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【開催報告】第37回特別朝食会 J・スティーブ・モリソン氏(2017年4月14日)

【開催報告】第37回特別朝食会 J・スティーブ・モリソン氏(2017年4月14日)
この度、当機構では、当機構と長年にわたり協働関係にある、米国 戦略国際問題研究所 (CSIS: Center for Strategic and International Studies)の副所長ならびに同グローバルヘルス ポリシーセンター長のJ・スティーブ・モリソン氏をお招きし、特別朝食会を開催いたしました。


■講演の概要
米国においては、ご高承の通り、医療保険制度や薬価制度について、トランプ新政権下で変革をもたらそうとする動きが強まっております。トランプ政権発足から約100日となるタイミングで、本朝食会は開催されました。米国を代表するシンクタンクであるCSISにおいて、長年にわたり米国内外の医療政策について研究と提言を重ねてこられたモリソン氏に、米国保健福祉省 前次官補のカレン・デサルボ氏も加わり、当機構事務局長の乗竹亮治がお二人をモデレートする形で朝食会は進行し、日本の政策論議にも影響を与えうる米国新政権の医療制度改革についての知見が語られました。
モリソン氏からは、トランプ新政権での医療政策における留意すべきポイントとして、患者保護並びに医療費負担適正化法(PPACA: Patient Protection and Affordable Care Act of 2010-通称オバマケア(ACA: Affordable Care Act))の行方について言及がありました。オバマケアの実現により、医療保険がカバーする範囲が広がり、低所得者の自己負担が抑えられ、政府がコストを負担するという構造が見られました。一方で、一部の既存被保険者の保険料が上昇し、政府不信が高まったという問題も顕在化しました。オバマケアについては米国内でも賛否両論があり、アメリカの医療保険制度に関しては引き続き検討すべき課題は残っているとモリソン氏は語りました。
オバマ政権下で米国保健福祉省 次官補を務めたデサルボ氏は、トランプ政権が目指したアメリカン・ヘルス・ケア・アクト(AHCA :American Health Care Act)の内容とオバマケアの好事例に言及しました。オバマ政権下のアメリカでは、オバマケアにより多くの人の生活が改善したと述べました。大きな変革点は、予防医療にも関わるようになったことだと強調しました。オバマケアは公衆衛生の観点から見ると疾患の予防において成功をしたとデサルボ氏は述べました。オバマケアによるバリューベースドペイメントの導入の結果、医療費の支払いの概念が変わったことや、アメリカにおける医療のICT化の推進についても貢献したと言及しました。これからの医療システムに求められる視点として、単に疾病の治療に焦点を当てるのではなく、健康の維持やマネジメント、生活の質、ケアの改善への貢献という視点が重要であり、今後は最新のテクノロジーやデータを使うことで、新たなケアモデルを作り、バリューベースドペイメントの精度をより高めることが求められるとコメントしました。

※バリューベイスドペイメント(Value Based Payment):ヘルスケアサービスが提供された際に、保険者が、予め定められたパフォーマンスの指標に基づき、その成果に応じて医療提供者に対して償還する方法を指す。この方法を導入すると、同じ治療・投薬であってもその成果によって償還される費用が変わる。そのため医療提供者はアウトカムの最大化を目指すようになり、より質の高い・効率的な医療提供がなされると考えられている。


(写真: Natsuko Toida)

開催日:2017-04-14

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