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【開催報告】第40回特別朝食会「2040年を展望した社会保障の課題と医療・介護の当面の焦点」鈴木俊彦氏(2018年5月21日)

【開催報告】第40回特別朝食会「2040年を展望した社会保障の課題と医療・介護の当面の焦点」鈴木俊彦氏(2018年5月21日)

厚生労働省保険局長である鈴木俊彦氏をお招きし、特別朝食会を開催いたしました。

 

 

 

 



■ 講演の概要

1.2040年に向けた社会保障改革

2019年10月に消費税増税が予定されており、これが予定通り実現されれば2025年に向けた社会保障改革の進展に向けた1つの節目となる。今後は2025年の先、2040年に向けた社会保障の在り方を考えることが求められる。

2040年に向けて、最も変化するのが人口である。2025年以降2040年にかけては高齢者人口の増加が緩やかになる。医療費および介護費増加の要因として高齢者人口の増加が考えられてきたが、2040年以降は、人口要因は医療費については減要因となり、介護費も高齢化による増は逓減する。一方で、生産年齢人口の減少が急加速することで、医療・介護サービスの担い手の不足が大きな課題となる。今後、国を挙げてその対策をあらゆる力を尽くして実行する必要がある。

2040年までの中長期的な視点で我が国の社会保障を展望すると、社会保障の持続可能性の確保に向けた給付と負担の見直しに加えて新たな課題が見えてくる。1つは、「健康寿命の延伸」によって社会の活力を維持することである。もう1つは、「生産性向上」によって限られた労働力の中でも医療・介護サービスを確保することである。


「健康寿命の延伸」

健康格差の解消などの取組によって、2040年までに健康寿命を3年以上延伸、平均寿命との差の縮小を目指していく。重点取組分野を設定し、「健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進」と「地域間格差の解消」の2つのアプローチによって格差の解消を進めていく。

健康寿命の延伸によるメリットは大きく以下の3点
・身体的にも精神的にも健康な住民の増加による、自治体の保険財政負担が軽減
・健康な高齢者が就業することによる、医療・介護費の軽減
・就労者の増加により、我が国の税収増加が見込め経済成長が期待できる

予防・健康づくりの課題
・疾病予防・重症化防止の対応
・高齢者の生活機能低下への対応(フレイル対策)
・生活習慣病対策・フレイル対策と介護予防の一体的対応に向けた法整備


「生産性の向上」

生産年齢人口の急減の中、需要の増加が続く医療・介護サービスを維持するため、生産性向上によるサービス供給量の確保が必要である。そのためには「タスクシフティング」「テクノロジーの活用」「マネジメント改革」の3点が重要なポイントとなる。

特にテクノロジーの進化には大いに期待している。人でなければできない仕事と、機械に任せることのできる仕事を区分することで、限られた労働力の中で、質の向上にも取り組むことができるのではないか。

 

2.社会保障の給付と負担

日本は高齢化が進んでいる割に、対GDP比の社会支出の割合は他国に比べて低く抑えられている。
全世代型社会保障の実現においては、世代間で奪い合いのではなく、高齢者の生活保障を確保した上で、今後の負担増で生じる財源はすべて子どもを中心とした若年世代に振り向けていくのが良いのではないか。

国民の生活保障の水準は、どの国も公的負担と私的負担の総和によって成り立っている。その中で公と私のバランスは国によって異なる。日本は、公平を重んじる国民性でもあるので、なるべく公的負担によって、誰しもが平等な社会保障を受けられる状態が望ましい、国民はと考えているのではないか。

我が国の国民負担率の推移と内訳を見れば、社会保障負担はそれなりに増加しているのに対して、租税負担はほとんど増えていない。租税負担の在り方など、消費増税10%後の絵姿を早い段階から議論をする場を作っていくことが重要である。


会場との質疑応答では、今回発表された骨太の方針の具体的な内容についてのコメントや、医療の目指すべき方向性についてなど、活発な議論が行われました。


■ 鈴木 俊彦 氏

厚生労働省保険局長。愛知県出身。東大法学部卒、1983年厚生省(現厚生労働省)入省。保険局、大臣官房、年金局、京都府高齢化対策課長、保険局老人医療企画室長、内閣総理大臣官邸、大臣官房参事官、健康局総務課長、大臣官房会計課長、大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭、少子化対策担当)、2014年社会・援護局長、2015年 年金局長を経て、2017年より現職。

 

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