【開催報告】超党派国会議員向け医療政策勉強会「30分で伝える医療政策最前線:肥満症を取り巻く課題と必要とされる対策」(2024年2月2日)
日本医療政策機構は、2022年から「肥満症対策推進プロジェクト」を始動し、この度は超党派国会議員向け勉強会「30分で伝える医療政策最前線:肥満症を取り巻く課題と必要とされる対策」を開催いたしました。
今回は、日本肥満学会 理事長/千葉大学 医学部附属病院長の横手幸太郎氏が講演を行い、パンデミックとしての肥満と肥満症、その現状と対策についてご説明いただきました。
■ポイント
肥満と肥満症の考え方
- 18歳以上の国別Body Mass Index (BMI) [1]値を1985年と2017年で比較すると、日本は多くないものの世界中で肥満が増えている。BMIとは体格指数のことで脂肪の蓄積を簡易的に見ることができる。BMIと病気の数には関連があり、BMIの低いやせすぎもBMIの高い肥満も良くなく、BMI22がもっとも病気の少ない健康な体格といえる。
- 「肥満」の定義は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI25以上のものと肥満診療ガイドライン2022に示されている。また、BMI25以上で糖尿病、高血圧などの健康障害ありの状態を「肥満症」といい、BMI35以上を高度肥満という。肥満症は医学的に治療が必要となる。
- 男性では内臓(脂肪)型肥満が多い一方で、女性では閉経後に内臓(脂肪)型肥満が増え、若年女性では皮下(脂肪)型肥満が多い。内臓脂肪蓄積の問題点として、内臓脂肪が蓄積されると脂肪細胞から糖尿病や動脈硬化を促進する悪玉ホルモンの分泌が増え、それらを防ぐ善玉ホルモンの減ることが挙げられる。
肥満症の治療と注意点
- 肥満症治療の考え方は、食事療法によって摂取エネルギーを減らし、運動療法によって消費エネルギーを増やすこと、行動療法に加えて、必要に応じて外科療法、薬物療法の5本柱を多職種連携によるチーム医療で行う。
- 食事療法、運動療法のみでは減量できない高度肥満症には腹腔鏡を用いたスリーブ状胃切除術等の外科手術が減量効果的である。日本でも2015年に保険収載された。
- 肥満症や肥満に対する薬が新たに承認されている。2024年には肥満症の予防薬も、適応を満たした対象に対して、市販薬として販売される予定である。一方で、減量効果を有する2型糖尿病や肥満症の治療薬が、近年審美的な目的で適応外使用され、問題となっている。
- 肥満対策には性別、年齢に配慮が必要な場合がある。BMI18.5 未満のやせがとくに若年女性の間で増えているのは問題である。無理な減量より筋肉量の維持や増量を心がけたい高齢者も注意が必要である。
- 肥満症治療では医学的にやせるべき人を抽出し、適切に治療と予防を行うことが重要である。肥満症治療の目標は肥満・肥満症をもつ個人の生活の質(Quality of life: QOL)の改善である。その目標に向かって、食事療法、運動療法などの治療で減量し健康障害・健康障害リスクの改善を図る。また、スティグマの解消、正しい知識の普及などに社会で包括的に取り組む必要がある。
【プログラム】(敬称略)
趣旨説明/肥満症 政策提言の紹介
吉村 英里(日本医療政策機構 シニアマネージャー)
講演「肥満症を取り巻く課題と必要とされる対策」
横手 幸太郎(日本肥満学会 理事長/千葉大学 医学部附属病院長)
質疑応答
会場の様子
[1] BMI=体重(kg)/身長(m)2
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