやすく、また子どもを産み育てやすい日本社会の実現を目指したい。

講演後の会場との質疑応答では、活発な意見交換が行われました。

 

(写真:井澤一憲)


■プロフィール
自見はなこ 氏(参議院議員)
長崎県佐世保市生まれ。1998 年筑波大学第三学群国際関係学類卒業、2004 年3 月東海大学医学部医学卒業。小児科専門医。日本医師連盟・日本小児科医連盟参与、東海大学医学部医学科客員准教授。東京大学医学部付属病院小児科、青梅市立総合病院小児科、虎の門病院小児科等での勤務を経て、2016 年参議院議員選挙比例区(全国区)より初当選。参議院厚生労働委員会理事、自民党政務調査会厚生労働部会副部会長、自民党女性局長代理等を務め、2019 年9 月より厚生労働大臣政務官。


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