【パブリックコメント提出】生物多様性条約締約国会議「生物多様性と健康に関するグローバル行動計画(案)に対するピアレビュー」(2024年2月12日)
日付:2024年3月4日
タグ: プラネタリーヘルス
日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)プラネタリーヘルスチームは、生物多様性条約の締約国会議(COP)「生物多様性と健康に関するグローバル行動計画(案)」についてパブリックコメントを提出いたしました。
生物多様性は人類の生存を支え、人類にさまざまな恵みをもたらすものです。他方、生物多様性の損失は、人間の健康を含めてさまざまな影響を及ぼします。生物多様性の問題に世界全体で取り組むため、1992年、「1.生物多様性の保全」「2.生物多様性の構成要素の持続可能な利用」「3.遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」の3つを目的とする生物多様性条約(CBD: Convention on Biological Diversity)が採択されました。また、同条約に基づく取組を推進するため、最高意思決定機関である締約国会議(COP: Conference of the Parties)がおおむね2年に1回開催されています。
前回の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は2021年及び2022年に行われ、生物多様性に関する2030年までの新たな世界目標(ポスト2020生物多様性枠組)である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。同時に、第14回締約国会議(COP14)以来議論されてきた、国の政策、戦略、プログラム、および国民経済計算に生物多様性と健康の関連性を主流化するグローバル行動計画(Global Action Plan)について、本年2024年にコロンビアで開催予定の第16回締約国会議(COP16)に向け、ドラフトを最終化する段階に移行しました。
ドラフトの最終化にあたっては、生物多様性条約の締約国及びその他の政府、先住民及び地域コミュニティ、並びに関連するステークホルダーのフィードバック(ピアレビュー)が求められています。ピアレビューを踏まえたドラフトは、条約の実施に関する科学的、技術的助言を適時に提供する補助機関(SBSTTA: the Subsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice)によってレビューされ、決定のプロセスを踏むことになります。
日本医療政策機構のプラネタリーヘルスチームは、このピアレビューに参加しており、グローバル行動計画のドラフトに関する意見書を提出しました。この貢献は、多様なステークホルダーからの視点と洞察が行動計画の最終化において考慮されることを確実にするための、より広範な取り組みの一部です。
パブリックコメントのポイント
- 生物多様性の損失と感染症や非感染症の出現及び拡散、そして健康格差の増大との関連はよく知られており、生物多様性の保全と持続可能な利用が病気の予防、削減、そして積極的な管理に役立つとされている。しかし、この関係性を支持する証拠には具体的な裏付けが必要であると指摘されている
- 持続可能な開発目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」という文脈で、環境の悪化が子どもや若者の身体的、精神的、感情的な脆弱性を高め、子どもたちの健康と全面的な発達ポテンシャルの実現に「主要な脅威」をもたらしていることが重要である。また、貧困層や社会的に脆弱な人々への配慮の重要性が強調されている
- 生物多様性と健康の相互関係を国家の健康戦略や生物多様性戦略に統合し、精神衛生、栄養、非感染症及び感染症の管理、子どもの発達などの健康計画においても考慮することが推奨されている。これには、貧困層や脆弱な人口、女性、子どもの視点の組み込みや、健康格差の縮小も含まれる
- 生物多様性と公衆衛生に関する国家的な焦点を設定し、国家間の調整、実施、および最良の実践の共有を強化すること、さらには生物多様性と健康の相互関係に関する国家的な調整メカニズムを開発・強化することが提案されている
- 農業、養殖業、漁業、林業からの汚染を減らし、持続可能な農業実践を活用すること、また化学的な農薬や除草剤、抗生物質の必要性を減らすための統合的な害虫管理の使用などが推奨されている。これには、家畜への抗生物質の管理も含まれる
この生物多様性と健康に関するグローバル行動計画のドラフトに対するピアレビューに関しては、こちら(英語のみ)をご覧ください。
調査・提言ランキング
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【政策提言】腎疾患対策推進プロジェクト2024「労働世代における慢性腎臓病(CKD)対策の強化にむけて」~健診スクリーニング、医療機関受診による早期発見、早期介入の重要性~(2024年10月28日)
- 【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(最終報告)(2024年11月14日)
- 【政策提言】保健医療分野における気候変動国家戦略(2024年6月26日)
- 【政策提言】肥満症対策推進プロジェクト2023「患者・市民・地域が参画し、協働する肥満症対策の実装を目指して」(2024年4月8日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【調査報告】「2023年 日本の医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」(2024年1月11日)
- 【調査報告】「子どもを対象としたメンタルヘルス教育プログラムの構築と効果検証」報告書(2022年6月16日)
- 【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(速報版)(2024年9月11日)
- 【調査報告】 日本の医師を対象とした気候変動と健康に関する調査(2023年12月3日)
注目の投稿
-
2024-10-28
【申込受付中】(ハイブリッド開催)公開シンポジウム「患者・当事者ニーズに基づく循環器病対策の推進に向けて~第2期循環器病対策推進計画をより実行性のあるものにしていくために~」(2024年11月22日)
-
2024-11-01
【申込受付中】認知症未来共創ハブ 報告会2024 〜活動の軌跡と未来を描く対話〜(2024年12月3日)
-
2024-11-08
【申込受付中】(ハイブリッド開催)肥満症対策推進プロジェクト 公開シンポジウム「社会課題として考える肥満症対策~市民主体の政策実現に向けて~」(2024年12月4日)
-
2024-11-11
【論点整理】専門家会合「少子化時代における持続可能な周産期医療提供体制の確立に向けて」(2024年11月11日)
-
2024-11-14
【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(最終報告)(2024年11月14日)