【政策提言】予防接種・ワクチンの長期的な安全性評価に資する情報基盤・システムの整備に向けた提言(2022年8月5日)
日付:2022年8月5日
タグ: 予防接種・ワクチン
日本医療政策機構は、政策提言「予防接種・ワクチンの長期的な安全性評価に資する情報基盤・システムの整備に向けた提言」を公表しました。
当機構では、2021年6月に公表した政策提言「ライフコースアプローチに基づいた予防接種・ワクチン政策 5つの視点と具体策」において重要な論点とされた、予防接種・ワクチン政策の安全性評価について、その必要性を共有する有志の専門家による議論を取りまとめ、今後求められる取り組みについて論点を整理しました。この提言を通じて、公衆衛生上の介入である予防接種・ワクチン政策が個人と社会における好循環を生み出すために、安全性評価を予防接種・ワクチン政策におけるセーフティーネットと位置づけ、安全性評価に向けた体制構築を体系的に推進するための議論が産官学民において広がり、具体的な対策が実践されることを期待しています。
■エグゼクティブサマリー
1 予防接種・ワクチンの安全性評価に関する共通理解の確立
1.1 予防接種・ワクチンの安全性評価に必要な情報や現行制度に関する共通理解の確立
- 予防接種・ワクチンの安全性を定量的かつ科学的に評価するための疫学的な情報とその情報収集に求められる制度に関する共通理解の確立
2 受動的サーベイランスの機能強化と能動的・積極的サーベイランスの制度設計
2.1 副反応疑い報告制度の機能強化
- 稀な有害事象の検出と予防接種・ワクチンとの因果関係を検討すべき異常なシグナルの速やかな探知と検出に向けた、副反応疑い報告制度の更なる推進
- 副反応疑い報告書入力アプリ及び電子報告システム等の効果的な活用による受動的サーベイランスの機能強化
2.2 受動的サーベイランスの機能を補完する能動的・積極的サーベイランスの制度設計
- 受動的サーベイランスの機能的限界を踏まえた適切かつ迅速な情報活用
- 受動的サーベイランスの機能的限界を踏まえた能動的・積極的サーベイランスの制度設計
2.3 能動的・積極的サーベイランスに向けた保険者データベースの活用と医療情報の整備
- 国内の保険医療制度と調和のとれた能動的・積極的サーベイランスの制度設計と構築
- 保険者データベースを用いた能動的・積極的サーベイランスの検討推進
- 能動的・積極的サーベイランスを効果的に活用する自己対照研究デザイン等の分析方法の検討推進
- 保険者データベースを用いた能動的・積極的サーベイランスに留まらない、より適切な安全性評価に向けた予防接種情報と医療情報との連結に向けた議論の加速化
3 サーベイランスを支える平時からの情報基盤の整備と自治体との連携
3.1 予防接種台帳の整備と更なる促進
- 予防接種台帳の電子化・情報提供ネットワーク上のデータベース化の更なる促進
3.2 情報提供ネットワークシステムの利活用
- 情報提供ネットワークシステムにおけるセキュリティ対策としての分散管理と予防接種・ワクチン政策の安全性評価に資する統計情報提供の両立の検討
- VRSにおける統計情報提供の応用
- パンデミック下の教訓を踏まえた今後のより良い情報連携・電子化の加速化
3.3 国や自治体、その他の関連機関における協力体制構築
- 国民健康保険等の保険者データベースと予防接種情報の連携に向けた予防接種・ワクチンの安全性評価に資する国と自治体の協力体制構築
- 保険者データベースの情報提供に関する自治体の試行的な取り組み推進及び好事例の展開と個人情報取り扱いに関する検討の加速化
- 予防接種情報と健康情報等の連携による情報の複合的な活用と視覚化及びそれらを通じた市民への情報還元
4 安全性評価を踏まえた総合的な政策判断の実施
4.1 総合的な政策判断に向けた体制整備
- 予防接種・ワクチン政策における総合的な政策判断を恒常的に実現可能にする人材育成と評価機関設置の推進
4.2 情報提供ネットワークシステムの利活用
- 総合的な政策判断を市民に適切に伝える効果的なコミュニケーションに貢献する人材育成と関連する正しい情報や用語、制度の普及啓発の推進
■ワーキンググループ3「情報システム」メンバー(敬称略、五十音順(2021年度時点))
ワーキンググループメンバー
- 氏家 無限(国際感染症センタートラベルクリニック医長/予防接種支援センター長)
- 漆原 尚巳(慶應義塾大学 薬学部 医薬品開発規制科学講座 教授)
- 大山 水帆(戸田市 企画財政部 次長 兼 デジタル戦略室長(CDO)/総務省 地域情報化アドバイザー)
- 紙谷 聡(エモリー大学 小児感染症科 助教授/米国疾病予防管理センター(CDC)予防接種安全評価室 客員研究員)
- 菅谷 明則(すがやこどもクリニック/特定非営利活動法人 VPDを知って、子どもを守ろうの会理事長)
- 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター 予防接種総括研究官)
スペシャル・アドバイザー
- 武見 敬三(参議院議員/ワクチンを活用して疾病の予防、罹患率の減少を目指し、国民の健康増進を推進する議員の会(ワクチン予防議連) 会長)
- 古屋 範子(衆議院議員/ワクチンを活用して疾病の予防、罹患率の減少を目指し、国民の健康増進を推進する議員の会(ワクチン予防議連) 会長代理)
調査・提言ランキング
- 【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(最終報告)(2024年11月14日)
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【政策提言】肥満症対策推進プロジェクト2023「患者・市民・地域が参画し、協働する肥満症対策の実装を目指して」(2024年4月8日)
- 【政策提言】保健医療分野における気候変動国家戦略(2024年6月26日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【政策提言】女性の健康推進プロジェクト「産官学民で考える社会課題としての更年期女性の健康推進政策提言書」(2024年7月31日)
- 【調査報告】「子どもを対象としたメンタルヘルス教育プログラムの構築と効果検証」報告書(2022年6月16日)
- 【調査報告】「2023年 日本の医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」(2024年1月11日)
- 【調査報告】 日本の医師を対象とした気候変動と健康に関する調査(2023年12月3日)
- 【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(速報版)(2024年9月11日)