【活動報告】「マヒドン王子国際保健会議2026」(2026年1月29日)
日付:2026年3月6日
タグ: グローバルヘルス, グローバルヘルス戦略, プラネタリーヘルス
2026年1月26日から1月31日にかけて、タイ・バンコクにて開催されたマヒドン王子国際保健会議2026(Prince Mahidol Award Conference 2026: PMAC 2026)に、日本医療政策機構のグローバルヘルス戦略チームが参加しました。本会合は、タイ王国政府およびマヒドン王子記念財団が主催し、独立行政法人国際協力機構(JICA: Japan International Cooperation Agency)をはじめとする関係機関が共催する、国際保健分野における主要な国際会議の一つです。
会議は毎年開催され、国際保健に貢献した個人・組織が顕彰されるとともに、世界各国から政府、国際機関、アカデミア、企業、NGO、患者・当事者団体などが参画し、国際保健の重要な課題の解決に向けて、各国の事例の共有やマルチステークホルダーによる議論が行われます。
PMAC 2026のテーマは、「革新的な政策によるグローバルな人口動態転換への対応 ―公正性を中心に据えたアプローチ―(Navigating Global Demographic Transition through Innovative Policy: An Equity-Centered Approach)」です。世界的に進行する高齢化、出生率低下、人口移動の変化、若年人口の増加、都市化といった人口動態の転換を背景に、これらが健康、経済、社会、環境に与える影響を総合的に捉え、ライフコース全体を通じた政策対応の実行可能な解決策を共有・検討することを目的として開催されました。
会議では、人口動態の変化を社会的・経済的な「負担」として捉えるのではなく、教育・職業訓練・生涯学習といった人的資本への戦略的投資、世代を超えた連携を支える社会・都市インフラの構築、非感染性疾患や長期ケアへの対応を含む保健医療システムの変革など、適切な政策と投資によって社会的・経済的な「機会」へと転換する視点が強調されました。その一例として、高齢化社会において、元気で熟練した高齢者(シニア層)が労働や消費、知識・経験の提供を通じて、経済成長や社会にプラスの貢献をもたらす経済・社会的な効果である「シルバー配当」の実現に向けた「ボトムアップ型」の人的資本への投資が挙げられました。このアプローチは、一部のエリートに資源を集中させるのではなく、普遍的な識字教育やプライマリ・ヘルス・ケアといった社会全体の基盤を底上げすることで、結果として高い投資収益率(ROI: Returns on Investment)を生み出し得るとともに、人権の保障に資するだけでなく、財政当局からも支持され得る有効な経済戦略となり得ることが示されました。
さらに、世界的な人口動態の変化の中で影響を受けやすい女性、障害のある人々、移民、先住民族、ジェンダー・マイノリティなどの脆弱・リスク集団に対して、公正性を確保するための包摂的な政策設計や革新的な介入のあり方についても議論されました。特に、脆弱・リスク集団に関するデータが十分に整備されていないことが、制度・統計上の把握の困難さを招き、結果として政策対応や資源配分の遅れにつながっている点が指摘されました。このため、出生・死亡登録を含む基礎的な人口データの整備や、障害の有無や移民状況等で細分化されたデータの活用を通じて、課題を可視化することの重要性が共有されました。加えて、高齢者を一方的な「依存者」と見なす固定的な見方を見直す観点から、高齢者が孫の世話や家族の介護などを通じて社会に貢献している実態を、データとして可視化する重要性が挙げられました。こうしたエビデンスを創出・公表することにより、世代間および多様な社会集団間における不必要な対立を回避し、相互支援に基づく社会的連帯を強化することが、人口動態の変化を社会的・経済的な機会へと転換する上で重要であることが示されました。
PMAC 2026での議論は、総じて人口動態の変化を「回避不能な危機」とするのではなく、「すべての人を数え、すべての人に投資する」ことで、将来にわたる経済的持続性の確保と、年齢や属性によって排除されることなく、保健医療や社会保障へのアクセスが保障される公平な社会を再構築する機会であることを示しました。当機構は、日本の市民社会として、こうした国際的な議論が具体的な政策形成や実装につながり、市民や患者の生活の質の向上に結びつくよう、国際的な対話と知見共有を通じて貢献してまいります。
サブテーマ1:人口動態の転換、社会的公正、人口の多様性
サブテーマ2:人口構造の変化と保健医療システムの変革
サブテーマ3:人と地球のための健康ガバナンス:変動する地政学的環境の中で
詳細はこちらをご覧ください。
※英語のみ
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