【開催報告】定例朝食会特別編 ヘルステクノロジー政策アクションシリーズ第4回「患者・国民を中心とした保健医療情報のあり方」(2016年12月16日)
日付:2016年12月16日
本朝食会では慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 宮田裕章氏をお招きし、「患者・国民を中心とした保健医療情報のあり方」をテーマとしてお話しいただきました。
~講演内容要旨~
1. 日本における政策的背景と医療情報の課題
日本社会は、超高齢化、人口減少など大きな課題に直面している。この課題に今どう対処するかは、その後の数十年の発展においても重要な分かれ道となる。医療制度は、これまでの長所を継承しつつ新しい人口構造の中で新生させる必要がある。日本はこの数年で大きな転機を迎えることになるだろう。医療ICTに関してもこの1~2年で大きな変化がみられた。数か月前のことが通用しない時代では、ICTをいかに取り込んで社会変革できるのかが鍵となる。
2016年10月、厚生労働省の「保健医療分野におけるICT利活用推進懇談会」では、情報基盤「PeOPLe」の整備を提言した。「PeOPLe」は、「人」を中心としてオープンな環境で個人のデータをつなぎ、保健医療専門職に共有するだけでなく、個人自らも健康管理に役立てることができるプラットフォームである。このように、ICTを活用した「次世代型保険医療システム」の整備が今後必要とされている。
2. 医療の質の向上と持続可能な社会の両立
医療の質の向上と持続可能な社会の両立には、3つのポイントがある。それは、「つくる」、「つなぐ」、「ひらく」である。日本は、ものづくりで世界に誇る技術があり、この強みを活かしたシステム作りが可能である。
医療におけるビックデータは、単にデータを集めるだけでは意味がない。例えば、国際水準に基づいた医療情報を集める等、ビッグデータの価値を創出するためには、正しいデータを「つくる」必要がある。
3. National Clinical Database (NCD)とその活用
日本では、2010年からNational Clinical Database(NCD)というデータベースが活用されている。NCDは、専門医制度を支える手術症例データベースとして外科系臨床学会が連携して設立したものであり、2011年から日本全国の医療機関で症例データの登録を開始、現在は内科的治療のみの症例データの登録も開始した。
またNCDには、患者の術前情報を入力することにより、術後アウトカムの予測をする、リアルタイムフィードバック機能が備えられている。この機能により、これまで医師個人にゆだねられてきたスキルの向上をサポートすることができる。医師の仕事は、患者ひとりひとりに合わせて対応することが可能となり、より深く拡張していくだろう。
4.ICTを活用した「次世代保健医療システム」
医療情報の活用は在宅医療の現場にも広がっている。日本ではマイナンバー制度が2016年1月からスタートした。医療分野では「医療等ID」の導入が検討されている。これにより、個人を軸にして各ステークホルダーの持つ医療情報が繋がり、蓄えられたデータは、学会の治療のガイドライン作りや制度そのものの改革にもつなげることができる。このように患者・国民を軸とした取り組みが、今後ますます重要になってくるだろう。
そのためには、データを含めて医療ICTの使い方を考えていく必要がある。現在の日本は2035年に向けて新しい社会をつくれるかどうかという、非常に大きな転換期にあるといえる。皆で力を合わせていけば明るい未来につながると考えている。
開催日:2016-12-16
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