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【開催報告・提言】医療DXプロジェクトエキスパート・パネル会合~論点整理~(2024年4月2日)

【開催報告・提言】医療DXプロジェクトエキスパート・パネル会合~論点整理~(2024年4月2日)

日本医療政策機構 医療DXプロジェクトでは、2023年10月26日及び11月21日にエキスパート・パネル会合をオンライン形式にて開催いたしました。

データ・インフラ構築や医療DXの推進の必要性は、世界的な議論となっています。日本においても、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、平時の慢性疾患対策を含め、統合的に運用できるデータ・インフラ構築の遅れや医療DX推進の遅れが、国民的関心事となりました。こうした中、与党による「医療DX令和ビジョン2030」の提言をもとに、2022年10月に総理大臣を本部長とする「医療DX推進本部」が設立され、現在、厚生労働省、総務省、経済産業省、デジタル庁を中心に関係省庁が連携して、「全国医療情報プラットフォーム」の創設、電子カルテの標準化、診療報酬改定DX等を推進するべく工程表に基づいた取組を進めています。

「医療DX」とは単なる目標ではなく、市民・患者に信頼され得る保健医療システムを構築するための手段です。その実現に向け、当機構では市民・患者の期待に応えるシステムのあるべき姿を模索し、医療DXを通じた実現策を議論する必要があります。

当機構では、産官学民が一体となりグローバルな視点で医療DXの推進を議論し、市民・国民に信頼される持続可能な保健医療システムの確立を目指します。この過程で、医療DXが果たす役割と将来の戦略について、今後の打ち手を提案していきます。

先般実施したHGPIセミナー特別編 特別対談「医療DXで可能になる国民目線の保健医療システム」においては、医療DXによる市民・患者へのメリットの不明瞭さやデータ利活用への不安などが、議論の中で浮き彫りとなりました。そこで本エキスパート・パネル会合では、市民・患者が求める真の医療DX政策において目指すべきビジョンや目標、関連するこれまでの課題や障壁、そしてこれらを打開するための具体的方策について、以下の観点から議論しました。

  • これまでの医療DX推進に向けたデータ・インフラ構築の整理
  • データの2次利活用に向けた課題と期待
  • 市民・患者目線の医療DXの根幹
  • 採るべき打ち手とその優先順位


【目指すべきビジョン】
個人データの社会的な利活用が進むことで、個人および国民全体にメリットがもたらされる医療DXを目指す

医療DXでは、社会のデジタル化が基盤にあり、あらゆる情報が電子データ化されクラウドを介して共有できることが最大の強みである。このような強みを保健医療分野で活かすためには、まず市民・患者の健康医療データを収集するための環境整備が必要である。しかし、共有を前提としたデータの蓄積を進めるには、安全性が担保されていることが前提であり、個人の生活体験において利便性の向上を実感するようなメリットがないことには国民の協力は得られないだろう。現在明示されているような公共的なメリットに加えて、個人が自身の健康医療行動において直接メリットを実感できるような取り組みの明示も重要であり、個人と公共の双方に利益をもたらす医療DXを目指すことが望ましい。

【ビジョン達成に向けた3つの目標】
目標1:健康課題に対する国民の主体的な自己決定の促進

医療DXにより個人の健康医療データの連結が実現することによって、市民・患者は自身の健康医療データをいつでもどこでも確認できるようになる。また、疾患を患った際に、蓄積されている患者データから似た病態や境遇の患者の経験が共有されれば、その後病気と向き合う際に有用な参考情報となる。AI技術等の活用により主体的な自身の健康課題に対する解決策の選択のみでなく、個人に合ったペイシェントジャーニーの可視化及び選択も可能となる。

目標2:市民・患者一人一人がメリットを享受し満足できる持続可能な保健医療システムの構築

医療DXで可能となる保健医療システムにおいて、より多くの国民が納得できるサービスを具体的に示し、その実現に向けた多角的取り組みを実施する。

目標3:イノベーションの促進と差別等への適切な対応が担保されたデータ利活用システムの実現

健康医療データの利活用によるイノベーションは、データ利活用による世の中の改善とデータ公開により生じ得る課題(不当な差別等本人の不利益となる利用)への適切な対応の両者を併せて実現することが重要である。


本エキスパート・パネル会合における議論を踏まえ、「個人データの社会的な利活用が進むことで、個人および国民全体にメリットがもたらされる医療DXを目指す」というビジョンの下、同ビジョンの達成に向けた目標、医療DXにより可能となる生活上の変化、並びに、国、立法府、メディア、民間企業、アカデミア、医療現場及び市民・患者が取り組むべきポイントについて、論点整理を行いました。

 

【エキスパート・パネルメンバー】(敬称略・順不同)

青木 眞(日本医療政策機構 フェロー)
佐々木 淳(医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長)
桜井 なおみ(キャンサー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長)
市川 衛(メディカルジャーナリズム勉強会 代表)
落合 孝文(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士)
板倉 陽一郎(ひかり総合法律事務所 弁護士)
黒田 知宏(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部長、京都大学大学院 医学研究科/情報学研究科 教授)

 

【医療DXプロジェクト政策調査部門メンバー】(敬称略・順不同)

津川 友介(日本医療政策機構 理事/UCLA 医学部・公衆衛生大学院(医療政策学)准教授)
藤田 卓仙(日本医療政策機構 リサーチフェロー/世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター プロジェクト長/慶應義塾大学 医学部医療政策・管理学教室 特任准教授)

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