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【調査報告】「大学生の包括的健康教育プログラム構築と効果測定調査」(2020年7月20日)

【調査報告】「大学生の包括的健康教育プログラム構築と効果測定調査」(2020年7月20日)

「大学生の包括的健康教育プログラム構築と効果測定調査」の報告書を公表いたしました。

青年期の若者にとって、リプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)に関する正しい知識を持ち主体的に判断、行動する能力を身に着けることは、自身の健康を守り主体的にライフプランを描くうえで重要です。特に、高等学校を卒業した直後の若者はリプロダクティブヘルスがより身近かつ、自分事になる機会が増えるだけでなく、キャリア形成やその後のライフプランを具体的に検討し始める時期であることから、適切な知識の獲得や人生における選択肢の十分な検討が望まれます。しかし、我が国においては高等学校までは性教育が行われるものの内容が限定的で必要な知識と判断能力を養えていないとの指摘もあります。

そこで日本医療政策機構では、国際連合教育科学文化機関(UNESCO: United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)が発行し国際的かつ包括的性教育の標準となっている「国際セクシュアリティ教育ガイダンス(International Technical Guidance on Sexuality Education)※1」等を参考に分野を超えた専門家の意見を収集した上で、大学生向けの包括的健康教育を実践するためのプログラムを構築しました。それを元に、大学生の男女約230人(3大学)を対象に教育介入を行い、介入前後の効果を測定すべく、オンラインアンケートによる定量的な調査を実施しました。

本調査結果より、包括的健康教育に対する大学生のニーズが高いことが明らかになっただけでなく、包括的健康教育が学生のリプロダクティブヘルスに関する意識変容や行動変容をもたらすことが示唆されました。その一方で、リプロダクティブヘルスに関する知識不足、性暴力や性的同意が行われていないケースの存在、リプロダクティブヘルスに関する相談相手がいないこと、婦人科・産婦人科の受診に対するハードルが高いといった大学生を取り巻く課題が浮き彫りになりました。

 

■調査結果のポイント

【教育機会に対する大学生のニーズ】

  • 約97%の大学生が「包括的健康教育」の講義は大学生にとって必要だと思うと回答
  • 約87%の大学生が「包括的健康教育」の講義を大学入学時のオリエンテーションに入れ、全員が受講すべきだと思うと回答

 

【リテラシーの向上や意識・行動変容】

 性感染症

  • 約86%の大学生が性感染症に対する正しい知識が不足していたと思うと回答
  • 約29%の大学生が3か月前に受講した助産師による「包括的健康教育」の講義をきっかけに性感染症を予防するための行動が変わったと回答

 性暴力・性的同意(セクシュアルコンセント)

  • 約42%の大学生が性暴力や性的同意(セクシュアルコンセント)が行われていない場面に遭遇したことがあると回答
  • 約19%の大学生が3か月前に受講した助産師による「包括的健康教育」の講義をきっかけに性暴力や性的同意(セクシュアルコンセント)が尊重されていない場面における行動が変化したと回答

 婦人科・産婦人科の受診

  • 約61%の大学生が助産師による「包括的健康教育」の講義をきっかけに、講義後に婦人科・産婦人科を受診しようと思ったと回答

 

■本調査結果を受けた提言:3つの視点

視点1 幼少期からの包括的健康教育の導入・充実と大学生(専門学校、短期大学生等、同世代の若者を含む)への包括的健康教育の機会創出の必要性

  • 幼少期からの包括的健康教育の導入および充実化に向けた取り組みの促進
  • 大学等の教育機関における学生を対象とした「包括的健康教育」受講機会の創出

視点2 包括的健康教育のコンテンツ、および提供者・提供方法を工夫する必要性

  • 国際基準のガイドラインに基づいた教育プログラムの活用
  • 包括的健康教育を実施できる外部人材の育成と分野間の連携促進

視点3 学生を相談機関や医療機関へ繋ぐ仕組み作りの必要性

  • 学生が訪れやすい相談機関の設置
  • 学生を適切な相談窓口や支援・相談者、医療機関につなげる仕組みづくり

 

今後推進すべき具体的な施策に関しては報告書をご覧ください

 

■調査体制

【プロジェクトチーム】 *敬称略、順不同
今村 優子(日本医療政策機構 マネージャー)
吉村 英里(日本医療政策機構 シニアマネージャー)
川端 健嗣(東京理科大学 非常勤講師)
岩井 裕美(帝京大学大学院 公衆衛生学研究科 研究員)
有馬 詩織(日本医療政策機構 アソシエイト)
小山 茜 (日本医療政策機構 インターン)
河田 友紀子(日本医療政策機構 プログラムスペシャリスト)
河野 結(日本医療政策機構 アソシエイト)
乗竹 亮治(日本医療政策機構 理事・事務局長/CEO)

【アドバイザー】*敬称略、順不同
北村 邦夫(一般社団法人日本家族計画協会 理事長)
吉野 一枝(東京産婦人科医会 理事、よしの女性診療所 院長)
岡本 登美子(日本助産師会助産所部会長、ウパウパハウス岡本助産院 院長)
毛利 多恵子(毛利助産所 所長)
高橋 幸子(埼玉医科大学 助教)

■助成元
日本財団

■本調査に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人 日本医療政策機構(担当:今村)

 

※1 国際連合教育科学文化機関 “International technical guidance on sexuality education: an evidence-informed approach” 

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