【開催報告】第32回特別朝食会「我が国の健康・医療戦略」和泉 洋人氏(内閣総理大臣補佐官)(2016年8月1日)
日本医療政策機構は、2016年7月14日、内閣総理大臣補佐官和泉洋人氏をゲストに迎え、都内で当機構関係者を招いた特別朝食会「我が国の健康・医療戦略」を開催いたしました。
■健康長寿の意義と課題
日本の人口は昨年より27万人余り減少した。また、寿命は延びており世界で1.2位を争う超高齢化社会となった。物理的な寿命と健康寿命のギャップをいかにうめるかが大きな課題となっている。
安倍政権が誕生する3年半前は、「失われた20年」と言われていた。高い法人税、円高、電力コストの増加、労働規制、エネルギー・環境制約、EPA等の遅れが問題とされてきたが、これらはかなり改善されてきた。日本の将来を考えるうえで、最も本質的かつ重要な課題は、「少子・超高齢化」、「人口減少社会」そして、「労働力の減少」だ。持続的な経済成長のためには、イノベーションによる生産性の改善、設備投資の促進、労働力の確保の3つが不可欠。
この3つの対策の中で、労働力の確保について、即効性があって、国民的合意も得られやすいのは、女性の社会参画と高齢者の就業率を上げることだろう。高齢者が健康で働き続けることができて、健康長寿社会が実現すれば、本人の幸せ、家庭の幸せ、社会の幸せと一石三鳥の効果が考えられる。健康寿命の延伸は日本の持続的な成長を確保するための一番のキーポイント。
■健康医療戦略への取組み
平成26年、総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部のもと健康医療戦略を閣議決定し、医療分野の研究開発推進戦略を定めると同時に、日本医療研究開発機構(AMED)を設立。このような省庁横断的な取組みは、長期政権下だからこそスムーズに実現したものである。
世界に先駆けて超高齢社会を迎える我が国にあっては、健康長寿社会の形成に向け、世界最先端の医療技術・サービスの実現による、健康寿命の延伸が重要な課題である。そのため健康・医療戦略については4つの柱を置いている。
健康・医療戦略の4つの柱
1.医療分野の研究開発
2.新産業の創出
3.医療の国際展開
4.医療のICT化
また、日本再興戦略では、2020年までに健康医療戦略市場を26兆円に成長させるという目標を掲げ、以下の5つを柱とする案をまとめたところ。
日本再興戦略2016の5つのポイント
1.健康・予防に向けた保険外サービス促進
2.ロボットやセンサーを活用した介護の負担軽減
3.IoT等の活用による個別化健康サービス
4.医療・介護等の分野でのICT化の徹底
5.医薬品・医療機器などの開発、国際展開
■健康長寿社会の実現に向けた、新産業創出
従来の公的な保険による医療・介護サービスに加え、次世代ヘルスケアサービスを、医療機関および民間事業者による重層的な産業構造によって供給し、健康社会の基盤を築いていきたい。
医療・介護サービスを補完する保険外サービスには、様々な規制、そして「グレーゾーン」がある。このグレーゾーンを解消した結果、医療・介護サービスを補完する保険外の新しい産業活動が創出されることもある。今後もこのようなグレーゾーン解消に取り組んでいきたい。
■健康・医療の国際展開や保健外交
新興国を中心に政府支援に係る日本式の医療拠点は、28年度内に合計19地点で整備される予定。
これは、施設などのハードのみならず、日本のこれまでの経験を活かした介護保険や母子保健手帳などのソフト面での支援も行うものであり、「人間の安全保障」を含む外交戦略の一環としても戦略的に進めている。
G7伊勢志摩サミット(平成28年5月27日)において、「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」が発表された。公衆衛生上の緊急事態に対応するためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャーの強化、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けた保健システム強化のための国際的連携促進と途上各国支援、薬剤耐性対策の強化などを行う。
また、アジアをメインターゲットとした「アジア健康構想」を近々にまとめるほか、栄養改善事業の官民連携による国際展開の推進も行っている。また、AMEDも、海外の技術情報の収集・分析、情報発信を目的として、シンガポール、イギリス、アメリカの3か所に事務所を開設することとしているところ。
■次世代医療ICT
現在、診療報酬明細書情報はほぼ100%電子化し、利用が進んでいるが、将来的には、医療分野のすべてのアウトカムデータを標準化し、電子化したい。そのためには信頼性の高いデータ収集が必須であり、また、個人情報保護に対する厳格なルールの整備も求められる。
■おわりに
我が国の経済社会の持続的成長の鍵は「健康長寿」であり、それは、日本だけではなく、新興国にも先進国にも共通するグローバルな課題だ。我が国のノウハウを日本から輸出すること、特に新興国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの確立の支援に力を入れたい。
開催日:2016-07-14
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